業務標準化・マニュアル化を成功に導くvol.2 ~成功事例のご紹介~
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「業務標準化・マニュアル化を成功に導くvol.1~業務マニュアル作成のコツとノウハウのご紹介~」では、日本生産性本部が開発した業務マニュアル「業務基準書」の作成方法などについて、実際のツール等を紹介しながら解説しました。本コラムでは、生活協同組合コープさっぽろ(コープさっぽろ)様およびサッポロドラッグストアー(サツドラ)様にインタビューさせていただいた内容を基に、「業務基準書作成の事例編」をお伝えしていきます。
なお、本記事は、以下の生産性新聞掲載記事を再構成したものです。数字や役職表記等は取材当時のものとなりますのでご留意ください。
- 生活協同組合コープさっぽろ → 2022年1月25日掲載記事
- サッポロドラッグストアー → 2022年2月15日掲載記事
1.【事例①】生活協同組合コープさっぽろ
(1) 過去2回のマニュアルは定着に至らず…「業務基準書」を導入
2008年に後方業務と店舗での朝一作業が標準化したことを契機にトップの大見理事長の指示でマニュアルを作成する機会がありましたが、下記の問題点により定着しなかったそうです。
問題点
- ビジュアルがほとんどなく文字量が多かった
- 観念的な記述が多く、実現するのが困難な内容が多かった
- 完成形として扱われ、情報を更新することがなく2014年まで古い情報が記載されたままだった
6年後の2014年にマニュアルを下記の通り改善しましたが、こちらも定着に至りませんでした。
改善点
- ビジュアルを増やし、文字量を大幅に減らした
- 観念的な記述は避け、手の届く目標設定を定めた
- 業務を固定作業と変動作業に分け、固定作業を時間軸で組み立てる内容にした
- 標準時間を設定した
- 動画を作成して組織内のイントラで公開した
問題点
- 実際はマニュアルを見なくても仕事を進められるベテラン従業員が多く、機能しなかった
その4年後の2016年。SPRINGが主催する業務仕組み化研究会により、MUJIGRAM(ムジグラム)※を基にしたノウハウが公開されます。これを受け、トップの大見理事長は、売上の9割以上を占める店舗事業部と宅配事業部だけでなく、本部・後方機能も含めた全ての部署の「業務基準書」を作成するよう号令をかけました。
- ※MUJIGRAM(ムジグラム)とは、2,000ページに渡って無印良品の店舗に関するあらゆる業務のやり方を詳細に記載したマニュアルのこと。38億円の大赤字からV字回復を達成する原動力となった。
(2) 「業務基準書」推進の秘訣とは?4つのポイントが推進のカギ!
当本部セミナーへの参加を通じて同年に店舗事業部と宅配事業部の「業務基準書」を、翌年には他の部署の業務基準書も完成させたコープさっぽろでは、現在、413冊39,000ページにも及ぶ業務基準書を整備しており、年3回(4月・8月・12月の1日)更新を続けています。
特に、2020年から業務基準書の動画化を推進。読むのに時間がかかる紙ベースの業務基準書は辞書のような役割にし、実際の教育の場では3分ほどのショート動画を観ることがルール化されています。タスクチームがGoProなど市販のカメラを使い1日1本を目標に作成しており、現在では800本が完成しています。
業務基準書推進の秘訣として、「トップのリーダーシップ」「現場の積極的関与」「事務局のサポート」「3分ショート動画の導入」の4つがカギを握るようです。
具体的にどのような取り組みをしていたのでしょうか?
(3) 導入した効果は?「業務基準書」を軸とした改善の仕組みが成長につながる
コープさっぽろでは、「業務基準書」をベースにした3分間のショート動画で全従業員に標準の作業を身につけてもらった上で、年間を通して行われる「仕事改革発表会」で改善事例を発表する機会を与え、それをもとに「業務基準書」もパワーアップさせています。
担当したコンサルタントは、「全職員にIE(インダストリアルエンジニアリング)/QC(品質管理)の教育を行き渡らせる取り組みなど、業務基準書だけで完結しない改善の仕組みこそが、職員のモチベーションを保ちながらさらなるスキルアップを生み出しているコープさっぽろの成長の秘訣と感じた」と語ります。
「業務基準書」を導入したことで、現場の生産性向上、人件費の削減、モチベーションの向上、スキルの見える化などの効果がもたらされました。「業務改善」を軸とした改善の仕組みとその効果の詳細は「続き」から!
1.【事例②】サッポロドラッグストアー(サツドラ)
(1) 「探しづらい」「使いづらい」マニュアルで店舗ごとの教育・成果にバラつき
サツドラでは、以前から業務概要を記した「業務マニュアル」と作業手順の詳細を記した「作業マニュアル」がありましたが、以下の問題点により定着しませんでした。
問題点
- 「業務マニュアル」には業務の種類と方法は記載されているが、作業手順が不明確
- 「作業マニュアル」リリース後、「業務マニュアル」の更新作業が追いつかない
- 「作業マニュアル」の内容が細かく、1作業ごとのページ数が多くなり、作業の全体像を理解するのが難しい
その他にも、新規サービス、新規システム導入の際に「〇〇マニュアル」「××ガイド」「△△ルールブック」などの複数のマニュアルを配布しましたが、内容や構成が統一されておらず、「探しづらい」「使いづらい」状態となり、店舗ごとの教育や成果にバラつきが出ていました。
(2) 「業務基準書「サツウェイドラッグ」で標準化を推進 推進の秘訣・工夫ポイント5点
サツドラはチェーンストアとして多店舗型モデルをつくり上げるという目標を定めていました。そのためには、店舗業務の標準化とそれに伴った教育が必要不可欠です。そこで、松井忠三氏の著書「良品計画は、仕組みが9割」に感銘を受けた富山社長(当時 常務取締役営業本部長)が号令をかけ、良品計画のMUJIGRAM(ムジグラム)をモデルに現在の業務基準書「サツドラウェイブック」を完成させました。
「業務基準書」を推進するにあたり、秘訣や工夫している点として、「現場の積極的な関与」「チェック業務の強化」「定期的に更新する」「最初から完璧を求めない」「業務基準書のデジタル化」の5点を挙げます。
たとえば、更新頻度は、3ヶ月に1回から完成後即時更新となっており、リリース後5年間で改訂したページ数は6,093ページにも及びます。これは、1ページあたり既に2回改訂している計算で、定期的に更新し続けることで、以前のようにマニュアルが陳腐化することを防いでいます。
推進にあたっての秘訣・工夫している点の詳細は「続き」から!
(3) 業務標準化がもたらした4つの効果とは?
サツドラでは、「業務基準書」を導入したことで、①「サツドラポスト*」との相互作用、②新人教育の標準化、③内部監査への活用、④アウトソース先での活用という4つの効果が得られたそうです。
- *サツドラポスト:良品計画の「顧客視点シート」を参考に作成した全従業員が気軽に業務改善の提案ができるようにしたツールのこと。提案内容に対して本部が検討し、回答。内容に応じて改善につなげる。内容は、全従業員が閲覧することが可能。
たとえば、業務基準書の見直し・更新の仕組みである「サツドラポスト」には、現場からの問題点・改善策などが投稿されます。このような現場の知恵がノウハウとして業務基準書に掲載されることでスピーディーな水平展開が可能となっています。また、現場の従業員にとっては自分たちの意見が業務基準書に反映されることもあるため、モチベーションの向上につながっています。
支援したコンサルタントは、サツドラの取り組みを通じて、「社内の風通しの良さから生まれた改善の風土、そして常に前を向いているこの姿勢こそが、成長の秘訣であると実感」したと指摘します。
4つの効果の詳細と成長の秘訣である「改善の風土」とは?詳細は「続き」から!
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