第10回 生産性運動の精神―ローマ会議報告・JPC創立5周年
連載「JPC 70th クロニクル」⑩ 生産性運動の精神
「明日は今日に優る」という確信

「生産性とは何よりも精神の態度であり、現存するものの進歩、あるいは不断の改善を目指す精神状態である。それは、今日は昨日よりもより良くなし得るという確信であり、さらに、明日は今日に優るという確信である。」
ヨーロッパ生産性本部生産性委員会は1959年3月、ローマ会議の「報告と結論」という覚書でこのように「生産性運動の精神」を謳い、「現状に対する改善の意志」「条件の変化に経済社会生活を不断に適応」「新しい技術と新しい方法を応用せんとする不断の努力」「人間の進歩に対する信念」と続けた。
生産性運動には「正しい精神的風土を創ることが必要」であり「生産性に対して下された最も優れた定義の一つ」として記されたものだ。
人類福祉の増進と文明の形成
その1年後に創立5周年を迎えた日本生産性本部は60年3月6日、本部創立5周年大会を開き、「5周年宣言」を発表した。
宣言は、わが国に生産性運動が導入されて5年を経た評価とこれからの運動の取り組みの方向を示したもの。宣言では、科学技術の発達は生産性を急速に上昇させ、経済、社会の進歩に貢献したが、一方、階級の分化と富の偏在をもたらしたと分析した。
その解決に当たって生産性運動の目標を、初めて「人類福祉の増進と文明の形成を目ざすいっさいの努力である」と規定。▽海外の新しい経営管理技術をもとに経営の近代化を図る▽体系的・組織的な経営教育の展開▽労使協議をもとに近代的労使関係の確立を促す▽中小企業の経営的基礎の強化――など6点の方向を示した。
この5周年宣言を一区切りに、日本生産性本部の事業活動は、新たなステップに踏み出すことになった。(文中・敬称略)
【参考文献】『生産性運動50年史』(社会経済生産性本部、2005年)
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