第17回 人と技術の融合で守る安全・安心 セコム

連載「ミライを変える革新力」⑰ 人と技術の融合で守る安全・安心 セコム

警備ロボットが公道を走行

都心のオフィス街。スーツ姿の人々が行き交う歩道を、ゆっくりと一台のロボットが走っていく。名前は「cocobo(ココボ)」。周囲を見回しながら、カメラやセンサーで不審な動きを監視。異常を察知すれば、建物内の監視卓と即座につながり、人間の警備員と連携して行動に移す――。そんな近未来の風景が、私たちの日常の中に溶け込み始めている。
夜間でも走行可能だ。点字ブロックの乗り越えや路面の傾斜を考慮した低重心設計。電動車いすと同じサイズに収めることで、歩道や建物内などできるだけ多くの場所で働けるよう工夫し、法令に基づく公道走行の許可も取得した。
警備にロボットを導入して警備員の負担軽減や迅速、適切な対応を実現し、将来的な人手不足の解消や安全性の向上を目指すのが狙いだ。

時代を超え広がる事業

この「cocobo」を開発したのは、警備会社セコム。歴史を振り返ると、その始まりは1961年の冬、浅草の鶏鍋屋だった。創業者・飯田亮氏と戸田寿一氏が、知人から「欧州には警備を専門にする会社がある」と聞いた。日本に存在しない新しいビジネスに「これだ!」と直感し、わずか30分ほどで決断したという。翌年、「日本警備保障株式会社」として事業をスタート。がむしゃらに営業に歩き回った飯田氏は、「商いは飽きないに通ずる。根気が必要」と口にしながら、契約を獲得していった。
その後、セコムをモデルにしたテレビドラマ「ザ・ガードマン」が大ヒット。知名度が一気に上がった。そして1966年、日本初のオンライン安全システム「SPアラーム」を開発。異常を感知すると、通信回線で連絡が入り、警備員が駆けつける仕組みは画期的で、「人を守る。安全を提供する」という新しい価値を社会に届けた。
創業から60年以上経った。事業領域は、防犯の枠を大きく超えて広がっていく。「cocobo」に象徴されるように、技術の進化が続く。

警備ロボット「cocobo」
左は警備ロボット「cocobo」。AI解析や、他システムとの連携もできる。
ボディスキャナ
右はボディスキャナ。(左右共セコム提供)

高度な技術でデータと社会を守る

東京都内。今年10月1日から、次世代型のデータセンター「セキュアデータセンターTC4」の運用が始まった。現実空間とサイバー空間の両面から、24時間365日有人体制で監視を続ける。AIカメラによる不審行為の自動検知、ロボット巡回、ボディスキャナやX線検査器による記録媒体の持ち込み防止など、高度なセキュリティを導入。免震構造や二重化電源設備、さらに再生可能エネルギー100%運用といった環境配慮も備える。
セコムは「お客様の情報資産を守ることで、安心してビジネスに専念していただけます」としている。

挑戦を支える、安心をつくる

壁に貼られたたくさんの写真。「ひまわりの種」、「大量のゆでたまご」、「いつも使う道具」、「お下がりの初グローブ」―。写真を見つめながら回顧する大谷翔平選手。大切なものに囲まれていることに気づく。メッセージが流れる。「ぼくはたいせつなものと生きている」。この夏にテレビ放映されたCM「たいせつなもの」編だ。
セコムは次のように説明する。「このプロジェクトは、大谷選手が新たな家族を迎えたことをきっかけに、セコムとともに自分や家族が安心して過ごせるかけがいのない場所=ホームを守りたいという想いから始まりました」。
家はリラックスできるだけでなく、家族や大切な人、モノとともに過ごす場所。ホームセキュリティは、「家を守る」ことにとどまらず、人やモノ、時間といった一人ひとりにとってかけがえのない価値を守り、挑戦するすべての人を支えていく。
社会課題が複雑化する中で、「安全・安心」を求めるニーズは多様化していく。「AIやIoTなどの最新技術と、長年培ってきた警備のノウハウを組み合わせることで、より一層高度なセキュリティが提供できると考えています」とセコム。「安心」は時代が変わっても揺らぐことのない普遍的な価値。先端技術と人の力を融合させながら、誰もが安心して暮らせる社会の実現を目指していく。

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