分科会C「いま求められる生産性改革」要旨

軽井沢トップ・マネジメント・セミナー 分科会C 要旨

企業の壁越えた連携がカギ

登壇者

菊地唯夫 ロイヤルホールディングス代表取締役会長

木村哲也 旭鉄工代表取締役社長

<モデレーター>小野塚征志 ローランド・ベルガーパートナー

「質の成長」が付加価値の源泉

小野塚氏は「人口減少時代は多様な人材が集まり、相互に機能する環境を創ることが大事。新しいアイデアを他の産業にも横展開すれば、『1プラス1』以上の価値を創造できるはずだ」と話した。

ロイヤルホールディングスの菊地氏は、「画一性・スピード・効率性のモデルで発展した外食産業だが、人口減少社会では、需要サイドで拡大市場と縮小市場の二極化が起こり、供給サイドでは、労働供給のボトルネックが顕在化している」と話す。
縮小市場となっているファミリーレストランでは、「質の成長」が求められているとし、ロイヤルホストで国産化農産物の活用による付加価値向上と、24時間営業の取りやめと営業時間の短縮などに踏み切り、「規模の戦略的圧縮」による改革を進めた。しかし、改革途上でコロナ危機が起こり、「外食、中食、内食の垣根がなくなり、デジタルの進化で、お客様が自らの好きな時間に好きな場所で好きなスタイルで食の選択ができ、時間と場所から解放されつつある」と話した。

また、第4次産業革命により「これまでの人とテクノロジーの関係は代替性だったが、現在は補完性・拡張性である」と指摘。接客ロボットを自宅で遠隔操作できるテクノロジーを共同開発し、新たな労働参加の促進とサービス向上を両立させる取り組みを紹介した。

非競争領域のオープン化へ

旭鉄工の木村氏はDXとやる気を引き出す社内活性化によって、カイゼン効果や電力消費量の大幅な削減に成功した自社の取り組みを紹介し、そのノウハウを他社に提供するビジネス展開を進めていることを明らかにした。
木村氏は、カイゼンのノウハウを伝授する『付加価値ファースト』と題した著書を紹介し、「ブランド価値向上やDXの実績、新技術への取り組み、値付けの見直し、正確な原価の見える化と黒字化、他社にない付加価値創出、IoTの活用、無駄な電力の見える化など、これを読めば楽しくカイゼンできる」と話した。

例えば、製造設備の電力を調べたところ、正味電力以外にも、停止電力や待機電力が6~7割あり、「業務終了後に電源をオフにすることを徹底すると、電力使用量は6割削減できた」という。
同じことは他の工場でもありうることで、電力使用量を削減するには、ナレッジを共有することが大事になる。デジタルで横展アイテムリスト(ノウハウ集)をつくり、生成AIを使うなどの方法で、ナレッジ共有を進めている。
木村氏は「生産性向上を進めるには、企業の壁を越えて競争力を強化する必要がある。製造現場マネジメントによるコスト低減などの『非競争領域』は、オープン化すれば、多くの企業が参加し、ノウハウを蓄積することができる」とし、産業界での連携が生産性改革の鍵になると指摘した。

(生産性新聞2024年8月5日号掲載)


ご登壇者略歴

菊地唯夫 ロイヤルホールディングス株式会社代表取締役会長

1988年早稲田大学政治経済学部卒業、日本債券信用銀行(現 あおぞら銀行)入行。93年フランスESSEC経済商科大学院大学卒業。97年同行秘書室秘書役頭取担当。2000年ドイツ証券入社、投資銀行本部ディレクター。04年執行役員総合企画部長兼法務室長としてロイヤル(現 ロイヤルホールディングス)入社。10年代表取締役社長、16年代表取締役会長兼CEO、19年現職。京都大学経営管理大学院客員教授、サービス産業生産性協議会副代表幹事。

木村哲也 旭鉄工代表取締役社長

東京大学大学院修士修了。トヨタ自動車でトヨタ生産方式を学ぶ。2013年旭鉄工(株)に転籍し、2016年代表取締役社長に就任。DXにより年10億円の収益向上や電力使用量26%削減を実現、またChatGPTの活用など先進的な取り組みで知られる。旭鉄工のIoTや カイゼンノウハウを提供するi Smart Technologies(株)も設立。著書に「付加価値ファースト~常識を壊す旭鉄工の経営~」がある。

小野塚征志 ローランド・ベルガーパートナー

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。長期ビジョンや経営計画の作成、新規事業の開発、成長戦略やアライアンス戦略の策定、構造改革の推進などを通じてビジネスモデルの革新を支援。近著に、「DXビジネスモデル」(インプレス)、「サプライウェブ」(日経BP)など。

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