第3回:ニチレイバイオサイエンス 代表取締役社長 横井英夫氏(2022年5月15日号)


~ウィズコロナのリーダー像③~

新型コロナウイルスの感染拡大は企業経営や人々の働き方などに大きな影響をもたらしている。ウィズコロナの時代に組織のリーダーに求められる役割は何か。日本生産性本部が実施している「次世代経営幹部育成プログラム(CLP)」を受講した企業の経営者や経営幹部に、あるべきリーダー像や、経営人材の育成のあり方などを聞いた。


■コロナ禍で検査の重要性を再認識

ニチレイバイオサイエンスは、免疫組織化学染色技術など、バイオテクノロジー分野の技術力を生かし、分子診断薬、イムノクロマト診断薬、バイオ医薬品原料の三つの分野で事業を展開している。各種がんの診断薬「ヒストファイン」シリーズや、安定した検査を実現する自動染色装置「ヒストステイナー」シリーズ、新型コロナウイルスなどの感染症を診断する検査キット「イムノファイン」などで知られる。

横井氏は、「コロナ禍で検査の重要性を世の中の皆さんに再認識していただいた。我々が扱っているがんの診断薬や感染症の診断薬などは、製品自体が社会課題の解決に役立っており、その結果、経済価値にもつながる。我々は、研究開発から製造・販売・お客様サポートまで行っている。自社の技術をしっかり磨いて、社会課題の解決と、経済価値を生み出し、事業の持続的な成長を目指している」と語る。




ニチレイのバイオサイエンス事業は畜産事業の副産物である牛の血清を活用することから始まった。その後、バイオ技術を生かした診断薬の研究開発に取り組み、事業領域を広げてきた。2005年には分社化により、ニチレイバイオサイエンスが設立され、2019年には研究開発、製造、物流を担う新拠点「グローバルイノベーションセンター」(狭山市)が竣工した。

横井氏は、1990年にニチレイに入社。バイオサイエンスの分子診断薬事業部長、経営企画部長などを経て、2018年には取締役執行役員、2021年の4月からはバイオサイエンスの代表取締役社長に就任した。ニチレイの執行役員も兼務している。


日本生産性本部が主催している「次世代経営幹部育成プログラム(CLP)」には2018年に参加した。「経営戦略やマ
ーケティング、財務、法務、知財など、経営リテラシーを幅広く学び、自分が実際に業務を行う上で不足している部分を再認識できた」という。

社長に就任して1年になるが、これまでと社長の目線の違いについて横井氏は、「社長になって人材の重要性を痛感した。これまでは『自分が頑張っていれば自ずと何とかなる』と仕事に対して考えていた面も正直あったが、それは思い違いで、社長を1年間やってみて『そんなことはない』と痛感した。経営戦略や事業戦略を考えるのは経営者であり、部門のトップかもしれないが、それらを推進、実行していくのは現場の社員一人一人だ。社員一人一人が実行してくれなければ戦略は単なる『絵に描いた餅』に終わってしまう。社員が生き生きと働ける環境をしっかり整備していくことも経営の大きな役割ではないかと痛感した」と強調する。

そうした働き方改革の一環で、テレワークや在宅勤務を推進している。また、コロナ禍で、出社率が下がり、在宅勤務が増えたこともあり、「グローバルイノベーションセンター」に本社機能の一部を移した。「これまでは管理・営業機能は築地の本社にあったが、センターでも勤務できるように環境を整えた。センターで管理・営業の人たちが一緒に仕事をする機会が増えることで、更なる業務の効率化、生産性の向上を進めていきたい」としている。

今後については、「我々の事業は今の時代に必要とされる、なくてはならない事業だと思っている。私が社長になってから、ビジョンを再編し、『私たちは、いきいきと働くことを通して、ライフサイエンス・ヘルスケアの分野で人々に新しい価値を提供し、健康を支えつづけます。』とした。人々の健康を支えつづけることが我々の使命であり、提供する製品に付加価値を付けることで、その目的に向かって進んでいきたい」と抱負を述べた。

<全3回連載>

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