変革課題で成果を出すリーダーのマネジメント・スキル④(2020年8月5日号)

■課題達成に向けた実行とリーダーシップ

前回までの課題の定義と計画を経て、課題達成に向けた実行段階に入ります。
ここで重要なのは、変革課題の推進のためにいかに「リーダーシップを発揮するか」という点です。


リーダーシップとは「行動」である

ここでいうリーダーシップとは「課題達成や組織強化に向けた働きかけ」のことです。
つまりリーダーシップとは、先天的あるいは属人的な「性質」のことではなく、「行動」なのです。
「行動」ですから、やれば良いのです。
今般のテーマで言えば、変革課題のゴールが達成できるように、そして各メンバーが的確に活動できるように、必要な働きかけを主体的かつ積極的に行うことです。


実行でつまずく三つの欠落ポイント

実行段階でつまずくリーダーを観察すると、本来必要不可欠なリーダーシップ行動が欠落していることが多いのです。
典型的なものが、①説明不足、②進捗管理をせずに放置、③偏ったフィードバックの三つです。


説明不足

一つ目は変革課題についての説明不足です。
課題遂行に対する抵抗の多くは、課題そのものへの反対ではなく、その必要性や内容が理解できていない場合がほとんどです。
そして、その原因の多くはリーダーの伝え方の拙さです。

本来、課題が出てきた背景・目的と課題の定義・計画を、根気よく説明することが不可欠です。
職位別に説明し、必要な場合には合宿形式でとことん説明を行い、質疑を受け、議論をすることも必要です。

さらに、ゴールを明確にすることも大切です。
この課題が達成できたらどんな状態になっているのか、何がうれしいのかを、生き生きと語ることも欠かせません。


進捗管理をせずに放置

二つ目は進捗管理の不手際です。
「メンバーからの進捗報告が無い」と嘆くリーダーによく会いますが、私は「それはただの放置であり、放置はリーダーの怠慢だ」と伝えています。
期待される成果を生み出すために行動することがリーダーの役割ですから、この嘆きは「私はリーダーの仕事をしていません」と大っぴらに宣言しているようなものです。

報告が無いのであれば自ら取りに行く、それ以前に各担当者から進捗報告がされる定例会や報告ルール等の仕組みをつくっておくことが不可欠です。


偏ったフィードバック

三つ目は、リーダーからメンバーへのフィードバックが、プラスかマイナスのどちらかに偏っていることです。
つまり「褒めることのみに終始する」か、単に「怒る・叱る」のどちらか一辺倒の状態なのです。

大事なことは、最終ゴールに向け、各メンバーが担当作業をしっかりと全うするために、リーダーが「承認」と「修正」の両方を、的確に行うことです。

例えば、期待通りの成果と納期で作業を終えた時は、褒める・ねぎらう等の「承認」を与え、満たしていない場合は(相手の状況を確認しながらも)、注意・指導といった「修正」を厳正に行うことです。
これら両面からのフィードバックがあって、初めてメンバーの望ましい行動が持続するようになります。

ただし、必ず守ってほしいことは、「行動」と「人格」を切り分け、外から観察できる「行動」のみを対象にすることです。
私たち日本人は、特に「修正」の場面で、「意識」や「人格」を直そうとする傾向があるので要注意です。
外から観察できる「行動」を「修正」の対象とすることを決して忘れないでください。


リーダーシップとは「信頼」である

上記の三つの行動の欠落ポイントを無くしていくことに加え、覚えておいてほしいのは、リーダーシップ行動の有効性に大きく影響する要素があるということです。

それは、メンバーがあなたの働きかけを「受け入れるか、拒否するか」の判断です。
その判断はメンバーがあなたを「信頼しているかどうか」にかかっています。

職位の力だけを頼りにしているリーダーに対し、メンバーはしばらくの間は従っていても、いずれ離反か離脱をしてしまいます。
一方、成果に向けて時には厳しい指示・命令をしながらも、同時に人間性や関係性を大事にするリーダーのもとでは、メンバーは積極的な行動を示し、ゴール達成に向かっていきます。
後者のリーダーはメンバーからの「信頼」が得られており、その「信頼」が課題遂行の土台になっているのです。

信頼の源泉は、仕事上の実績や成果はもちろん、知識・スキル、経験、言動、姿勢や価値観、人柄にまで及びます。
つまり、リーダーであるあなたの日頃の「生き様」が、メンバーの行動に大きな影響を与えていることを心に刻んでおいてください。

全4回にわたり、リーダーに求められるマネジメント・スキルを紹介しました。
「期待される成果を生み出す」ために、「マネジメント・プロセスを効果的に活用」し、「信頼を土台としたリーダーシップ行動を発揮する」ことを、しっかりと体得した上で、新しい価値を創出し、素晴らしいリーダーとして活躍されることを心より願っています。

(おわり)




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コンサルタント紹介

主任経営コンサルタント

筒井 健太

・総合電機メーカーにて部門横断プロジェクトのチーム・マネジメントに14年間従事、管理職まで経験。
・その後、外資系コンサルティング会社にて、パフォーマンス向上のコンサルティングと人材育成支援を行なう。
・日本生産性本部「経営コンサルタント養成講座」を修了後、本部経営コンサルタントとしてパフォーマンス・コンサルティングを中心に活動中。
・国際基督教大学教養学部卒業、ニューヨーク州立大学バッファロー校経営学修士課程修了。
(1970年生)

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