2023年度 第2回:ニチレイフーズ常務執行役員ダイバーシティ推進部長 片岡恵美氏(2023年11月15日号)


~続ビジネスリーダーに聞く②~

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行、ウクライナ侵攻、世界的な物価上昇、デジタル化の加速度的な進展、脱炭素化の世界的な潮流など、予測困難な経営環境下で、企業はどう対応していくべきか。日本生産性本部の「次世代経営幹部育成プログラム(CLP)」を受講した企業の経営者や経営幹部に、激変する時代におけるリーダーの役割などを聞いた。


■対話重視し、ダイバーシティを推進

ニチレイフーズは、戦後の学校給食向け冷凍食品事業を皮切りに、1964年には東京五輪選手村へ冷凍食材を提供、1970年には大阪万博で冷凍食品を使用したレストランを運営するなど、冷凍食品のフロンティアカンパニーとして、家庭用や業務用の冷凍食品を多数、開発・販売している。

「家庭用では、コロナ禍や在宅勤務の普及などを背景に、普段使いの需要が非常に大きくなっている。『個食』化や一人暮らし世帯も増えており、そうしたライフスタイルに合わせた冷凍食品の提案が求められている。業務用では、コロナで深刻になっている飲食店の人手不足を冷凍食品で補おうとする動きがみられる。メニューで代替できるものは冷凍食品を使い、こだわるところはこだわりの料理を提供するという方法が定着している」(片岡氏)。

片岡恵美 常務執行役員 ダイバーシティ推進部長

片岡氏は、生協営業部長、北海道支社長、首都圏支社長、執行役員首都圏支社長を経て、2022年4月からは常務執行役員ダイバーシティ推進部長を務め、「ハミダス活動」や人事部を管掌している。これまでニチレイグループ初の女性支社長や女性執行役員を経験してきた。「入社5年目のときに海外視察の機会を得意先からいただいた。当初は『何で女性が海外に行くのか』と役員に却下されたが、得意先が『どうしたら行けるかを考えよう』と言ってくれて、役員を説得できた。いままでの慣習を打ち破ってどうしたらできるのかを前向きに考えてみると実現できることがある、一生懸命仕事をやっていれば、それを理解してくれ、一緒に突破してくれる人が社内外にいるということを実感し、大きな転機となった」という。


「次世代経営幹部育成プログラム(CLP)」は、執行役員首都圏支社長だった2021年度に受講した。「経営戦略構想」(自身が社長に就任した場合に打ち出す経営戦略)の発表では、「業務用事業部の事業再構築」をテーマに掲げた。


「それまでは営業が長かったので、事業戦略を描く機会がなかった。経営環境や競合の動向、財務などを総合的に把握し、自社の状況を冷静に見る目を養うことができた。日頃思っていたことを紙にまとめて発表でき、とてもいい機会になった」と振り返る。

2011年にスタートした同社の「ハミダス活動」は、従業員が自分の担当領域を越えて自発的に取り組む活動で、従業員の「ハミダス」気持ちを重視する。ミッション・ビションの実現を目的に、明るく、元気で、風通しの良い会社を目指す従業員向けの活動と、同社の想いや冷凍食品の良さを社外に伝える生活者向けの活動に分かれる。


「ハミダス活動は今年で12年目になるが、次のステージにいきたいと思っている。当初目指していた風土改革や、ミッション、ビジョン、行動規範の浸透はずいぶん進んだ。昨年、実施した調査でも、ミッションやビジョンに対する共感は他社と比べても非常に高いスコアが出た。一方で、コロナ禍で事業環境が大きく変わるなか、ハミダスを自分事としてとらえ、自分の行動に落とし込んでいくことができにくくなった。生活者向けの活動は広報部門に移管し、従業員向けの活動のあり方をもう一度見直している。現場の意見を聞き、対話を重視して、何ができるかを考えている。」

女性活躍推進では、社内の「N-winプロジェクト」で、メッセージの動画配信や現状把握のためのアンケート調査、女性役員(片岡氏)との対話の会「女性あぐら」などを実施している。


経営リーダーのあり方については、「どうしたらできるのかを原動力にして、自分がどれだけ覚悟を持って取り組めるかを自分に問いかけることが必要だ。女性にとっては、課長や部長や役員になることは怖いが、なってみないとわからないことがたくさんある。なってみると視座が上がり、新しい景色が見えるので、前向きな気持ちで取り組んでほしい」と語る。


「冷凍食品を使えば、食事を作る時間の『時短』になって、その分、自分の時間を作ることができ、心が豊かになる。冷凍食品は皆さんの生活を豊かにするという思いを持ちながら、今後も『お客様価値の創造』と『社会課題の解決』を通じて、健康で豊かな社会の実現に引き続き貢献していきたい」としている。


<全3回連載>



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