社内風土改革に各種施策導入 田中真一さくら構造代表取締役

日本生産性本部は2026年3月13日、第101期「人事部長クラブ」の3月例会を都内で開催(オンライン併用)した。当日は「上司を選ぶ~『自己開示』の文化が育てる上司も部下も成長する新しいマネジメントの形」をテーマにさくら構造代表取締役の田中真一氏が講演した。


「上司を選ぶ~『自己開示』の文化が育てる上司も部下も成長する新しいマネジメントの形」

さくら構造代表取締役 田中真一氏

田中氏が2006年に創業したさくら構造(本社=札幌市)は構造設計者を100人以上抱え、構造設計事業、耐震診断・耐震補強設計事業、構造コンサルティング事業、建設マネジメント事業を展開している。
同社では2011年頃から、管理職制度の機能不全、低い生産性、営業上の細かなトラブル、社員の離職など組織の機能不全が起こっていた。売上は伸びたが、社員が疲れている、自信を失っている、楽しそうではない、社員同士で協力し合わない、上司・取引先・顧客に関する愚痴が多いといった現象が見られ、2018年度の離職率は11.3%に達していたという。
そこで同社では、社内風土改革のための各種施策(MVPV、上司選択制度、ドラゴンマネジメント等)を導入した。
MVPV(経営理念)では、MISSIONを「高耐震を、あたりまえに」、VISIONを「日本の耐震技術を世界に広め、構造業界シェア№1になる」、POLICYを「構造設計者の価値向上」、SAKURA VALUE(行動指針)を「約束を守る。体調管理は仕事の一つ。仲間を信頼し、助け合う。遊び心で、心に余裕を。常に想像し、期待を超える。気合いと粘り強さ。自分の居場所を作る。仲間を気にかけ、孤立化させない。この道を行けば分かるさ、社会貢献」と定めた。
ドラゴンマネジメントは、社員一人ひとりに「ドラゴン(上司・先輩)」が伴走し、仕事量・優先順位・目標を一緒に設計する仕組みで、繁忙期やトラブル時もチームで支え、無理なく成果を出せる働き方を実現している
企業文化については、「選択の自由を認め、選択の責任を負う文化」「得意・不得意があっていい、自己開示の文化」「今できることで仲間に貢献し、居場所を作る文化」と規定した。

上司選択制度

2020年度から実施されている上司選択制度は、社員が管理職の得意・不得意や人となりを理解したうえで「この人と働きたい」と思える上司を社員が自分で選べる制度で、エンジニア部門の入社2年目以上の社員を対象とし、毎年3月に上司選択のアンケートを実施する。アンケート回収後、新入社員を含めて人数バランス調整を行い、配属先を決定する。制度開始以降、全社員が第一希望の上司のチームに着任している。室員がいなくなった設計室は解散する。
上司選択制度の肝となるのが「室長活用マニュアル」。上司となる室長(管理職)の能力や性格をまとめた、いわば上司の通信簿で、全社員に公開されている。設計品質管理、工程管理、顧客満足度向上といった業務上の能力から、社員の不安や悩みのケア、社員の自己実現支援、仕事を楽しませるなどの項目があり、それぞれの項目に評価がつく。
田中氏は、「過去には、どの部下にも選ばれず、担当していた設計室が消滅した管理職が2人いたが、彼らはマネジメントが不向きだっただけだ。エンジニアとしては一流で、現在はプレーヤーとして最前線で活躍している。この状態は、一般的な組織では降格と解釈されるが、さくら構造では『苦手なポジションから解放されて良かったね。今までごめんね』という解釈をしている」と説明した。


制度導入後の変化と施策の結果

制度導入後は、部下側では、上司の愚痴が確実に減った、離職理由として「上司」が挙がることがなくなった、上司の弱点に期待しなくなった、上司を助けようとする社員が増えた、管理職(上司)側では、弱点が全社に公開されるため、背伸びしたり、虚勢を張れなくなった、「完璧な上司でいなければならない」というプレッシャーから解放され、「助けて」と言いやすくなった、自分から「助けて」と言う前に、部下が先回りして助けてくれる場面が増えた、苦手なことに時間をかけず、得意なことや期待されている役割に集中しやすくなったといった変化が生じているという。
これらの施策の結果、離職率は「2023年度には0.99%に減少した。上司選択制度導入後の管理職の離職者はいない。田中氏は「地方の中小企業は昔から採用に苦しんできた。いくらプロモーションを行っても即戦力は来てくれないので、社員に辞められたら困る。ずっと採用に悩んできて、こういうことを始めて、少しずつ結果が出てきた」と述べた。



第101期「人事部長クラブ」は、「採用から育成までをつなぐ人材マネジメント―人と組織の関係を再設計する ―」を統一テーマに2027年7月まで開催。
対象は、人事・労務、総務、人材、経営企画等のエグゼクティブ。



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