第2回:中堅・中小企業の経営改革~コスモテック~(2021年11月25日号)

■プロジェクトチーム フル稼働

長野県のITシステムを支えるコスモテック(本社=長野市)は、長野県下に4カ所の事業所を持ち、システム開発、情報ネットワークシステムの保守、運用、構築、OA機器販売などを展開している。長野県下のJAグループを主な顧客とし、JA長野県グループの情報処理サービスを行う長野県協同電算を親会社に持つ。

鈴木康司・コスモテック代表取締役社長は、「JAの経営は厳しく、当然ながら協同電算もコスト削減を求められており、当社も大きな影響を受けている。JAと協同電算という二つの大きなお客様に対して、しっかりと自社の地盤を固めることが求められている」という。

辰野亘・管理部長が昨年、日本生産性本部の経営コンサルタント養成講座中小企業診断士コースを受講したことが、同本部の研修・コンサルティングを受けるきっかけになった。

同コースで指導を受けた鈴木康雄・同本部主席経営コンサルタントの助言を得て、同社ではまず、今年1~2月に、管理職及び管理職候補者の業務の棚卸を行った。

対象者は、事前に、管理職研修を受講し、管理職に必要な役割やスキルなどを理解したうえで、役員面談に臨んだ。事前課題として、自社の分析と、自社の業績向上への課題、人材育成の課題、改善・革新の課題などを記述し、その上で自分が管理職に任用されたら何を実行していくかの行動計画(アクションプラン)を役員面談で発表した。その結果を受けて、新たな管理職が任命されるとともに、企業変革のためのプロジェクトチームのメンバー選出も行われた。

今年4月から始まったプロジェクトチームは、恒常的に売上をどう増やしていくかというテーマに関して、①親会社の新データセンター建設に伴い、新たなサービスの提案を検討するプロジェクト、②親会社から請け負っている運用業務の拡大方策を検討するプロジェクト、③県下のJAに対する、既存保守サービスの見直しや、情報セキュリティ製品など、新たな付加価値の製品・サービスを検討するプロジェクトの3つが進行している。他に、組織・人材関連のテーマとして、採用や人材育成、社員のモチベーション向上施策などを検討するプロジェクトも進行している。

各プロジェクトチームのメンバーは3~4人で、月1回行われる研修会では鈴木コンサルが指導・助言を行っている。他に、社長や常務に対する報告会も月1回行われている。

プロジェクトは年度計画で動いているが、上半期の成果について鈴木社長は、「一番の成果は、プロジェクトの各チームがしっかりPDCAを回しながら行っていることだ。一つ一つの課題をチームのメンバーが、喧々諤々とやりながら、目的を目指して取り組んでいるところが、今までにない成果だ。顧客を巻き込みながら、良い方向に進んでいると思う」と語る。

同社では9月に、第26期経営コンサルタント養成講座中小企業診断士コースの経営診断実習を受けた。実習最終日に、経営トップに対して行われた「診断実習報告会」では、現状分析と経営課題の明確化、モラールサーベイ結果の報告、人事制度改革の提案、新たな営業戦略の提案などが行われた。

「現在、来年度からの新中期経営計画の策定の議論を進めているが、今後は、JAの経営課題の解決に向けた提案営業を強化していきたい。良い組織づくり、人づくりにも注力していきたい。それをやらないと当社の継続的な発展はない」(鈴木社長)としている。

■強み&弱み 指摘満載の経営診断報告書

(鈴木康司・コスモテック代表取締役社長の話)


経営診断実習の報告書は10~20ページ程度の上辺だけの内容かと思っていたが、262ページのボリューム満点の報告書が出てきて驚いた。当社の強みと弱みをしっかり指摘いただき、可視化いただいて、非常にありがたい。これらの課題の解決方策については、次期3カ年計画にもしっかり盛り込んでいきたい。担当いただいた8人のメンバーには、あらためて感謝を申し上げたい。

報告書の内容が素晴らしかったので、管理職を通じ、全社員に対して、報告書の内容のフィードバックを行った。こうした情報共有を通じて、従業員との一体感を醸成し、変革を進めていきたい。

(北村長久・コスモテック常務取締役の話)
経営診断の結果を受けて、各プロジェクトにおいて、現状の課題をさらに浮き彫りにしているが、今後は、3年先を見据えながら、売上の拡大戦略や組織風土の改善などを手掛けていきたい。四つのプロジェクトのうち、セキュリティ製品については、各JAの要望を聞きながら、新たな提案を行い、3~4組織で新製品を販売できた。今後の活動に大いに期待している。

 

■成功体験を積み重ねることが重要

鈴木康雄・日本生産性本部 主席経営コンサルタントの話)


中堅・中小企業の経営改革においては、①経営計画やビジョンの策定・推進支援、②経営計画やビジョンの実現に貢献した人が評価される人事制度の策定・導入・運用支援、③課題解決に向けた行動計画(アクションプラン)の策定・推進支援、の順番で進めることが原則だ。

しかし、経営資源はそれなりにあるが、マネジメントに課題があり、業績も良くない組織があった場合、経営計画は策定せず、業績向上の行動計画の策定と推進支援を先行させることによって、半年から1年で業績向上を支援できる。
 
その手順としては、まずは、結果に結びつく行動目標づくりを支援する。次に、行動目標遂行の阻害要因をなくすことを支援して行動変容につなげる。新しい行動によって、新しい結果が生まれ、それではじめて従業員の意識が変わる。

中堅企業・中小企業においては、小さな成功体験を積み重ねることが重要だ。成功体験が積み重なると、知識も経験も増え、その結果、従業員の能力も意欲も高くなる。その際には、どうすればハードルを越えられるかをともに考える人が必要であり、どういう行動が結果につながるかの支援も必要だ。

プロジェクトチームがスタートして半年が経ったが、親会社からの仕事を待っていた受け身の姿勢から、「仮説として御社にはこういう経営課題があるはずだから、こうすれば課題を解決できる」といった提案が徐々に増えてきた。「新しい業務フローはこうあるべきではないか。こういう人員配置で仕事を進めたらいかがでしょうか」といった、顧客と一体となった課題解決に取り組んでいる。顧客の方でも、「この提案に乗ると、何かいいものができそうだ」という雰囲気になってきている。

パートナー企業との関係も、これまでは発注元である同社から言われたことをそのまま伝えるだけだったのが、「一緒に考えて、知恵を貸してくれないか」というスタンスに変わり、パートナー企業もやりがいを感じているようだ。

顧客とともに課題を解決していくという取り組みの一番の効果は、顧客に価格で値切られなくなることだ。ともに課題を解決している関係になっているので、代わりの企業は出てこない。本件は、課題解決、提案営業の変革が成功しつつあるモデルケースといえる。


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