調査・研究その他の調査研究・提言

第11回 働く人の意識調査

感染不安は薄れる傾向が続く、テレワーク実施率は17.2%と低調に推移

2022年10月28日
公益財団法人 日本生産性本部


調査研究や提言、実践活動により生産性向上をめざす公益財団法人 日本生産性本部(東京都千代田区、会長:茂木友三郎)は10月28日、新型コロナウイルス感染症が組織で働く人の意識に及ぼす影響の継続調査(第11回「働く人の意識調査」)結果を取りまとめ、公表しました。本調査は、組織で働く雇用者を対象に、勤め先への信頼度や雇用・働き方に対する考え方などについて、2020年5月以降、四半期毎にアンケートにより実施しているものです。11回目となる今回は、円安や原材料費高騰による物価高が続く一方、過去最多の感染者数を記録した第7波がピークを過ぎ、全国旅行支援が開始された10月11日(火)~12日(水)、20歳以上の日本の企業・団体に雇用されている者(雇用者=就業者から自営業者、家族従業者等を除いたもの)1,100名を対象にインターネットを通じて行いました。


【第11回「働く人の意識調査」概要】

調査結果から、現在の景況感および景気見通しは引き続き悪く、原材料価格の高騰、急激な円安等が生活に影を落としていることが確認されました。テレワーク実施率は17.2%と、過去最低を記録した前回7月調査から微増したものの、低調に推移しています。さらに、これまでの調査結果から、勤め先の業績や自身の雇用に対する不安感が改善傾向にある一方、収入に対する不安が増加していることから、今回の調査では、自身の勤め先の業績と給与の連動への意向に関する設問を追加しました。主な特徴は以下の通りです。


【第11回「働く人の意識調査」主な特徴】(詳細や図表は別添「調査結果レポート」参照)

1. 現況:景況感は「悪い」が引き続き7割超、感染不安は薄れる傾向(図2~6)

  • ・現在の景気について、「悪い」「やや悪い」の合計は71.1%と前回7月調査に引き続き7割超え。原材料価格の高騰、急激な円安等が影を落としている(図2)。
  • ・公共に対する信頼性について、政府(国)を「大いに信頼している」「まずまず信頼している」の合計は、2022年1月調査では33.1%と過去最大を記録したが、前回27.4%、今回26.5%と信頼性は低下。一方「全く信頼していない」は26.7%と、前回7月調査とほぼ同程度(図4)。
  • ・2022年1月調査以降、感染への不安は薄れ、「かなり不安を感じている」の割合は前回の14.9%から13.8%へと減少し、過去最小(図5)。年代別に見ると、20代、60代、70代以上で不安を感じている者(「かなり不安を感じている」「やや不安を感じている」の合計)の割合が減少。「かなり不安を感じている」は、70代以上は8.3%、その他の年代で10%台となった(図6)。

2. 勤め先への信頼感:業績・雇用への不安は改善続く、収入は「かなり不安」が微増(図12~15)

  • ・勤め先の業績について、「不安を感じる」(「かなり不安を感じる」「どちらかと言えば不安を感じる」の計)は47.8%と、過去最小。前回7月調査に引き続き5割を下回った(図13)。
  • ・今後の自身の雇用について、「不安を感じない」(「全く不安を感じない」「どちらかと言えば不安を感じない」の計)が53.1%にのぼり、5回連続して5割を上回った(図14)。雇用不安は第3回調査(2020年10月)で最大となって以来、改善傾向にある。
  • ・今後の自身の収入について、「不安を感じる」(「かなり不安を感じる」「どちらかと言えば不安を感じる」の計)は61.6%と、前回7月調査の64.6%から減少した(図15)。前回までの過去3回と比べ、不安感は減少傾向にある一方、「かなり不安を感じる」に限ると微増が続く。

3. 給与と勤め先の業績との連動:連動を「望む」「望まない」はほぼ二分(図19)

    • ・勤め先の業績と自身の給与はどの程度連動すべきかについて、「給与は勤め先の業績にかかわらず、一定であるべきだ」と回答する雇用者が51.5%と、わずかに半数を上回った。ただし、「給与は勤め先の業績に合わせて、変化させるべきだ」と意見がほぼ二分している(図19)。

4. キャリア形成と人材育成:自己啓発の実施意向が低下し、Off-JTやOJTは横ばい(図20~33)

          • ・「現在、兼業・副業を行っている」は9.2%と、前回調査から微減(図20)。「雇用不安を感じる」雇用者(「かなり不安を感じる」と「どちらかと言えば不安を感じる」の合計)の44.2%が将来的に兼業・副業を行ってみたいと回答しているのに対し、「雇用不安を感じない」雇用者(「どちらかと言えば不安を感じない」と「全く不安は感じない」の合計)は27.9%にとどまる(図21)。
          • ・「仕事内容や勤務条件を優先し、同じ勤め先にはこだわらない働き方」(ジョブ型雇用)を希望する雇用者は66.0%で前回7月調査から微増(図22)。
          • ・Off-JTの実施状況について、勤め先からの「案内により受講した」雇用者の割合は7.2%に微増。勤め先からOff-JTの「案内があった」割合は16.1%と2021年4月の調査開始以来最大(図23)。OJTを行う機会が「あった」割合は15.5%で、前回7月調査と同水準(図25)。
          • ・自己啓発を「行っている」割合は14.1%に微減。「特に取り組む意向は無い」との回答の割合が59.3%と、2020年10月の調査以降、過去最大となった(図31)。

5. 働き方の変化:テレワーク実施率は微増、年代による実施率の差はほぼ見られず(図34~44)

        • ・テレワークの実施率は17.2%と、過去最低を記録した前回から1.0%ポイント増加(図35)。
        • ・従業員規模別に見ると、いずれの従業員規模でもテレワーク実施率が微増したものの、テレワークを牽引してきた中・大企業の実施率は2022年4月調査以前よりも低く、テレワーク退潮の流れが反転したとまではいえない(図36)。
        • ・年代別のテレワーク実施率は、20代は前回の12.0%から18.6%に増加した一方で、30代の実施率は16.0%、40代以上は17.2%と、前回と大きな変化は見られなかった。年代による実施率の差はほとんど見られなくなった(図37)。
        • ・テレワーカーの週当たり出勤日数は前回7月調査より微増。テレワーカーで週3日以上出勤する者は前回の50.5%から52.9%に微増(図38)。「5日以上」は前回20.2%から25.9%へと増加。
        • ・自宅での勤務で「効率が上がった」「やや上がった」と回答した割合は60.8%で前回7月調査から減少(図39)。自宅での勤務に「満足している」「どちらかと言えば満足している」の合計は79.7%で前回7月調査から増加(図40)。
        • ・テレワークの課題について、複数回答で聞いたところ、第1回調査から上位に挙がっていた「部屋、机、椅子、照明など物理的環境の整備」「Wi-Fiなど、通信環境の整備」などの自宅の環境整備に係る項目は、減少傾向だったが、今回はどちらも増加。また、「Web会議などのテレワーク用ツールの使い勝手改善」「押印の廃止や決裁手続きのデジタル化」「仕事のオン・オフを切り分けがしやすい制度や仕組み」も、減少傾向から反転。一方、「情報セキュリティ対策」「職場に行かないと閲覧できない資料・データのネット上での共有化」は減少(図41)。

【「働く人の意識調査」概要】
公表日 調査期間 タイトル 調査期間の特徴
第1回
2020年5月22日
2020年
5月11日~13日
労使の堅固な信頼関係の再構築と「新しい生活様式」に向けた意識改革を 初の緊急事態宣言発出(4月7日)から1か月半
第2回
2020年7月21日
2020年
7月6日~7日
組織の生産性向上につながる労使の信頼関係の再構築を 緊急事態解除(5月25日)から1か月半
第3回
2020年10月16日
2020年
10月5日~7日
人的資本への積極投資を。テレワークは一定程度定着の兆し 「GoToトラベル」等積極的経済活動再開から3か月
第4回
2021年1月22日
2021年
1月12日~13日
組織の健康配慮が行動変容を後押し、社会経済システムや組織への信頼強化を 二度目の緊急事態宣言発出(1月7日)直後
第5回
2021年4月22日
2021年
4月12日~13日
行動や働き方の変容には、宣言・措置よりも労使による積極的取り組みと課題解決を 一部地域に「まん延防止等重点措置」適用(4月5日)直後
第6回
2021年7月16日
2021年
7月5~6日
ポストコロナの社会・経済変化に懐疑的、コロナ以前に回帰か。「テレワーク疲れ」に注視を 東京オリンピック・パラリンピック開催まで約3週間
第7回
2021年10月21日
2021年
10月11日~12日
テレワーク実施率、宣言・措置解除後も約2割で推移 国による緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の解除後、約10日が経過
第8回
2022年1月27日
2022年
1月17日~18日
テレワーク実施率は過去最低の18.5%、中堅・大企業の実施率低下が影響 感染力の強いオミクロン株による新規感染者が急増、まん延防止等重点措置、3県適用中、13都県適用直前
第9回
2022年4月22日
2022年
4月11日~12日
テレワーク実施率は約2割で推移、在宅勤務の満足度は過去最高に 国によるまん延防止等重点措置の解除後、約3週間が経過し第7波の予兆を懸念
第10回
2022年7月25日
2022年
7月4日~5日
テレワーク実施率は16.2%と過去最低を更新、20代・30代の実施率が大幅減 訪日外国人客の受け入れが2年ぶり再開。国際情勢は緊迫。円安や、原材料価格高騰などで消費者物価が上昇
第11回
2022年10月28日
2022年
10月11日~12日
感染不安は薄れる傾向が続く、テレワーク実施率は17.2%と低調に推移 原材料価格高騰や円安が進行し、消費者物価は上昇傾向。円が32年ぶりに1ドル=150円を割り込む。政府・日銀は24年ぶりに市場介入
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公益財団法人 日本生産性本部 生産性総合研究センター(担当:長田)

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