第9回 「空気」に新たな価値を与え、暮らしと社会を変えていく ダイキン工業
連載「ミライを変える革新力」⑨ 「空気」に新たな価値を与え、暮らしと社会を変えていく ダイキン工業
変化を恐れない文化と「協創」
大阪府摂津市、木々に囲まれた広大なガラス張りの建物がある。ダイキン工業の「テクノロジー・イノベーションセンター」だ。その中では、技術者たちが、日々、新たな課題に取り組む。「ワイガヤステージ」と呼ぶ、シームレスな空間がある。部門を越え、知見を融合させながら、発想のきっかけ作りを行う。
ダイキン工業は、世界170か国以上で事業を展開する空調機器のグローバルリーダーだ。その成長を支えるのは、「変化を恐れない文化」と「協創」だ。「協創」とは、自前主義にこだわらず、社内外の関係者、異業種企業とともに新たな価値を生み出すことだ。
4月1日、竹中直文代表取締役社長兼COOは、新入社員537人を前に次のように訓辞した。「企業にとって大事なことは『変化への対応力』です。これは、ダイキンの強みでもあります」。そして、「イノベーションにつながる新しい気づきや知恵を得るには、『新しい人に出会う』ことが最も大切」と続けた。
町工場からグローバル企業に
1924年、当時40歳の山田晁氏が、大阪の地で、「国産の技術で世界に挑む」と決意。創業した会社が「大阪金属工業」。いまのダイキン工業だ。15人の町工場からスタート。飛行機用ラジエーターチューブの製造に取り組んだ。戦後すぐの混乱期を乗り越えて1951年、日本初のパッケージ型エアコンを開発。その後も冷暖房兼用のエアコン「ヒートポンプパッケージエアコン」を発売。1台で冷暖房が可能となった。また、業界で初めて消費電力を低減するインバータ制御を採用したルームエアコンを開発した。
1999年には無給水加湿を売りにした「うるるとさらら」シリーズを投入。そのほか、2012年には温暖化係数の低い冷媒R32を採用したルームエアコンを販売、R32はその後、多くの空調メーカーが導入し世界各地で広がっている。


AI技術を活用した空調サービス
いま注目されるのは、AI技術を活用した新たな空調サービス「遠隔自動省エネ制御」だ。空調機のセンサーのデータと気象情報に基づき、学習したAIが空調機の処理すべき熱負荷の予測を行い、効率的な空調機の運転方法を導き出す。快適な室温環境を調節し、エネルギー効率を飛躍的に高めるだけではなく、人々のストレスも軽減する。
インドネシアの首都ジャカルタ近郊。工業団地に設立した住宅用エアコン工場で量産化が始まった。インドネシアの空調市場はアジア最大級。経済成長にともなう中間所得層の増加から需要はさらに拡大することが予想される。5月14日の開所式。竹中社長兼COOは、次のように述べた。
「この製造拠点は、未来を見据えて設計されており、自動化技術とエネルギー消費の監視を含む様々なイノベーションを通じた省エネ施策を組み合わせています。これは環境への影響を軽減し、持続可能な開発をサポートするための継続的な取り組みです」。
空気をはぐくむ森プロジェクト
地球温暖化への対応は、製品開発だけにとどまらない。森林を「地球のエアコン」を呼び、「空気をはぐくむ森プロジェクト」としてインドネシア、インド、中国、ブラジル、日本など世界各国で森林保全を実施している。単に植林だけではない。その背景にある社会課題にも取り組む。
大阪・関西万博のレストラン「水空 SUIKUU(すいくう)」。まるで高原にいるかのようだ。独自に開発した高い清浄効果を発揮する空調システムにより、温度、湿度、気流のコントロール技術により、清々しい高原のような空気をつくり出す。
地球の空気環境は年々過酷さを増している。空気をコントロールする力はますます重要だ。ダイキン工業は、創業以来、常に時代の一歩先を見据えた技術革新により、業界の常識を塗り変えてきた。空気という目に見えない存在に対して、新たな価値を与え、人々の暮らしや社会の在り方を変えていく。
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