「多様な人材が活躍できる社会を」 熊谷組 管理本部ダイバーシティ推進部長 黒嶋敦子氏
日本生産性本部は2026年4月17日、第101期「人事部長クラブ」の4月例会を都内で開催(オンライン併用)した。当日は「多様な人財が活躍できる社会を目指して」をテーマに熊谷組管理本部ダイバーシティ推進部長の黒嶋敦子氏が講演した。
熊谷組の取り組み紹介
ダイバーシティ推進部長黒嶋敦子氏
熊谷組では2015年当時、「建設業は男性社会であり女性が少ないため、女性技術職の割合が少ない」「女性の勤続年数が男性に比べて短い」「男性に比べ女性に成長のチャンスが与えられていないので、女性管理職が少ない」「男女だけでなく年齢による意識の差も生じており、上司と部下間でコミュニケーションが不足している」「フルタイムで働く社員による長時間労働が常態化している」といったダイバーシティ推進上の課題があった。
そこで、こうした要因を取り除き、「イキイキと働ける職場環境」をつくるために、2016年から、①企業姿勢の表明・展開②職場環境整備③意識改革・職場風土④人事制度整備⑤ESG、SDGsの視点から新しいことに挑んでいける人財育成の五つを柱に取り組んだ。
「企業姿勢の表明・展開」では、トップメッセージの発信、全社ダイバーシティ推進体制の構築、ダイバーシティ推進委員会の設置などを進めた。
多角的な取り組みにより職場風土の改善を図る
「職場環境整備」では、女性専用トイレ・更衣室を整備し、男女問わず現場作業所で活躍できる環境をまずはハード面から改善を図った。また、現場環境整備チェックリストによる現場作業所へのダイバーシティパトロールも実施した。現場の女性専用トイレの設置率は2024年度には94%に達している。現在は、定期的なアンケートを行い、女性用トイレに擬音装置の設置や生理用品の常備化も推進している。
「意識改革・職場風土」では、アンコンシャスバイアス(無意識に持つ偏見)の講演会や全社女性土木技術者交流会を実施した。あわせて両立支援(仕事と育児、仕事と介護、仕事と治療)ハンドブックの作成、男性育児休業取得者座談会の開催など、男性育休取得向上やLGBTQへの理解促進にも注力した。「ファミリーシップ制度」(同性パートナーや事実婚も配偶者と同等と見なし、さらにその子まで社内制度が利用できる)の導入などを行い、こうした多角的な取り組みにより、職場風土の改善を図った。その結果、育児休業取得者の平均育休取得日数は2025年末には30.9日になっているという。
社外評価の向上から認知度の向上につながった
「人事制度整備」では「妊活支援休暇制度」(付与日数5日、一般不妊治療・体外受精及び顕微授精を行っている社員が対象)や「不妊治療休業制度」(通算365日を上限、体外受精及び顕微授精を行っている女性社員が対象)の導入、若手社員の悩み相談などを行う「くまがいよろず相談所」の設置、「管理職層を対象としたマネジメント相談室」(管理職層、指導層において組織のコミュニケーションの活性化や部下指導の悩みについて気軽に相談できる社外相談窓口)の設置などを行った。
⑤に関しては、魚類の養殖と植物の栽培を組み合わせた持続可能な環境保全型ハイブリッド農業(アクアポニックス)事業を推進するプロジェクトを佐賀市で推進していることなどに触れた。
黒嶋氏は、ダイバーシティ推進後の経営指標(2015年度と2024年度対比)として、一人あたりの月平均時間外労働が30.2時間減少、管理職比率に占める女性の人数が7.7倍、女性技術者数が2.6倍になったことなどを紹介したほか、なでしこ銘柄2020や新・ダイバーシティ経営企業100選などに選定され、このような社外からの評価により、熊谷組の認知度向上にもつながったと報告した。
第101期「人事部長クラブ」は、「採用から育成までをつなぐ人材マネジメントー人と組織の関係を再設計するー」を統一テーマに2026年7月まで開催。
対象は、人事・労務、総務、人材、経営企画等のエグゼクティブ。
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