2023年度 第3回:清水建設横浜支店 執行役員支店長 大橋 成基氏(2023年12月5日号)


~続ビジネスリーダーに聞く②~

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行、ウクライナ侵攻、世界的な物価上昇、デジタル化の加速度的な進展、脱炭素化の世界的な潮流など、予測困難な経営環境下で、企業はどう対応していくべきか。日本生産性本部の「次世代経営幹部育成プログラム(CLP)」を受講した企業の経営者や経営幹部に、激変する時代におけるリーダーの役割などを聞いた。


■フラクタルな組織づくり

清水建設は、富山の大工だった初代清水喜助氏が江戸神田鍛治町で1804年に開業したことに始まる。初代が創業当時から目指したのは、「誠心誠意、心を込めて仕事に取り組み、良いものをつくって信頼されること」だった。同社は、渋沢栄一氏の教えである、道徳と経済の一致を旨とする「論語と算盤」を社是とし、「真摯な姿勢と絶えざる革新志向により 社会の期待を超える価値を創造し 持続可能な未来づくりに貢献する」を経営理念として定めている。

大橋 成基 清水建設横浜支店 執行役員支店長

大橋氏は1989年に入社。関西支店、横浜支店、名古屋支店等を経て、2020年に横浜支店副支店長、2021年から横浜支店執行役員支店長を務める。


横浜支店建築第二部の部長だったときに、リニューアル工事の営業と現業を経験したことが転機になった。「それまでは新築工事の現場一筋で、一つの現場内で利益を追求してきたが、支店の強化方針もあってリニューアル工事の部署をまかされた。新築工事に比べると一件一件の金額や規模が小さいリニューアル工事に最初は戸惑ったが、お客様の数は多く、そこをしっかりやらないと信用を失い、次の仕事につながらないと気持ちを入れ替え、営業と一緒に小さな仕事を率先して取っていった。当初、横浜支店建築第二部の売上は100億円に満たなかったが、2年目は140億円、4年目は200億円を超えた。リニューアル工事では、創業以来大切にしている『出入りの大工の精神』で諸先輩方が紡いできたお客様との信頼関係があるからこそ、工事が受注できるのだと改めて認識させられた。営業職の奥深さや面白さを学び、自分の視野や業務の幅を広げることができた。」


「次世代経営幹部育成プログラム(CLP)」は2021年度に受講した。「CLPは目からうろこが落ちることばかりで、一流の講師、一流の経営者による情熱あふれる講義から、経営の心や軸というか、答えのない課題を探し続ける難しさとやりがいを教えていただいた。CLPで学んだ経営リテラシー、リーダーシップ、大局観、戦略思考は全てが経営に大切なことで、全部が有機的につながっている。オールマイティーな知識があって初めて、スピード感がある、間違いない経営判断ができる。リーダーになるためには常に勉強しなければならないと感じた」と語る。支店の約300人を対象に、CLPで学んだことを企業での実践と絡めながら解説した「支店長講話」を2年間で6回、開催したという。


横浜を代表する歴史的建造物ホテルニューグランド。同社が施工し、その後も保存・改修工事を手掛ける

現在、大橋氏は、神奈川県内における同社のプレゼンスを高めるべく、トップ営業や地元企業との交流などに取り組んでいる。一人ひとりが経営を意識し、一人ひとりが全体を代表するように自律分散的に行動できる、フラクタル(自己相似的)な組織づくりにも励む。「私の思う『経営』の最低限の3条件は、数字(会計)、現実把握、未来戦略の三つだ。現状を数字で把握したうえで、自分の置かれている現実を理解し、それから自分が何をすべきかを常に考えることだ。限られた人だけが経営人材になるのではなく、新入社員から経営を意識して自分の仕事に真剣に向き合うことが、その人の視座を上げて、知識を広げることにつながる」と強調する。


リーダーのあり方については、「平時には用意周到、有事には率先垂範」「リーダーは、人としてどうかという点も含めて、常にみんなに見られていることを意識しなければならない。あとは絶対に逃げてはいけない。問題が起きたときに逃げれば余計にきつくなる。怒られるときは腹をくくって怒られた方が楽だし、その方が問題解決も早い。問題が起こったときに自ら問題を追いかけていくのがリーダーではないか」と述べる。


今後は「当社は『論語と算盤』を社是に掲げている会社なので、心と体の健康を維持して仕事に打ち込み、しっかり清水建設の経営を全うすれば、社会に貢献でき、社会をよりよくすることができると信じ、これからも前進していきたい」としている。


<全3回連載>



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