分科会B「トップがけん引する経営変革」要旨

軽井沢トップ・マネジメント・セミナー 分科会B 要旨

仕組みを回せば会社が変わる

登壇者

廣田康人 アシックス代表取締役会長CEO

尾松豪紀 メイホーホールディングス代表取締役社長

<モデレーター>米倉誠一郎 ソーシャル・イノベーション・スクール学長/デジタルハリウッド大学大学院教授

ゼロからの頂上奪還作戦

米倉氏は「イノベーションは手段であって目的ではない。その上位概念である『何のために』が重要だ」との考えを示した。 戦後の経済復興を成し遂げた日本は「共通目標を持った時に底力を発揮する。SDGsが共通目標となる」と指摘。「誰一人取り残さない世界を作る取り組みに経営資源と英知を結集すべき」と述べた。

アシックスの廣田氏はトップが牽引した経営改革を紹介した。「グローバル・ブランド・カンパニーになりたい」との旗を掲げ、「地球儀を俯瞰したビジネスをする」ため、世界で戦うための意識改革を行った。
厚底シューズを投入したナイキが市場を席巻し、2021年の箱根駅伝でアシックスのシューズを採用した大学が「ゼロ」となる屈辱を味わった。「速く走るためには軽いシューズにするのが常識で、足を守るにはソールは厚いほうがいい。ナイキは厚いのに軽くすることに成功した。完敗だった」。 そして実行した「頂上奪還作戦Cプロジェクト」では、「まず頂上を攻めよ。世界一速く走れるシューズを開発し、トップ選手をつかんで、波及効果を及ぼす」と号令をかけた。通常、2年かかるシューズの開発を1年半で行い、シェアを挽回していった。

「会社を変えるには仕組みを回すことと、トップのメッセージを社員に伝えることが大事。毎年正月に出すメッセージでは、ちょっとシェアが回復したときに『こんなものじゃない』、かなり回復したときには『脚を止めるな』というメッセージにした」と話した。

中小企業経営者の意識改革を

M&Aなどの手法で中小企業の経営改善に取り組むプラットフォーマーを自負するメイホーホールディングスの尾松氏は、「日本の閉塞感を打破し、高揚感を蘇らせるには、中小企業の経営者の考え方を変えるべきだ。全責任を被る中小企業のオーナーたちの考え方を変えて、日本を活気ある国にしたい」と述べた。
「経営トップの意志を社員の意志に変える力があれば、ミッションやビジョンを実現できるが、これが難しい。会社の存在目的を明確にするには、本音を語り、具体的な目標を立てることが大事」と言う。

経営トップに必要な考え方については「厳格な計数管理をもとに経営する厳しい心と将来世代の全ての人を幸せにしていくという広く高い志を持つことが重要で、立てた目標は必ず実行すること、強烈な意志を心に抱き、それに向けて必死に努力し続けることが大事だ」と指摘した。
「自分の経験や考えから導き出した暗黙知を形式知にするなど標準化に取り組んでいる。暗黙知を描いた冊子を配ったり、毎週月曜日にグループ企業の社員にメールを送ったりする取り組みを20年以上続けている」と紹介した。

(生産性新聞2024年8月5日号掲載)


登壇者略歴

廣田康人 株式会社アシックス代表取締役会長CEO

1956年生まれ。80年、早稲田大政治経済学部卒業後、三菱商事入社。89年、同欧阿三菱商事(ロンドン)赴任、01年同 本社広報部長、10年執行役員 総務部長を経て、14年代表取締役 兼 常務執行役員 コーポレート担当役員に就任。17年関西支社長を兼務後、18年株式会社アシックス入社。顧問・同年3月代表取締役社長COOを経て、22年3月より代表取締役社長CEO兼COOに就任。2024年1月より現職。

尾松豪紀 株式会社メイホーホールディングス代表取締役社長

1992年入社。2001年代表取締役就任、2021年東証マザーズ(現グロース)・名証セントレックス(現ネクスト)に上場。現在は全国23社・1700名を超える企業グループとなる。地域を支える中小企業と資本 提携し、「中小企業経営支援プラットフォーム」を通じて、グループ入りした企業の稼ぐ力を強化。グループ全体の資金力を上げ、さらなるグループネットワークの拡大を目指す。

米倉誠一郎 ソーシャル・イノベーション・スクール学長 デジタルハリウッド大学大学院教授

専攻はイノベーションを核とした経営戦略と組織の歴史的研究。一橋 大学、法政大学で教授を務めた他、学外活動では、ソニー戦略室長、プレトリア大学日本研究センター所長などを経て、「一橋ビジネスレビュー」編集委員長を兼務。現在は公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会会長の他、複数企業の社外取締役、NPO法人のアドバイザー・理事、ベンチャー企業の顧問・アドバイザー等も務めている。

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