調査・研究その他の調査研究・提言

第12回 働く人の意識調査

第8波到来で感染不安高まる、テレワーク実施率は16.8%と過去最低に近く

2023年1月27日
公益財団法人 日本生産性本部


調査研究や提言、実践活動により生産性向上をめざす公益財団法人 日本生産性本部(東京都千代田区、会長:茂木友三郎)は1月27日、新型コロナウイルス感染症が組織で働く人の意識に及ぼす影響の継続調査(第12回「働く人の意識調査」)結果を取りまとめ、公表しました。本調査は、組織で働く雇用者を対象に、勤め先への信頼度や雇用・働き方に対する考え方などについて、2020年5月以降、四半期毎にアンケートにより実施しているものです。12回目となる今回は、原材料費高騰による物価高が長引き、新型コロナ感染の第8波が収束しない中での1月10日(火)~11日(水)、20歳以上の日本の企業・団体に雇用されている者(雇用者=就業者から自営業者、家族従業者等を除いたもの)1,100名を対象にインターネットを通じて行いました。


【第12回「働く人の意識調査」概要】

調査結果から、現在の景況感および景気見通しは引き続き悪く、原材料価格の高騰等が長期的に生活に影を落としていることが確認されました。新型コロナへの感染不安は、年末年始にかけて到来した第8波を受けて30代を除く全世代で増加に転じ、不安感が高まっています。テレワーク実施率は16.8%と、前回10月調査から微減し、過去最低を記録した7月調査の16.2%をわずかに上回りました。また、2022年1月調査と同様に年末年始の過ごし方についての設問を追加しました。主な特徴は以下の通りです。


【第12回「働く人の意識調査」主な特徴】(詳細や図表は別添「調査結果レポート」参照)

1. 現況:景況感は「悪い」が75%超、感染不安は30代を除く全世代で増加に転じる(図2~9)

  • ・現在の景気について、「悪い」が、前回10月調査の36.2%から39.1%へと増加。「悪い」「やや悪い」の合計は76.1%と、2021年1月以来の75%超え(図2)。
  • ・今後の景気見通しについては、「どちらともいえない」が2022年7月調査以降増加しており、前回10月調査の39.6%から40.8%に増加。「悪くなる」「やや悪くなる」の合計も48.0%から50.6%に増加(図3)。
  • ・自身が新型コロナに感染する不安については、「かなり不安を感じている」が前回10月調査で13.8%と過去最小を記録し、2022年1月調査以降減少傾向にあったものの、今回調査で21.2%と増加に転じた(図5)。
  • ・年代別では、30代を除く全年代で「不安を感じている」(「かなり不安を感じている」「やや不安を感じている」の合計)割合が増加。特に70代以上は前回10月調査の58.3%から75.0%に増加(図6)。
  • ・年末年始の恒例行事を行ったかについて、2022年1月調査と同様に質問したところ、「家でゆっくり過ごす」「大掃除」「仕事」以外の全ての行事・行動について、「行った」割合は昨年より増加。一方、「コロナ禍前には行っていた」割合と比べると、大幅に小さいものが多い(図9)。

2. 勤め先への信頼感:業績への不安は増加に転じる、収入不安は払しょくされず(図13~17)

  • ・今後の勤め先の業績について、「かなり不安を感じる」と「どちらかと言えば不安を感じる」の合計は50.8%と、過去最小であった前回から増加に転じ、5割を上回った(図14)。
  • ・今後の自身の雇用について、「不安は感じない」(「全く不安は感じない」「どちらかと言えば不安は感じない」の合計)割合が53.6%と、6回連続して「不安は感じない」が5割を上回った(図15)。雇用不安は第3回調査(2020年10月)で最大となって以来、改善傾向。
  • ・今後の自身の収入について、「不安を感じる」(「かなり不安を感じる」「どちらかと言えば不安を感じる」の合計)が62.3%と、前回10月調査の61.6%から増加(図16)。前回まで過去3回にわたり微増を続けていた「かなり不安を感じる」は減少した一方、「どちらかと言えば不安を感じる」は前回より増加しており、不安感は払しょくされていない。
  • ・勤め先への信頼の程度は、「信頼している」(「信頼している」「まずまず信頼している」の合計)が54.7%と減少。2022年4月以降、勤め先への信頼感は連続して減少の傾向にある(図17)。

3. キャリア形成と人材育成:自己啓発「特に取り組む意向は無い」が初の6割超(図23~31)

    • ・最近3か月(10月以降)のOff-JTの実施状況について、勤め先からの「案内により受講した」は前回調査の7.2%から5.3%に微減。「案内はあったが受講しなかった」は7.0%、「勤め先から特に案内がなかった」は87.7%。「案内があった」割合は12.3%と前回10月調査の16.1%より減少(図23)。
    • ・最近3か月(10月以降)にOJTを「行う」機会が「あった」は12.5%と減少(図25)し、OJTを「受ける」機会が「あった」も13.2%に微減(図26)。ただし、この傾向は2022年1月も同様であることから、年末年始の影響によるものである可能性も考えられる。
    • ・勤め先の教育の現状に、雇用者は満足しているかについて、教育の「機会」に「満足している」割合(「満足している」「どちらかと言えば満足している」の合計)は36.1%、教育の「内容」に「満足している」(「満足している」「どちらかと言えば満足している」の合計)は35.8%と、機会・内容ともに「満足」している割合は前回から減少し、過去最小(図27・28)。
    • ・自己啓発を「行っている」は前回10月調査の14.1%から14.6%に微増、「行っていないが、始めたいと思っている」は26.6%から25.0%に微減。「特に取り組む意向は無い」は初めて6割超(図31)。2022年4月調査以降、雇用者の自発的な学習意欲は緩やかながら低下を続けている。

4. 働き方の変化:テレワーク実施率は過去最低に近く、中規模企業の実施率が低下(図34~44)

          • ・テレワークの実施率は前回の17.2%から16.8%に微減。過去最低となった2022年7月調査の16.2%をわずかに上回った(図35)。
          • ・従業員規模別に見ると、100名以下の勤め先では前回10月調査の11.5%から12.9%に、1,001名以上は30.0%から34.0%に増加した一方で、101~1,000名では18.7%から13.2%へと減少(図36)。これまで大企業とともにテレワークを牽引してきた中規模企業の実施率が、小規模企業の実施率と同程度となった。
          • ・自宅での勤務で「効率が上がった」「やや上がった」と回答した割合は66.7%と過去最高を記録(図39)。また、自宅での勤務に「満足している」「どちらかと言えば満足している」の合計も87.4%と過去最高となった(図40)。
          • ・コロナ禍収束後もテレワークを行いたいかについて、「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」の合計は、前回10月調査の76.7%から84.9%へと増加(図43)。コロナ禍収束後に「テレワークの普及」が「起こり得る」「どちらかと言えば起こり得る」の合計は37.1%から33.1%に減少。

【「働く人の意識調査」概要】
公表日 調査期間 タイトル 調査期間の特徴
第1回
2020年5月22日
2020年
5月11日~13日
労使の堅固な信頼関係の再構築と「新しい生活様式」に向けた意識改革を 初の緊急事態宣言発出(4月7日)から1か月半
第2回
2020年7月21日
2020年
7月6日~7日
組織の生産性向上につながる労使の信頼関係の再構築を 緊急事態解除(5月25日)から1か月半
第3回
2020年10月16日
2020年
10月5日~7日
人的資本への積極投資を。テレワークは一定程度定着の兆し 「GoToトラベル」等積極的経済活動再開から3か月
第4回
2021年1月22日
2021年
1月12日~13日
組織の健康配慮が行動変容を後押し、社会経済システムや組織への信頼強化を 二度目の緊急事態宣言発出(1月7日)直後
第5回
2021年4月22日
2021年
4月12日~13日
行動や働き方の変容には、宣言・措置よりも労使による積極的取り組みと課題解決を 一部地域に「まん延防止等重点措置」適用(4月5日)直後
第6回
2021年7月16日
2021年
7月5~6日
ポストコロナの社会・経済変化に懐疑的、コロナ以前に回帰か。「テレワーク疲れ」に注視を 東京オリンピック・パラリンピック開催まで約3週間
第7回
2021年10月21日
2021年
10月11日~12日
テレワーク実施率、宣言・措置解除後も約2割で推移 国による緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の解除後、約10日が経過
第8回
2022年1月27日
2022年
1月17日~18日
テレワーク実施率は過去最低の18.5%、中堅・大企業の実施率低下が影響 感染力の強いオミクロン株による新規感染者が急増、まん延防止等重点措置、3県適用中、13都県適用直前
第9回
2022年4月22日
2022年
4月11日~12日
テレワーク実施率は約2割で推移、在宅勤務の満足度は過去最高に 国によるまん延防止等重点措置の解除後、約3週間が経過し第7波の予兆を懸念
第10回
2022年7月25日
2022年
7月4日~5日
テレワーク実施率は16.2%と過去最低を更新、20代・30代の実施率が大幅減 訪日外国人客の受け入れが2年ぶり再開。国際情勢は緊迫。円安や、原材料価格高騰などで消費者物価が上昇
第11回
2022年10月28日
2022年
10月11日~12日
感染不安は薄れる傾向が続く、テレワーク実施率は17.2%と低調に推移 原材料価格高騰や円安が進行し、消費者物価は上昇傾向。円が32年ぶりに1ドル=150円を割り込む。政府・日銀は24年ぶりに市場介入
第12回
2023年1月27日
2023年
1月10日~11日
第8波到来で感染不安高まる、テレワーク実施率は16.8%と過去最低に近く 原材料価格の高騰による光熱費、日用品、食品などの値上げが続く。中国当局が日本人向けのビザ発給を一時停止
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公益財団法人 日本生産性本部 生産性総合研究センター(担当:長田)

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