女性活躍推進が求められる背景・理由とは? 女性管理職を増やすための課題・阻害要因も解説

女性活躍推進が求められる理由~現状と課題~

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を推進する中でも、多くの組織において注力されているのは女性活躍推進の分野です。政府は女性活躍推進を国の重要政策として掲げ、世界標準に追いつくことが急務とされています。その背景をいくつか紹介します。

1. 女性の社会進出の現状

SDGsとジェンダー・ギャップ指数の現実

2015年、国連サミットで「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」、 略してSDGsが採択されました。 この目標は、貧困撲滅や健康、教育、経済成長、気候変動、環境保護、平和といった17のゴールで構成されており、世界全体として2030年までに持続可能な地球を実現しようとするものです。
その中でも、5番目のゴールとして「ジェンダー平等を実現しよう」が定められ、女性や女児への差別と暴力の排除、未成年者の結婚や強制結婚などの慣行の撤廃から、政治、経済、公共分野での女性の参画や平等なリーダーシップの機会の確保などが掲げられています。


では、ジェンダー平等に関して日本の現状はどうでしょうか。
世界経済フォーラムが毎年発表する、社会的・文化的に作り出された性差によって生まれる不平等や格差を表す指標として、「ジェンダー・ギャップ指数」があります。
2023年、日本のジェンダー・ギャップ指数の総合順位は、146か国中125位(2022年は146か国中116位)でした。教育や健康面でほぼ満点であるのに対して、経済活動の参加と機会(推定勤労所得の男女比、管理職の比率等)が弱く(経済分野:0.561)、政治的エンパワーメント(議員・閣僚の比率等)における順位が圧倒的に低く(政治分野:0.057)、指導的地位に就く女性の少なさが目立ちます。


日本と各国におけるジェンダー・ギャップ指数の順位 (Global Gender Gap Report2023より引用)

女性管理職の割合と雇用形態

指導的地位に就く女性の少なさについて、就業者及び管理職に占める女性の割合のデータがあります。
就業者に占める女性の割合は約45%あるものの、管理職に占める女性の割合は約13%にすぎません。就業者に占める女性の割合は各国同程度ですが、管理職に占める女性の割合では世界的にみて、日本は後進国であると認めざるをえません。


就業者及び管理職に占める女性の割合(2021年)データブック国際労働比較2023(労働政策研究・研修機構)より引用)

また、厚生労働省による「令和3年版働く女性の実情」によると、女性の約半数は非正規雇用として働いています。


非正規の職員・従業員の割合の推移(資料出所:総務省「労働力調査」)(令和3年版働く女性の実情より引用)

日本は労働力不足という課題を抱えていることもあり、潜在的な労働力を発掘し、より多くの人たちが活躍できるような環境・風土が求められています。特に女性においては、出産や育児というライフイベントを経て、キャリアにギャップができてしまうだけでなく、職種・職業形態を変更する、あるいはいったん仕事を離れるケースもあります。女性という属性に限らず、働きたいという意思のある人たちがいきいきと働けるような環境・風土が求められています。(多くの人が活躍できる職場づくりに不可欠なDE&Iやアンコンシャスバイアス、心理的安全性に関するコラムはこちら


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2. 女性活躍推進に向けた政府の施策

女性活躍推進法、男女賃金差異の公表が一部義務化

実は、日本政府による男女平等に向けた取り組みは、1985年に「男女雇用機会均等法」が制定されたころから始まっています。1995年には「育児・介護休業法」が成立したものの、なかなか女性の社会進出が進まない事態を受け、2015年、当時の政府は最重要政策の一環として、女性活躍促進法を制定しました。正式名称を「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といい、⼥性の個性と能⼒が⼗分に発揮できる社会を実現するための法律です。この法律によって定められた、一般事業主が⾏うべき取組の流れは、以下のとおりです。


STEP1 ⾃社の⼥性の活躍に関する状況把握、課題分析

状況把握の基礎項目として

  • 採用した労働者に占める女性労働者の割合
  • 男⼥の平均継続勤務年数の差異
  • 労働者の⽉ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況
  • 管理職に占める⼥性労働者の割合
  • 男⼥の賃⾦の差異 ※301人以上の事業主

を明示する必要があります。

STEP2 一般事業主⾏動計画の策定、社内周知、公表

行動計画には、

  • 計画期間
  • 数値目標
  • 取組内容
  • 取組の実施時期

を盛り込むことが必要です。

STEP3 一般事業主⾏動計画を策定した旨の届出

STEP4 取組の実施、効果の測定


101人以上の従業員が在籍する企業において「事業主行動計画」の策定・届出、情報公表は義務化されており、特に従業員数が301人以上の事業主においては、2022年から男女賃金差異についての情報も公表義務となりました。


女性の活躍に関する取組の実施状況が優良な企業については、申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができ、「えるぼし認定/プラチナえるぼし認定」と呼ばれています。えるぼし認定を受けると、企業のイメージアップにつながる、公共事業の入札時や融資を受ける際に有利になる、といったメリットがあるとされています。

人的資本経営、ダイバーシティ&インクルージョンは要素のひとつ

2020年に経済産業省が「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0~」(座長:伊藤邦雄 一橋大学CFO教育研究センター長)を発表したところ、産業界から脚光を浴び、現在さかんに議論されているのが「人的資本経営」という考え方です。2022年は「人的資本経営元年」といわれ、各企業の開示に向けた動きが活発化しています。
そもそも「人的資本経営」とは、コーポレートガバナンス改革の進展に伴い、経営戦略と人材戦略を連動させる取組の中で、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方であり、伊藤レポートの中では経営戦略と連動した人材戦略ついて、3つの視点と5つの共通要素が整理されています。
ここでは5つの共通要素をご紹介します。


  • 要素①:動的な人材ポートフォリオ
  • 要素②:知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
  • 要素③:リスキル・学び直し
  • 要素④:従業員エンゲージメント
  • 要素⑤:時間や場所にとらわれない働き方

とりわけ着目したいのは要素②です。経営×人材戦略の要素のひとつとして「ダイバーシティ&インクルージョン」が明記され、女性や外国人といった属性への多様性に加えて、多様な経験や専門性、価値観を取り込み、具現化するプロセスも重要であるとされています。企業の存続・発展のためには価値向上やイノベーションを生み出すことが重要であり、その原動力となるのは、「ダイバーシティ&インクルージョン」による、あらゆる人の活躍であるといえます。


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3. 女性活躍推進と経済の関係性~企業価値への課題~

世界競争力とジェンダー・ギャップ指数

国の競争力のひとつの指標として、国際経営開発研究所が発表する「世界競争力」があります。日本は1989年からバブル期終焉後の1992年まで1位を維持し、1996年までは5位以内の高い順位を維持したものの、その後転落を続け、2023年では35位でした。
ここでは、ジェンダー・ギャップ指数と世界競争力を並べてみます。
下の表ではジェンダー・ギャップ指数のトップ5と、G7(先進7カ国)を抜粋しています。


ジェンダー・ギャップ指数、国際競争力(IMD世界競争力センター)ともに2023年発表

ジェンダー・ギャップ指数ランキング上位の国は、その国の経済規模の割に競争力が強いことがわかります。G7を比較してみても、米国が9位、日本に及んでは35位にランクするなど、ジェンダー平等に対する動きが世界的な競争力に少なからず影響を及ぼしていることが推測できます。ジェンダー平等が進んでいる社会ほど、経済にプラスに働くことがうかがえます。


そこで、経済界でも女性活躍推進に向けた動きがあります。

コーポレートガバナンスコードの改訂

コーポレートガバナンスコードとは、東京証券取引所が定めた、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則のことです。2021年に「企業の中核人材における多様性の確保」という項目が加わり、その中で

  • 管理職における多様性の確保(女性・外国人・中途採用者の登用)についての考え方と測定可能な自主目標の設定
  • 多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況とあわせて公表

と記載されました。


有価証券報告書・サステナビリティ情報の開示

2023年からは有価証券報告書にも、企業内容等の開示に関する内閣府令等の改正により、サステナビリティ情報の開示が求められることとなりました。
特に従業員の状況として


  1. 1.女性管理職比率
  2. 2.男性の育児休業取得率
  3. 3.男女間賃金格差

開示が義務化されています。

なでしこ銘柄

女性活躍推進に積極的な組織ほど、経済的な発展が見込めることを示すデータがあります。経済産業省と東京証券取引所が共同で、女性活躍推進に優れた上場企業の銘柄として定める「なでしこ銘柄」です。
「なでしこ銘柄」選定企業とTOPIXの株価指数を比較してみると、「なでしこ銘柄」の方が高く推移している状況です。


「なでしこ銘柄」選定企業とTOPIXの株価指数比較(R4「なでしこ銘柄」レポートより抜粋)

また、「なでしこ銘柄」の営業利益率は、東証一部平均の6.7%に対して9.3%と高く、配当利回りでは、東証一部平均の1.8%に対して4.6%と、市場の反応が顕著にみられます。


「なでしこ銘柄」の売上高営業利益率/配当利回りの、東証一部平均との比較(R4「なでしこ銘柄」レポートより引用)

昨今注目されるESG投資においても、企業における女性活躍推進の取り組みは「G:ガバナンス」や「S:社会」の観点で高く機関投資家から評価され、企業価値に大きな影響を与えるようになっています。


多様な人材を活用し、多様な価値観を取り入れることで、今まではなかった視点が生まれ、新たなビジネスチャンスが見込めます。女性に限らず、あらゆる人の活躍が確保されることは、社会経済全体への貢献にもつながります。


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4. 女性管理職が少ない理由と、その要因

女性活躍推進が進まない理由1 「性別役割意識」

「女性が家事をすべきだ」といったような性別役割意識は日本社会に強く根づいており、女性活躍推進を阻む要因の一つとされています。
内閣府が実施した令和4年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究によると、男性と⼥性、それぞれが持つ性別役割意識について、上位3項目が同項目、特に1位は「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」という結果でした。男性では約半数がそのように回答しています。


男女それぞれが持つ性別役割意識(内閣府調査結果より抜粋)

職場シーンにおける性別役割意識としては、「育児期間中の⼥性は重要な仕事を担当すべきでない」が男女ともに約3割が回答して1位、「組織のリーダーは男性の方が向いている」は男女ともに2位になっています。


職場シーンにおいて男女それぞれが持つ性別役割意識(内閣府調査結果より抜粋)

また、性別に基づく役割や思い込みを決めつけられた経験について、直接⾔われたあるいは⾔動や態度から感じさせた人として、「父親」「母親」のほかに、女性においては「男性の職場の上司」からの経験が多いという結果も示されています。


職場の役割分担に関する項目では
男性なら残業や休⽇出勤をするのは当たり前だ」「同程度の実⼒なら、まず男性から昇進させたり管理職に登⽤するものだ」について、⼥性より男性の⽅が「そう思う傾向」が強い
といった結果もあり、職場における性別役割意識の強さが表れています。


(職場における性別役割意識<性・年代別>内閣府調査結果より抜粋)

実際、日本社会における「女性が家事をすべきだ」という強いバイアスはデータにも表れています。女性の家事時間を男性の家事時間で割った数字を比べてみると、日本では女性の家事時間は男性の5倍以上です。特に韓国と日本でその傾向が強く、女性の社会進出を遅らせ、女性の管理職の少なさや少子化にもつながっているといわれています。


女性の家事時間/男性の家事時間OECD.Statよりデータ引用)
 
  
   

女性活躍推進が進まない理由2 「インポスターシンドローム」

  
 
 
  
  
  
 

インポスターシンドロームとは、自分の実力を過小評価し、自分の成果を認められず、周りをだましているような感覚に陥るような症状をいいます。これは考え方のクセであり、男性よりも女性に多いとされています。

元フェイスブックCOO(最高執行責任者)のシェリル・サンドバーグは自叙伝”LEAN IN(リーン・イン)”の中で、自らのインポスターシンドロームを公言し、話題を集めました。元大統領夫人のミシェル・オバマや女優のエマ・ワトソンなども同様の症状を告白し、多くの著名人が共感の声を上げています。
日本でも「女性は100%の自信がないと手を挙げない、男性は100%の自信がなくても手を挙げる」など、一般的に女性のほうが慎重だとか、自己効力感や自己肯定感が低いといわれるのも、インポスターシンドロームが関係していると言われています。

インポスターシンドロームの例を挙げます。
ある従業員に任せたプロジェクトがあったとします。
それがうまくいった場合、喜ぶどころか
「うまくいったのは周りの人が助けてくれたおかげ。私はラッキーなだけ」
と、周囲に成功の要因があると考え、自分の成果を肯定できません


プロジェクトがうまくいかなかった場合、それはどんなに社内の優秀なエースでも成功できなかった状況だったとしても
「自分がいけなかったんだ、努力が足りなかったんだ」
と、自己否定に陥り、さらに自信を失くしてしまいます。


また、性別に基づく役割や思い込みを決めつけられた経験について、直接⾔われたあるいは⾔動や態度から感じさせた人として、「父親」「母親」のほかに、女性においては「男性の職場の上司」からの経験が多いという結果も示されています。


自分自身の仕事力を客観的に把握できず、上司からは「10」の力があると認められていても、自分は「5」しかないと思い込んでいる状況では、管理職になるといったようなチャレンジに対して尻込みしてしまう傾向にあり、上司との間に溝が生まれてしまうといったことが起こりえます。
優秀な女性従業員がリーダーや管理職になることを拒んでいる状況があるならば、さまざまに考えられる要因の一つにインポスターシンドロームの可能性もあるかもしれません。

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5. 女性活躍推進とダイバーシティ&インクルージョン

女性が活躍する企業ではさまざまなイノベーションが生まれています。


  • 女性社員が開発したアルコールフリー飲料が、今までにない新たなコンセプトとして市場を席巻した
  • 女性が多く働く旅館業で、女性の正社員化と業務効率化を進めたところ売上が1.5倍になった
  • 商品の企画段階から女性を積極的に登用したところ、今までになかった「猫用」や「小さな子ども用」の商品が生まれ、数々の賞を受賞した
  • 女性活躍推進を人材戦略の最重要課題としてマイルストーンを公表したところ、新卒採用者が年々増加している

女性が働きやすい職場になるには、長時間労働や画一的な働き方、男女による賃金格差等の諸問題を解決していかなければなりません。 それと同時に、女性が出産・子育てをしながら働き続けることが当たり前の企業風土にしていくことが重要になります。


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