第20回 緑に包まれ人が主役の街 麻布台ヒルズ 森ビル

連載「ミライを変える革新力」⑳ 緑に包まれ人が主役の街 麻布台ヒルズ 森ビル

東京・港区の麻布台ヒルズ。足を踏み入れると緑の波が広がる。中央広場に立つと、都心の中で思いのほか「静けさ」を感じた。再開発構想から30余年。地元との対話の積み重ねが、自然と共生する〝緑に包まれる街〟を生んだ。
2023年11月に開業した。オフィス、住宅、ホテル、商業施設が並ぶ。中心にそびえる森JPタワー(高さ約330メートル)は、日本で最も高く、空を射抜くようだ。
デジタルアートミュージアム、ギャラリーもあり、アートや文化などの発信にも力を入れる。

対話を重ね、信頼づくり

計画の始まりは1989年。森ビルが地元住民とともに「街づくり協議会」を立ち上げた。「再開発は土地に建物を建てる話だけではありません。人の生活そのものに関わるものです」。プロジェクトを担当した都市開発事業部開発2部部長の高池義方氏はこう述べた。麻布台地区は、もともと細分化された住宅地で、商店街、小規模なビルが入り組んだ地区。権利者は、約300人といわれた。一般的な再開発の10倍に及ぶ。それぞれ権利関係や生活基盤等の事情が異なり、合意形成には多くの時間が必要だったという。
「最初は玄関を10センチ程度しか開けてもらえない家もありました」と高池氏は明かす。何度も足を運び、まずは顔を覚えてもらうところから始めた。信頼関係を築くまでは本音や悩みが聞けず、提案もできないからだ。

地形の特徴をいかす

地元との調整と並行して、行政との協議も続いた。敷地は東西に細長く、最大10数メートルの高低差があった。防災力を高める道路など一体的なインフラ整備も必要だった。港区、東京都、国など関係機関との手続きは膨大。高池氏は「どちらか一方が先行しても真っすぐ進まない。地元と行政、2つの車輪を同じスピードで回すことも非常に難易度が高かった」と話した。街の理想の姿を描きながら行政協議を進めると同時に、再開発の実現に向けた権利者との合意を形成していく。その都度、計画を微調整しながら前に進んだ。
2017年に都市計画決定。敷地の約3割を緑化し、街の中心に「中央広場」を設けた。街の顔ともなる低層部(ガーデンプラザを指す)は、歩行者の目線に寄り添うよう設計。起伏ある地形を生かした段差の中に光と風を取り込み、地下空間でも「地下を感じさせない」よう細部を詰めた。
再開発区域に隣接する神社とは、30年以上前から関係を築いてきた。夏祭りでは、森ビル社員も神輿を担ぎ、模擬店を手伝った。こうしたつながりもあって神社と街が歩行者ブリッジで結ばれた。氏神様がまるで街を見守っているようだ。

高池義方氏
麻布台プロジェクトを担当した高池義方氏
麻布台ヒルズ
麻布台ヒルズの全景(森ビル提供)

名店集結のフードマーケット

商業施設の誘致でも妥協はなかった。「ガーデンプラザ」にある食のマーケット「麻布台ヒルズマーケット」では、日本の食を代表する30店舗以上の専門店と個別に契約。名店の味を日々の生活圏の中で味わい、買える場所をつくった。「タワープラザ」「レジデンス」にもファッション、フード、ビューティーなどの店舗があり、全体で約150店舗が集結する。森ビルは、店舗を「テナント」ではなく「パートナー」と呼ぶという。一緒に街を育てる仲間だからだ。
レストランは、ハイエンドからカジュアルまで多様なジャンルが魅力だ。「レジデンスA」に入るラグジュアリーホテル「ジャヌ東京」は、8つのダイニングが世界各国の料理を提供する。

街が新たな価値と魅力を生む

行政、権利者との信頼関係、施工関係者の協力。どれか1つが欠けても街づくりは成立しない。
高池氏は言う。「森ビルの街づくりは『都市を創り、都市を育む』こと。建物が完成して終わりでなく、そこに住まわれる方々の未来に責任をもちたい」。
都市をつくるとは、時間をかけて人との関係を紡ぐものだ。麻布台ヒルズはそれをかたちにした。この街に住む、働く、学ぶ、遊ぶ、憩うといった「人の営み」から、新しい価値や魅力が生まれていく。

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