第37回 「政権公約(マニフェスト)検証・第1回大会」開催―21世紀臨調<5>

連載「JPC 70th クロニクル」㊲ 「政権公約(マニフェスト)検証・第1回大会」開催

障害の1つは公選法

2003年総選挙の翌年に開催された「政権公約(マニュフェスト)検証・第1回大会」(2004年5月12日)。

21世紀臨調は新発足と同時に、マニフェスト選挙とするための提言活動を積極的に行うとともに、制度的な障害を洗い出し、次期総選挙に間に合わせるための環境整備に乗り出した。障害の1つが公職選挙法(公選法)だった。
公選法は公示・告示前の選挙運動を全面的に禁止し、公示・告示後も法律で認められた葉書やビラ以外の文書配布を厳格に禁じていた。そのため、政党がマニフェストを作成したとしても、それを冊子などの形で自由に頒布することは不可能とされた。総選挙を政権公約を中心とする政党間論争と政権選択の場に改革するためには、次期総選挙に向けて最低限必要な法改正とともに、公選法そのものの根本的な作り直しに超党派で取り組む必要があった。

改正案スピード成立

21世紀臨調の呼びかけで、超党派議員62人による「政権公約(マニフェスト)推進議員連盟」が2003年7月17日に設立。共同代表には自民党の逢沢一郎と民主党の玄葉光一郎が就任した。21世紀臨調も連動して7月25日、「公職選挙法改正等検討委員会」(委員長=駿河台大学副学長・成田憲彦)を政治構造改革会議のプロジェクト・チームとして設置、公選法改正の具体的な論点整理に努めた。同委員会は9月4日、最低限必要となる同法改正を法案要綱レベルでまとめ、「政権公約の導入に向けた公職選挙法改正に関する緊急提言」として公表した。
21世紀臨調は9月29日、第2回総会を開催し、「総選挙に向けての緊急アピール」を採択。緊急アピールでは、①政権の獲得を目指すすべての政党は次の4年間の任期中に実現を目指そうとする政策パッケージを政権公約として示すこと、②ことに自民党は新総裁に選ばれた小泉首相を中心に早急に作業を行うこと。その際、責任ある党内指導体制を確立するためにも、小泉首相が総裁選で掲げた方針を党の政権公約の基本とすること、③与党の立場にある政党は、政権公約の中にこれまでの政権運営と政策実績の評価を盛り込むこと、④政党は政権公約を公認候補者に徹底させ、政権公約の実現に連帯責任を負うことをすべての公認候補者に誓約させること、⑤政権獲得を目指す政党は首相候補と政権公約をセットで国民に示し、総選挙を名実ともに「国民による政権選択の場」とすること、⑥政党はあらゆる機会を通じて政権公約をめぐる公開討論会を開催すること、⑦次の総選挙を政権選択選挙とするために最低限必要となる公職選挙法の改正を必ず実現すること――を求めた。
総会には、推進議員連盟の両共同代表や特別顧問・保岡興治、幹事・杉浦正健らも出席。残された会期中に公選法改正を成し遂げる決意を表明した。10月3日、政権公約を記載した冊子の頒布を可能にする公選法改正案が衆議院本会議で可決。異例のスピードでの法案成立だった。

初のマニフェスト選挙・政権選択選挙

10月10日、衆議院が解散。11月9日に投開票された第43回衆議院議員選挙は日本の政党政治が経験する初のマニフェスト選挙であり、初の本格的な政権選択選挙となった。
自民党は「小泉改革宣言 自民党政権公約2003」を、民主党は「民主党政権公約 MANIFESTO(マニフェスト)」を、公明党は「政策綱領マニフェスト100」をそれぞれ作成。各党は政権公約を中心に選挙を行い、投票の結果、連立与党側が過半数を超える議席を獲得し、政権を維持した。
後年、「マニフェスト元年」と呼ばれることとなる総選挙投開票日の翌日(11月10日)、21世紀臨調は4人の共同代表名で「総選挙結果に関する声明文」を公表した。
声明文では、初めて「政権の選択」を本格的に意識した総選挙となり、総選挙の結果、緊張感ある2大政党制の礎が築かれたことを高く評価するとともに、低投票率などを課題として指摘し、次のように結んでいる。
「政権公約をさらに進化させるとともに、政権公約を出発点として政党政治のサイクルを立て直し、責任ある政治主導体制の確立に立ち向かうべきである。」

評価の基本的ガイドライン

21世紀臨調は2004年5月12日、「政権公約(マニフェスト)検証・第1回大会」を都内で開催した。
大会には日本経団連(オブザーバー参加)、経済同友会、連合、全国知事会、日本青年会議所、言論NPO、構想日本、日本総研の8団体が参加。前年の総選挙における政権公約に照らし、それぞれの立場から小泉内閣の中間評価が公表された。
21世紀臨調は2005年5月20日、学識者と報道関係者で「政権公約推進実行委員会」を組織。委員会が取り上げたテーマの1つが政権公約を検証・評価する仕組みづくりだった。
国政選挙という権力闘争の渦中にある政党の公約や政権の実績を民間組織が評価することはリスクを伴う。21世紀臨調は大会を主催することで、参加を表明した各団体を守る傘の役割を果たすとともに、報道を通じて各団体の評価が広く国民に伝わる機会を提供し、検証・評価の動きを促進する役割を担った。
政権公約検証大会に当たり、21世紀臨調は主催者として評価の基本的なガイドラインを示した。政権実績については、政権運営と政策実績の2つに大別。このうち政策実績は「実績」「実行過程」「説明責任」の3要素、政権公約は「形式用件」「策定手続き」「内容」の3要素から、それぞれ判断することを求めた。(文中・敬称略)

【参考文献】『生産性運動50年史』(社会経済生産性本部、2005年)/『平成デモクラシー』(講談社、2013年)

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