ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)とは? おさえておきたいキーワードとポイント解説

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DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは?

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DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは?

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」とは、従来、企業が取り組んできた「ダイバーシティ&インクルージョン」に「公平/公正性(Equity)」という考えをプラスした概念です。

多様な人が働く組織の中で、それぞれの人に合った対応をすることで、それぞれがいきいきと働き、成果を出し続けるための考え方とされています。「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」の語句を分解すると、以下のように訳されます。

  • ダイバーシティ:多様性
  • エクイティ:公平/公正性
  • インクルージョン:包摂性

単語とその意味だけでは理解しづらいため、具体的な例を挙げて解説します。下の図をご覧ください。3名それぞれがリンゴを収穫しようとしています。



「リンゴを収穫する」という目的に対して、左の図と右の図では状況が違っています。

左側の3人には等しく、同じ高さの台が用意されています。全員に対してサポートがあるのですが、その方法では、リンゴに手が届かない人が出てきてしまいます。一方、右側の3人は、それぞれの人に合わせた高さの台が用意され、全員が、リンゴに手が届いています。

つまり、平等に同じものを用意するというサポート(Equality)で終わるだけではなく、全員にリンゴが収穫できる機会を用意できているか。それぞれの人に対して、サポートの工夫ができているかということの重要性に社会全体がシフトしてきています。これが、Equity(公平性)という考え方です。


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なぜDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)が必要なのか

多様な働き方は、育児介護に限らず、さまざまなライフイベントにおいて、それぞれの人に必要になってくることだと考えられます。

日本の人口の将来推計をみてみると、2070年には人口が9,000万人以下となり、65歳以上人口の割合(高齢化率)は現在の約3割から約4割へと上昇することが予想されています。

将来人口グラフ.png
日本の将来推計人口(令和5年推計)
よりデータ引用(国立社会保障・人口問題研究所)

今後、人手がたりなくなる中で、時間や場所の制約がありながらも働く従業員が活躍できるような職場にする必要があります。

さらに、働きやすく働きがいのある職場に人が集まります。あらゆる人が効率的な働き方を模索し、多様な働き方を風土にできる職場が生き残ると考えられます。


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アンコンシャスバイアスとは?

アンコンシャスバイアスとは?


アンコンシャスバイアスとは、「無意識の偏見・思い込み」と訳され、考え方や感じ方のクセと捉えられています。たとえば、

  • 「A型の人は真面目だと思う」
  • 「高齢者の方はSNSが苦手だと思う」
  • 「いまどきの若者は…と思うことがある」
  • 「上司より先に部下は帰宅してはいけない」

といったものです。



無意識の思い込み、アンコンシャスバイアスというのは誰にでもあることで、自然なことです。

人の意識と無意識は、よく海に浮かぶ氷山に例えられますが、自分で意識できている部分は海面から出ている3%から5%にすぎず、意識できていない部分、つまり無意識で動いているのは95%以上だ、と心理学者のフロイトが言っています。私たちは、今まで経験した記憶や受けてきた教育などから、無意識の領域で価値観や常識、世界観をつくっています。


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アンコンシャスバイアスへの理解が必要な理由

組織がDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を進めるにあたって、立場が違う方への共感力や理解力は不可欠です。



しかしながら、組織において、長年すり込まれてきた社会通念や、経験から累積される価値観、成功体験などが、ビジネスにおける効率の良い判断基準のひとつとなっていることも少なくありません。

社会が変化し、世代間の思想のギャップがあるにもかかわらず、組織全体が硬直化してしまい、改革や変革の機会喪失や、グローバリゼーションに対応しきれていない状況が多く見受けられます。


重要なことは、無意識の思い込み、アンコンシャスバイアスというのは誰にでもあることで、>あること自体が悪いのではありません。それよりも、「自分は絶対正しい」、「自分にはバイアスはない」、と過剰な自信を持ってしまうことが問題となっています。昨今、ジェンダーに関する失言などで役職を辞任するニュースがみられるなど、社会の意識が変わってきています。

無意識の思い込み、アンコンシャスバイアスというのは誰にでもあることで、自然なことです。

アンコンシャスバイアスをなくすことはできません。自分の持つバイアス一つ一つに気づいていく、そして、バイアスを発端にトラブルを起こさないように気をつけていく、という行動がアンコンシャスバイアス対策の第一歩となります。


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職場に影響を及ぼす5つのアンコンシャスバイアス

100や200を超えるといわれるバイアスの中でも、職場に影響を与えやすいと思われるバイアスを5つピックアップしてご紹介します。



1. 正常性バイアス

危機的、通常と違う異常事態が起きても自分には影響がない、関係ないという思いを優先させるバイアスです。

この傾向が強いと、客観的視点が欠けてしまい、緊急時や危機的状況への対応が遅れてしまいます。


2. 集団同調性バイアス

集団や個人間で自分の考えを封鎖して、周囲、相手の言動に無条件で合わせるバイアスです。

部下から意見が出なくなり、組織、個人間でのリスク管理が脅かされ、イノベーションや多角的視点が損なわれます。


3. 確証バイアス

自分の経験や都合のいいデータなど、自分に有利な情報のみを集め、持論を固定化させるバイアスです。

知らない間に周囲をコントロールする可能性もあるため、所属する組織自体の視点を固定化させてしまいます。


4. ジェンダーバイアス

性別役割意識が自分や組織の中で固定化しており、「男性らしく」「女性はこうあるべき」という思いが行動や言動に現れるバイアスです。

育った家庭環境や周囲の人間関係による影響を強く受けるもので、職場の上司による影響が最も強いという政府調査もあります。現在、社会的にも認知され、多くの組織に根強く存在するといわれています。


5. 慈悲バイアス

特定の対象者に対し、過度な配慮をしてしまうというバイアスです。

個人個人の違いや要望を無視し、個人の成長機会を奪う可能性も孕んでいるため、諦めや個人や組織全体の成長意欲を減退させてしまいます。


これらの中でも慈悲バイアスは特に厄介だとされています。


たとえば、子育て中の従業員Aさんに対して「きっと家庭が大変だろうから…」と気遣う上司Bさんがいたとします。

Bさんは“よかれと思って”、Aさんには大きな責任を伴う仕事を与えないことにします。

それがAさんの望んでいることならばいいのですが、仮にAさんが「本当はもっと仕事したいんだけどな…。でも親切には素直に応じるべきかな…」と、自分の意思を抑えて上司Bさんの好意に応じたとします。

これではAさんにとっての成長機会の損失となり、組織にとっても機会損失となってしまいます。


もう一つ、例を挙げます。ジェンダーバイアスの中に慈悲バイアスが入ってしまうケースです。


同じチームに男性従業員Cさんと女性従業員Dさんがいます。

ある日、チーム内でデジタルスキルを要するタスクが発生し、Cさんが担当することとなりました。

Cさんは他の仕事で忙しかったのですが、“男性は女性を守るべき”という気持ちから「Dさんは女性だし、PC周りは得意じゃないだろうし、助けてあげなきゃな…」と、対応することにしたのです。

一方でDさんは、「デジタル系を学びたくて、その仕事をやりたいと思っていたけれど。そうだよね、男性のほうが得意だものね。まあいっか…」と“女性は男性に頼るべき”という考えから、状況を受け入れます。

これも従業員個人と組織にとっての成長機会の損失となってしまいます。


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心理的安全性と心理的柔軟性

心理的安全性とは?

心理的安全性とは、集団に所属するメンバーが安心して自分の意見を言うことができ、質問することができ、自分らしくいられる職場文化を指します。心理的安全性が確保されると、イノベーションが促進され、多様な人材の活躍が期待できることから、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の土台のひとつとされています。



心理的安全性の効果として挙げられるのが

  • ストレスが減り、やりがいが増える
  • 責任感が増し、パフォーマンス向上につながる
  • 情報交換が増え、集団思考に陥るのを防げる
  • ミスの報告・共有がスムーズになる
  • 人材の定着率が上がる

などです。



一方で、心理的安全性がない職場では「不安」がはびこり、

  • 沈黙
  • 従順
  • 無反応

などが見受けられます。


組織が最大の成果を生み出すためには、従業員の一人ひとりが最高のパフォーマンスを出せる環境が必要であり、そのためには職場における心理的安全性が不可欠です。


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心理的柔軟性とは?

心理的安全性が職場における文化であるのに対して、心理的柔軟性は一人ひとりが持つスキルです。
心理的柔軟性とは、いやな考えや感情に呑み込まれることなく、自分自身が大切にしたい価値に沿って、その時々で役に立つ行動を起こすスキルです。


例えば、非常にチャレンジングなプロジェクトについて「リーダーを担当しないか」と打診を受けたとき。

<A>
分からないことだらけで、すごく不安。
すぐに成果に結びつくかも分からず、自分に十分な能力があるとも思えない。
断った方が良いのではないか。断ろう!

<B>
正直、不安に思うことはたくさんある。
ただ、これまでずっと考えてきた、社会に還元したいという思いを実現するチャンスでもある。
不安はたくさんあるけれど、まずはやってみよう。
そうだ、メンバーの〇〇さんの力を借りることができれば、うまく進めることができるかもしれない。
早速動いてみよう!


Aのように、困難なことや受け入れがたいこと、いやなことがあったときには、誰しもさまざまなネガティブな考えが浮かび、柔軟な行動をとることが難しくなってしまう場合があります。
一方で、Bのように、不安やネガティブな考えがありつつも前向きな行動に目を向ける、これが心理的柔軟性の高いパターンになります。

DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)において、特にインクルージョンの文脈では、他者を尊重するだけでなく、自分自身の心の在り方を柔軟にすることが重要となります。。


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◆ダイバーシティ企業事例◆

ニチレイフーズ

ニチレイフーズ常務執行役員ダイバーシティ推進部長の片岡恵美氏に、ダイバーシティに関する取り組みをお聞きしました。
ハミダス活動」や「N-winプロジェクト」「女性あぐら」など、ユニークなネーミングで、対話を重視したダイバーシティ推進を実現しています。
片岡氏から将来のリーダー層への応援メッセージもいただきました。


MS&ADインシュアランスグループホールディングス

MS&ADインシュアランスグループホールディングスは、多様な社員が一人ひとりの能力を真に発揮できる環境を整備し、新たなイノベーションの創出企業価値の向上を実現するため、「ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包摂性)」に「エクイティ(公平性)」の視点を取り入れた、「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」を推進しています。 同社では、「DE&I」を実現するための四つの重点分野として、「女性活躍」「多様で柔軟な働き方」「ワークライフバランス」「多様性が活きるインクルーシブな組織づくり」を掲げています。


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