2023年度 第1回:八洲電機 代表取締役社長兼COO 清宮茂樹氏(2023年10月25日号)


~続ビジネスリーダーに聞く①~

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行、ウクライナ侵攻、世界的な物価上昇、デジタル化の加速度的な進展、脱炭素化の世界的な潮流など、予測困難な経営環境下で、企業はどう対応していくべきか。日本生産性本部の「次世代経営幹部育成プログラム(CLP)」を受講した企業の経営者や経営幹部に、激変する時代におけるリーダーの役割などを聞いた。


■事業ポートフォリオの変革を推進

八洲電機は、「電機制御システム」「電源システム」「空調システム」の3つのコア技術において、プレエンジニアリング・設計・製作・施工・試運転・保守サービスを一貫して提供しているエンジニアリング会社だ。 電機制御システムでは、鉄鋼・エネルギー・ガス・化学等のプラント設備において、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラー、制御装置)システム、ドライブシステムを柱とした電機制御システムを構築し、設備の安全性・生産性向上に貢献している。電源システムでは、特高・高圧受変電設備、非常用発電設備等で電気の安定供給と省エネに貢献している。空調システムでは、ビル・工場の一般空調システムから、データセンターや医療・研究施設用クリーンルーム等の特殊空調まで幅広く提供している。

清宮 茂樹 代表取締役社長兼COO

清宮氏は1993年に同社に入社。執行役員交通システム本部長、上席執行役員事業統括本部長を経て、今年4月には社長兼COO、6月には代表取締役社長兼COOに就任した。 入社して、経理本部に4年間在籍し、債権管理なども含めて経理を学んだ。その後、営業に移り、数年経った頃、日立製作所の社員から「八洲電機さんは、何ができるんですか」という質問を受けたのがキャリアの転機になったという。 「当時は日立製作所の特約店としての仕事が中心だったが、『営業マンとしてお客様の懐に入って…』といったことしか言えず、明確に答えられなかった。その悔しさはずっと残った。その後、交通技術部をつくるなど、エンジニアリング会社になるために率先して様々な施策を打っていった。質問の答えを最終的に導き出したのは2022年で、私が事業統括本部長のときに3つのコア技術を提唱し、発表した。20年間かけてようやく、『3つのコア技術を持つエンジニアリング会社なんです』と胸を張って言えるようになった」(清宮氏)。


「次世代経営幹部育成プログラム(CLP)」は2022年度に受講した。「経営戦略構想」(自身が社長に就任した場合に打ち出す経営戦略)の発表では「創立100周年に向けた長期ビジョン」(同社は今年で創立77周年)をテーマに取り上げた。

「CLPで、長期ビジョンについてしっかりと腰を据えて考えたことは、今の立場になって非常に役立っている。作成の過程ではCLPの様々なメンバーからアドバイスをいただき、いい気づきになった。知識賢治さん(オンワードホールディングス取締役副社長)から『経営者の役割は事業ポートフォリオを変革することだ』と言われたことも特に印象に残っている。私も今、当社の事業ポートフォリオをどう変えていくかを経営陣と議論している」。

社長に就任後は、ブランディングの構築に取り組み、あらためて三つのコア技術を社内外にわかりやすく発信、説明している。



また、ウェルビーイング経営を掲げ、社員のエンゲージメントを高めることにも力を入れており、社員の処遇の改善や評価制度の見直し、健康経営の推進などにも取り組んでいる。「5年連続で認定されている『健康経営優良法人(ホワイト500)』は6年連続認定を目指す。現在、人事評価制度の見直しを行っており、来年度からは制度を変えていきたい」。 経営者の役割ついては、「4月の社員向けの方針説明会のときに『皆さんを必ず幸せにします』と言った。それを実現するには、持続的に収益を上げていかなければならない。収益を上げ続けることによって、社員の昇給・昇格や、各ステークホルダーへの分配、様々な投資などが実現できる。持続的に収益を上げることが社員の幸せにつながる」と強調する。

今春から、経営人材の育成を図る「人材委員会」を立ち上げた。「30代、40代から次期経営人材の候補を選抜し、人材プールをつくり、外部研修に行かせる場合にもその意義をしっかりと本人に伝えていきたい。人材を育成し、エンゲージメントを高め、デジタル化を推進し、生産性を向上させて、持続的に収益を上げることが今後の課題であり、抱負でもある」と述べた。



<全3回連載>



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