第8回 「労使間の信頼と相応しい環境」―労使協議制の推進
連載「JPC 70th クロニクル」⑧ 労使間の信頼と相応しい環境
ILO(国際労働機構)の勧告
ILO(国際労働機構)は1952年、「企業における使用者と労働者との間の協議および協力に関する勧告」を発表。その中で、従来からあった「団体交渉」とは別に、「労使協議制」という形式を打ち出した。
「具体的設置基準案」を発表

日本生産性本部は発足当初から、労使協議のあり方を確立し、制度化することは重要な懸案事項だった。56年11月、「生産性協議会に関する特別委員会」の設置を決定。目的は「わが国における労使協議制のあり方についての調査研究」。委員長は一橋大学教授の中山伊知郎。特別委は翌57年7月、「生産性に関する労使協議制の方向」を発表した。
特別委は57年11月、発展的に解消され、新たな推進機関として「労使協議制常任委員会」が設置された。
委員長は引き続き中山。下部機構として労働問題の専門家による「幹事会」が、労使協議制に関する調査、普及、指導などの実務に当たった。
常任委は58年から62年にかけて、「労使協議制のすすめ方」「中小企業の労使協議制」「日本の労使協議制」など7種の中間報告書を作成し、発表。そして64年4月、常任委は7年余にわたる研究と普及活動から得た理論と実際の成果として、「企業内における労使協議制の具体的設置基準案」を発表した。これは企業の中に生産性協議会を設ける場合の基本的な考え方とモデルを示したもの。労使協議制を採り入れるには、「まず労使間に信頼があって、これを採用するに相応しい環境ができていることが必要だ」と説いた。
基準案は大きな反響を呼んだ。同時に、企業要望に応えて、設置についての指導相談や指導相談員の派遣などが60年度から行われ、労使協議制は急速に普及が進んだ。
「労働省の一九六三年度労働組合基本調査によると、常設的労使協議機関を有する企業は一万三千六二六件に達するといわれる。」(『生産性運動10年の歩み』)
日本生産性本部は2025年3月1日、創立から70周年を迎えた。連載では、これまでの主な足跡を振り返るとともに、そこからミライの生産性運動を切り開くヒントを見出していきたい。(文中・敬称略)【参考文献】『生産性運動50年史』(社会経済生産性本部、2005年)
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