再生家電製品の“挑戦”が始まった
渡邊 暦 パナソニックマーケティングジャパンNB戦略推進室室長(2024年7月15日号)
連載「続・サーキュラーエコノミーを創る」③ 再生家電製品の“挑戦”が始まった
パナソニックグループの使命は、創業者松下幸之助が生涯追い求めた「物心一如の繁栄」、すなわち、「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現である。当グループはこの使命を果たすために、物やサービスをお届けすることで人々の幸せや豊かさを追求し、それぞれの時代の社会課題解決に取り組んできた。現在、先進諸国を中心に社会は物で満たされてきたが、様々な問題も発生している。当グループは喫緊の課題である地球温暖化問題に対しては、環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」(以下PGI)を策定し、2030年までの全事業会社におけるCO2排出量実質ゼロ(スコープ1,2)、2050年までに全世界CO2総排出量の約1%に当たる3億トン以上の削減を目指している。
また、CO2排出と同じく重要性が高まっている問題が資源枯渇である。限られた天然資源の消費を削減するために、昨年「サーキュラーエコノミー(CE)方針」をPGIに追加した。 当グループでは、製品設計やデザイン、ビジネスモデルをサーキュラー型に変革する検討を強化しており、お客様の新しい価値観に最適化するべく、一つの製品を多くの人で共有する「シェアリングサービス」、必要な期間のみ利用できる「サブスクリプション」、機能をベースにしてサービスを充実させるIoT家電などの「モノのサービス化」、製品そのものや製品に使われている部品を再生・再利用することで、その機能・価値・寿命を最大限に活用する「リペア」、「メンテナンス」、「リファービッシュ」、「リマニュファクチュアリング」などのサーキュラーエコノミー型事業を推進している。
Panasonic Factory Refreshとは
パナソニックグループは、「限りある資源を大切にしたい」との思いから、様々な理由で当グループに戻ってきた家電をもう一度使える状態に再生し、Panasonic Factory Refresh(パナソニック検査済み再生品:以下PFR)として販売するリファービッシュ事業を2024年4月から本格稼働させた。現在、洗濯機、冷蔵庫、TV、ブルーレイディスクレコーダー、ポータブルテレビ、一眼レフカメラの6商品を販売しており、秋には炊飯器とスチームオーブンレンジも追加予定である。加えて、月額利用サービス(サブスクリプション)として、食洗機とヘアードライヤーも提供しており、今後もPFR商品を随時拡大していく。
PFRの特徴は、当グループの厳格な品質・出荷基準をクリアした製品だけが認定されることである。認定された工場で必要なクリーニング再生や部品交換再生を行い、確実に品質を確保した上で出荷するため、メーカー1年保証が付き、保証後も新品と同様にパナソニックの有償修理サービスが利用できる。PFRの性能への信頼性は、一般的に流通している中古品に比べ、圧倒的に優位であると自負している。
販売は、自社ECサイト「Panasonic Store Plus」のみで行っており、現状の価格は市場の同機種新品価格の約8割前後である(2024年6月現在での冷蔵庫、洗濯機の例)。4月から本格稼働をしているが、メディアやお客様からの反応は好調である。
CEとビジネスの両立に向けて
現在、PFR商品の販売を開始したばかりでスキーム構築に尽力している段階である。今後は、製造メーカーとして、新製品開発段階からの長期使用やメンテナンス、再生のしやすさを想定した設計やモノづくりをしつつ、責任をもって長期使用可能なサービスや事業展開を行う、循環型ビジネスの戦略構築とそれらの実行を目指している。もちろん新製品は、再生品にはない価値や魅力を提供し続けることが大前提である。その上で、循環型ビジネスにおいては、従来の指標だけでなくブランドイメージ向上への貢献や商品の生涯収支、サーキュラーエコノミーへの貢献度等を測定可能な指標を用いて判断し、評価に加えていくことが必要である。サーキュラーエコノミーとビジネスが長期的に成り立つ道を確実につくらねばならない。
また、企業としてリファービッシュ事業を強化推進していくにあたり、お客様に再生品を安心して購入・お使いいただける仕組みづくりに国や自治体、NPOなどのサポートは欠かせない。行政と経済界が連携し、必要な法制度の整備をすすめることや企業がビジネス戦略として資源循環に取り組む実行こそが必要である。この点においても、当グループは総合家電メーカーとして、サーキュラーエコノミー実現に向けた取り組みをトップランナーとして進めていく所存である。
当グループとして、今後もPanasonic GREEN IMPACTに掲げる「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立を目指していく。そのような活動を通じ、企業としての取り組みや考え方に賛同しファンになっていただけるお客様が増えれば幸いである。
著者略歴
渡邊 暦 パナソニックマーケティングジャパンNB戦略推進室室長
パナソニックホールディングス(株)パナソニック(株)で調理機器の開発に従事した後、コンシューマーマーケティングジャパン本部へ異動、パナソニックマーケティングジャパン(株)「NB(ニュービジネス)戦略推進室」室長として出向。現在、Panasonic GREEN IMPACTの重要施策の一つであるサーキュラーエコノミー実現に向けた取り組みとして、パナソニック検査済み再生品「Panasonic Factory Refresh」の事業展開を担当し、鋭意推進中。趣味は食べ歩きと時短調理。
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