「リコー式ジョブ型人事制度とは」 リコー CHRO 長久良子氏

リコーCHRO 長久良子氏

日本生産性本部は2025年4月16日、第99期「人事部長クラブ」の4月例会を都内で開催した。当日は、長久良子・リコーCHROが「リコー式ジョブ型人事制度とその後」をテーマに講演した。


OAメーカーからデジタルサービスの会社への変革

同社は、2020年に「OAメーカーからデジタルサービスの会社への変革」を宣言し、「はたらく人の創造力を支え、ワークプレイスを変えるお手伝いをするデジタルサービスの会社」へと変革を進めている。
その変革にあたっては、職能資格制度における課題を解決し、自律的に実力を磨き続ける人が活躍できる環境を目指すこととした。課題となったのが、①高い管理職比率(高資格者に配慮した任用による組織の硬直化)、②年功的な配置と登用(過去に評価された能力の積み上げを重視)、③若手のやる気減退(昇格機会の減少により、特に優秀層のデモチベートや離職リスクが増大)だった。



リコー式ジョブ型制度を導入

そこで、「過去の実績ではなく、現在の実力と意欲によって、抜擢され、活躍できるようにする「難しい仕事へのチャレンジや会社への貢献度が高い人が報われるようにする」「適所適材を実現し、柔軟なポジションのOn/Offができるようにする」ために2022年4月からリコー式ジョブ型制度を導入した。
長久氏は、制度の特徴として、①マネジメントとエキスパートの複線型(管理職以上)による適所適材の実現、②ジョブを大括りにしたグレード定義、③アソシエイト・エキスパートの設置、④制度のデザインに14回の役員会で議論、の四つを挙げた。


制度の特徴と導入後

①では、「マネージャー」(組織の長としてマネジメントを通じて組織へ貢献するポジション)と、「職種を限定しない専門性を用いて組織へ貢献するポジション」の「エキスパート」を設定し、両者の行き来を可能とした。

②では、同程度のジョブ・責任を持つポジションを大きく括りグレード化し、柔軟な配置をしやすくした。

③では、マネージャーとエキスパートに就かない管理職として「アソシエイト・エキスパート」(担当管理職、テーマリーダーとして、担当領域での目標達成を達成するポジション)を設定。マネージャーとエキスパートからポジションOffとなった社員は、管理職としてアソシエイト・エキスパートに位置づける。滞留期間は3年間を限度とし、3年以内にマネージャーかエキスパートに登用されない場合はアソシエイト・エキスパートから一般職へ移行する。

制度導入後は、チャレンジ意欲の高い若手の積極的な登用(昇格試験を廃止し、積極的な若手登用を促した結果、マネージャー、エキスパートとも30歳代の若手の比率が着実に拡大)や、実力に応じた柔軟な任用(一般職から管理職への積極的な登用が拡大。組織の必要性に応じ、マネージャー、エキスパートからアソシエイト・エキスパートへのポジションOff、アソシエイト・エキスパートからマネージャー、エキスパートへの再チャレンジが行われている)、自律的なキャリア形成、高い目標へのチャレンジ(各ポジションのジョブディスクリプションを公開することにより、自身のキャリアにおける目標となるポジションが具体的になっている)がみられるという。

長久氏は、「今後は、制度が現場の文化・意識レベルまで根付くよう、ポジションOffの促進に向けた同一ポジション滞留者の再評価や、自律的なチャレンジに向けたマネージャーとエキスパートの社内公募拡大など、さらなる仕掛けを進める必要がある」と述べた。



第99期「人事部長クラブ」は、「人事戦略から企業の未来をデザインする」を統一テーマに7月まで開催。
対象は、人事・労務、総務、人材、経営企画等のエグゼクティブ。



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