分科会D「企業によるイノベーションと地方創生」要旨
地域を巻き込む力と覚悟が必要
登壇者
中山亮太郎 マクアケ代表取締役社長
前田大介 MAE 代表取締役/GEN風景 代表取締役
<モデレーター>加藤史子 WAmazing 代表取締役CEO
分科会Dは「企業によるイノベーションと地方創生」をテーマに行われた。ゲストスピーカーとして、マクアケ代表取締役社長の中山亮太郎氏、MAE代表取締役、GEN風景代表取締役の前田大介氏、モデレーターとしてWAmazing代表取締役CEOの加藤史子氏が登壇した。
加藤氏は、内閣官房「新しい地方経済・生活環境創生会議」委員を務め、インバウンド向けの旅行予約プラットフォームや地域観光コンサルティングも手掛ける。「地方創生は時間がかかり、理想だけでは続かない」と述べ、「理念」と「利益」を両立させる視点が重要だと訴えた。
地方企業のチャレンジの場に
中山氏は、ベトナム滞在中に、「かつて世界を席巻した日本の製品が見当たらない」と実感。日本のものづくりを支援するため、一般に販売されていない商品を先行公開し、応募購入という形で消費者につなげる先行販売プラットフォーム「Makuake」を創業。中山氏は、「市場に出す前、売れるかどうかのニーズを試せる仕組みが、小規模事業者や地方企業にとってリスクの少ないチャレンジの場となる」と述べた。
様々な地方企業ともコラボレーションを展開している。岡山県のデニム企業が、自社ブランドを立ち上げ、ヒット商品を生み、都市から移住者を受け入れるまでに成長した事例を紹介。「Makuake」は、単にモノを売るだけではなく、地域の雇用やコミュニティにも影響を与え始めているという。
地方企業にとって、資金調達は新たな道を開く。中山氏は、「『Makuake』での販売実績を示せば、金融機関の融資の後押しにもなる」と話した。結果的に、地方で眠る技術や想いに光を当てる事業となっている。
地方創生は100年投資
前田氏は、「地方創生とは100年投資」と言い切る。富山県で製薬会社「MEA」を経営する一方、美と健康の体験型施設「Healthian―wood(ヘルジアン・ウッド)」を2020年に開業。ハーブ園と水田の中にレストランやサウナホテル、アロマオイル抽出工場などが点在する「村」を立山連峰で営む。小学校廃校跡を活用した宿泊施設や耕作放棄地の再生も進めている。
「人と社会に新陳代謝を」というミッションを掲げ、「治療」から「予防・美・体験」へと進化させる新たな事業に乗り出すことを決断。最初は、社員の大半が、「やめた方がいい」という反応か、無関心だったという。前田氏は、「経営者が旗を振るだけではなく、ビジョンに共感し、実際に事業として成立させる仲間が必要だ」と述べた。新規事業では、既に社員の約20%が県外からの移住者という。地域の企業も出資、地域の雇用と関係人口を創出している。
稼ぐ力と覚悟が大事
前田氏は地域資源を生かした「村づくり事業」への挑戦について、「稼ぐ力こそ必要。あとは熱意と仕組みがあれば、地方はまだまだ変われる」と大きな期待を込めた。
ただ、地方創生は持続可能性の確保が不可欠であり、綺麗ごとだけでは続かない。最後に、3人は、地方創生の成功のカギについて、「売る力と巻き込む力、そして覚悟」と強調した。
(生産性新聞2025年8月5日号掲載)
登壇者略歴
中山亮太郎 マクアケ 代表取締役社長
2006年に株式会社サイバーエージェントに入社後、社長運転手の傍ら新規のオンラインメディアを立ち上げ、その後ベトナムでのベンチャーキャピタル事業を担当。2013年に現在の株式会社マクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」をリリース。2019年12月には東証マザーズに株式を上場。大企業、中小企業、スタートアップ、個人チームなど、規模を問わず、挑戦者の背中を押す事業の拡大を目指す。一般社団法人ベンチャー型事業承継の理事として日本全国のアトツギベンチャーを応援する活動も推進している。2022年「第4回日本サービス大賞」経済産業大臣賞を受賞。
前田大介 MAE 代表取締役/GEN風景 代表取締役
1979年富山県生まれ。同志社大学商学部卒業後、会計事務所を経て2008年にMAE(旧前田薬品工業)に入社。2014年に三代目社長に就任。経営手腕を発揮し、瀕死の危機にあった同社を急成長させる。薬の都、富山で皮膚疾患薬専門の製薬会社を経営する傍ら、病気と薬のない世界を目指した美と健康の体験型施設「Healthian-wood(ヘルジアンウッド)」を2020年に開業。ハーブ園と水田の中にレストラン・SPA・サウナホテル・アロマオイル抽出工房などの施設が点在する「Village-村-」を立山連峰の麓で営む。同施設を中心に空き家や廃校、耕作放棄地の再生(アップサイクル)を推進。日本と富山の未来を描き、新たなプロジェクトに挑み続けている。
加藤史子 WAmazing 代表取締役CEO
慶應SFC卒業後、リクルートにてインターネットでの新規事業立ち上げに携わった後、観光産業と地域活性のR&D部門じゃらんリサーチセンターに異動。主席研究員として調査研究・事業開発に携わる。2016年7月、訪日外国人旅行者による消費を地方にもいきわたらせ、地域の活性化に資するプラットフォームを立ち上げるべくWAmazingを創業。コロナ禍期間中を乗り越え257名(2023年10月1日時点)の組織で、日本のナンバーワン外貨獲得産業になりうるインバウンド市場で日本経済の再興・地方創生を実現するプラットフォームサービスを作るべく挑戦中。内閣官房「新しい地方経済・生活環境創生会議」委員。
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