パネルセッション「次代を担う経営者の挑戦」要旨

軽井沢トップ・マネジメント・セミナー パネルセッション 要旨

社会課題解決は最後のフロンティア

登壇者

中村多伽 taliki代表取締役CEO/talikiファンド代表パートナー

石川聡彦 アイデミー代表取締役・執行役員社長

<モデレーター>冨山和彦 経営共創基盤IGPIグループ会長

社会課題解決をビジネスに

セッションは30歳前後の若手起業家をゲストスピーカーに迎え、若手経営者の考え方、価値観からこれからの経営観を考えるのがねらい。最初に冨山氏が「スタートアップの人たちが根っこの部分で日本の経済・社会の再成長の重要な要素だ」と指摘した。

中村氏は、京都大学在学中に国際協力団体の代表としてカンボジアで学校を2校建設。手応えを感じる一方で社会的な「カベが多く、自分の無力さを感じた」という。その後、米ニューヨークのビジネススクールへ留学。現地報道局に勤務し、大統領選や国連総会などを取材した。様々な経験を通して「社会課題を解決するプレーヤーの支援」の必要性を感じ、帰国後の2017年にtalikiを設立した。「世の中を変えるのは一人ひとりの力。課題にアクセスする人を増やすため彼らにリソースが流れるようにしよう」と考えた。
talikiでは300以上の社会起業家のインキュベーションや上場企業の事業開発・オープンイノベーション推進を行いながら、2020年には社会課題解決VC(ベンチャーキャピタル)を設立し、投資活動にも従事する。中村氏は、社会起業家を「売上・利益、技術・ノウハウの活用も大事だが、『課題解決』が最重要であること」と定義。成熟した日本社会にあって、「社会課題解決は最後のフロンティア。ビジネスチャンスと捉えてほしい」と参加者に訴えた。

「渇望感」と「成功体験」

続いてアイデミーの石川氏が、自身の挑戦をテーマに講演した。石川氏は、東京大学在学中の21歳の時に起業したが、事業がうまくいかず、「24歳までの3年間は暗黒だった」と振り返った。挑戦の原動力になったのは「渇望感」と「成功体験」。これらのバランスを大事にしているという。  24歳の時にアイデミーを設立。DX/GX人材へのリスキリングサービス「Aidemy」やシステムの内製化支援サービス「Modeloy」を開発・提供して急成長。2023年6月には東証グロース市場に上場した。石川氏は「僕自身の挑戦のテーマは、やりたいことではなく、やるべきことを選択してきた」と話した。

アイデミーのミッションは「先端技術を、経済実装する。」、バリューは「技術リスペクト」「好奇心ドリブン」「変革メイカー」の3つ。石川氏は、経営者として「あるべき社長像」に憧れる一方、悩む姿を見せたときの方が社内に一体感が生まれたことから「創業者の『匂いのある』組織を目指し、『あるべき姿』から離れていても、自分の言葉を大事にする」と述べた。 両氏の発表後は冨山氏を交えてクロストーク。両氏とも起業にあたっては親に反対されたという。石川氏は「親が起業を止めるのもある。それが反骨精神につながる」と指摘。冨山氏から30年後の将来像を尋ねられた中村氏は「挑戦する人と同じ目線で話ができ、頼りにされ、気前のいいおばさんになりたい」と笑顔で話した。

(生産性新聞2024年8月5日号掲載)


登壇者略歴

中村多伽 taliki代表取締役CEO/talikiファンド代表パートナー

1995年生まれ、京都大学卒。大学在学中に国際協力団体の代表としてカンボジアに2校の学校建設を行う。その後、ニューヨークのビジネススクールへ留学。現地報道局に勤務し、2016年大統領選や国連総会の取材に携わる。様々な経験を通して「社会課題を解決するプレイヤーの支援」の必要性を感じ、帰国後に株式会社talikiを設立。300以上の社会起業家のインキュベーションや上場企業の事業開発・オープンイノベーション推進を行いながら、2020年には国内最年少の女性代表として社会課題解決VCを設立し投資活動にも従事。

石川聡彦 アイデミー代表取締役・執行役員社長

東京大学工学部卒。同大学院中退。在学中の専門は環境工学で、水処理分野での機械学習の応用研究に従事した経験を活かし、 DX/GX人材へのリスキリングサービス「Aidemy」やシステムの内製化支援サービス「Modeloy」を開発・提供している。著書に「人工知能プログラミングのための数学がわかる本」(KADOKAWA/2018年)、「投資 対効果を最大化する AI導入7つのルール」(KADOKAWA/2020年)など。

冨山和彦 経営共創基盤IGPIグループ会長

ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役を経て、2003年に産業再生機構設立時に参画しCOOに就任。解散後、株式会社経営共創基盤(IGPI)を設立。2020年10月より現職。2020年日本共創プラットフォーム(JPiX)設立、代表取締役社長就任。パナソニックホールディングス社外取締役、メルカリ社外 取締役。日本取締役協会会長。内閣官房新しい資本主義実現会議有識者構成員他。第67回「軽井沢トップ・マネジメント・セミナー」総合コーディネーター。

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