調査・研究雇用・賃金に関する調査研究・提言

第11回 日本的雇用・人事の変容に関する調査結果

2008年6月5日
公益財団法人 日本生産性本部

財団法人 社会経済生産性本部は97年より毎年、全上場企業を対象に「日本的人事制度の変容に関する調査」を実施している。今回の調査は第11回にあたり、2008年1月下旬から2月下旬にかけて実施した。結果のポイントは以下の通り(調査の概要はp.2)。

  1. 1.新卒採用社員が採用後3年程度で3割以上離職する企業11.5%、但し第3次産業・建設業では約2割

    新卒採用社員が採用後3年程度で3割以上離職するという企業は1割強(11.5%)。但し、第3次産業では22.7%、建設業では20.0%。若年層定着のため効果がある施策は、「若年社員に対する指導係をつけるなどのフォロー体制」(66.5%)、「人事部による定期的な面談などフォロー体制」(42.2%)などフォロー体制をあげる企業が多い。今後の雇用理念や人材育成の考え方は、「長期的雇用を前提に、能力開発や人材育成を会社主体に行う」という企業が76.7%と最も多くなっている。成果主義の見直しの機運や労働力不足などを背景に、企業の意識が長期的な人材育成・確保へ変わりつつあることが伺われる。処遇体系を見ると、能力主義的な賃金である職能給の導入率がこれまでの減少傾向から一転増加しており、管理職層で74.5%、非管理職層で80.9%と増加していることが注目される。

  2. 2.ワークライフバランス施策は在宅勤務(2.9%)・事業所内託児所設置(4.6%)等勤務場所への取り組みに遅れが目立つ

    ワークライフバランス関連施策は従業員規模による導入・実施率に差が見られるが、育児・介護を行うために利用できる在宅勤務制度(2.9%)やサテライトオフィス勤務制度(3.3%)、あるいは事業所内託児所設置(4.6%)など、勤務場所に関する施策は、従業員規模に関わりなく、1割以下の導入率にとどまっている。「育児・介護等の事由による退職者に対する再雇用制度」の導入率は26.6%で、06年調査17.2%に比べると導入率が高まっている。

  3. 3.女性社員の活用や管理職登用が業績に効果あり77.3%、理由は「会議の効率化など業務改善が進む」41.1%

    「経営層からのトップダウンによる(女性活用・管理職登用に向けての)企業風土・意識改革の意思表明・明言化」をしているという企業は5割強(53.2%)を占めており、5000人以上規模では7割強(73.3%)を占めている。女性管理職が増加した企業は4割強(43.5%)を占める(5000人以上規模では73.4%)。また、女性管理職が増加することは業績に効果があるという企業は77.3%。その理由としては「会議の効率化など業務遂行の改善が進む」が41.1%と最も多い。

  4. 4.再雇用状況(2007年度)は「ほぼ予想通り」74.2%。また、「予想よりやや多い」企業では「同じ職場で働ける」(59.1%)、「希望する仕事につける」(50.0%)、「再雇用に向けて研修・意識付けをしている」(27.3%)との回答が多い

    2007年度の再雇用状況は、「ほぼ予想通り」が7割強(74.2%)。「予想よりやや多い」という企業は1割強(13.2%)。2007年度の予想再雇用率は平均で69.2%と、500人未満では80.8%。
    再雇用が「予想よりやや多い」という企業では、「個々人の就労意欲が高いため」という企業が最も多く77.3%。次いで、「ほぼ退職時と同じ職場で働けるため」をあげる企業が59.1%、「ほぼ本人の希望する仕事につけるため」が50.0%となっている。また、「再雇用に向けての研修や意識づけなどを行っているため」をあげる企業も27.3%と比較的高くなっている。再雇用時の職場を現役時と同じ職場にすることや、希望する仕事に就けることなどの配慮や再雇用前の意識づけや研修を行うなどの措置をとることが再雇用者の確保につながっているものと思われる。

  5. 5.非正社員の正社員登用制度導入は、契約社員が51.8%、パートタイマー(フルタイム)が25.7%

    非正社員の正社員登用制度は、契約社員に対して5割強(51.8%)が採り入れているものの、パートタイマー(フルタイム)では25.7%となっている。但し、パートタイマー(フルタイム)は一旦、契約社員になってから正社員登用の仕組みがあるという企業は11.9%となっている。非正社員を正社員に登用することのメリットは、「経験豊富な非正社員の確保・定着に効果がある」という回答が最も多く68.0%。次いで、「非正社員が意欲を持って仕事をするようになる」が67.0%、「必要な労働力が安定的に確保できる」が51.5%。
    非正社員という雇用区分を無くすという意見は少数(3.5%)。雇用区分を残しながら、労働時間で処遇するという企業が4割強(41.2%)ある一方、能力や成果で処遇(同一労働=同一賃金)という企業が5割(50.0%)占める。

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