調査・研究労働生産性の国際比較

労働生産性の国際比較 1998年版

1998年9月29日
公益財団法人 日本生産性本部

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財団法人 社会経済生産性本部は、OECD加盟先進12ヵ国を対象にした1998年版労働生産性の国際比較をまとめた。本報告書では1990年価格に統一したGDP(国内総生産)をOECDが発表している1990年の購買力平価で換算して生産性を計測している。

(購買力平価とはある一定の商品を購入するのに必要な両国の通貨の比率を平均化した値。1990年の購買力平価は1ドル=195.5円)

1996年の日本の国民一人当り実質GDPの水準は米国に次いで第2位であり、1991年以来6年連続してこの位置を保っている(図I)。 しかし、就業者一人当りの実質GDPである「国民経済生産性」は、伸び率において1995年の1.4%から3.5%へ回復したものの、水準で見ると依然3年連続11位にとどまる結果になった。1位はアメリカで、日本を100とすると135となっている(図IV)。

日本の国民経済生産性は90年代に入って低迷しており、1992年から3年連続1%以下の年平均上昇率が続いた(図II)。1995年、1996年はやや持ち直したものの、1997年は再び大きく落ち込んでいるものと思われ、再び低迷期に入る可能性がある。

21世紀に向けて労働力人口の減少が予想されるなか、生活水準を維持・向上させていくためには国民経済生産性の向上が不可欠である。生産性の水準を産業別に見ると(1995年 表2)、農林水産業が米国の40%の水準にあるのをはじめ、運輸・通信業が66%、公共的・個人的・社会的サービスが67%、商業が68%と低くなっている。これが日本の国民経済生産性が低い理由であり、日本経済全体の水準を向上させるためには、規制緩和等、構造改革の推進によるこれら産業の生産性向上が不可欠である。

また、同時に産業レベルにとどまらず、社会資本整備、医療・介護サービス、交通政策、教育、環境保全など社会経済全体のシステム改革を通じて、社会的な生産性を高めていくことが求められている。

この調査はOECD先進12カ国について、国民一人当り実質国内総生産(GDP per capita)、国民経済生産性(就業者一人当り実質国内総生産)、および産業分類別の実質付加価値労働生産性をman-yearbaseで比較したものと、さらに製造業について中分類業種別に日・米・独をman-hourbaseで計測比較したものである。

本書では生産性水準比較を行う際に、1990年価格に統一した各国通貨表示のGDP(付加価値)を購買力平価(ある一定の商品を購入するのに必要な両国の通貨の比率を平均化した値)によって円貨に変換している。その際実質GDPの基準年を1990年に設定しているため、換算レートとして使用している購買力平価も1990年1ドル=195.5円を使用している。

主要な点は以下の通りである。

  1. (1)1996年の日本の国民一人当り実質GDPの水準は米国に次いで第2位となっている。

    1990年までは米国、西ドイツ、カナダに次いで4位だったが、ドイツが統一した影響もあり、1991年から2位の位置にある。対前年比の伸び率は前年の+1.0%を大きく上回る+3.7%となった。前年は+1.0%と伸びを低下させた米国も1996年は+1.8%とやや回復した。しかし日本の伸びが米国の伸びを上回ったため、1996年の日本を100としたときの米国の水準は125となり、前年の127から格差は縮小した。他国では韓国が+6.1%、オランダが+3.0%と高い伸びを示している。1994年以降伸び率に差はあるものの、全ての国で前年比がプラスになっている。

    図I 1996年国民一人当りGDPの水準(日本=100)

  2. (2)GDPを就業者総数で割った国民経済生産性を見ると、日本の1996年の国民経済生産性の対前年比はバブル崩壊後、1992年から3年続いて1%以下の伸び率となっていたが、1995年に1.4%まで回復したのに続いて1996年は3.5%の上昇となった。(ただし1997年の日本の国民経済生産性は大きく落ち込んでいるものと予想され、再び低迷期に入る危険性もあり楽観は許されない状況にある。)

    図II 日本の国民経済生産性の対前年変化率 (%)

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