調査・研究雇用・賃金に関する調査研究・提言

第10回 日本的人事制度の変容に関する調査結果概要

2007年3月22日
公益財団法人 日本生産性本部

「次世代リーダーの早期選抜・育成」などにも関心高まり、経営幹部への早期選抜・育成を行っている企業は43.6%(04年調査26.1%)と増加。女性管理職比率を目標とする企業もやや増加8.3%(05年調査5.9%)。また、契約社員・パートタイマー社員の正社員登用する制度を持つ企業もそれぞれ53.5%、30.3%と増加傾向。

調査結果のポイント

本調査は、産業界労使、学識経験者などで構成している財団法人社会経済生産性本部(理事長 谷口恒明)では、97年より毎年、全上場企業を対象に「日本的人事制度の変容に関する調査」を実施している。今回の調査は第10回にあたり、2006年11月上旬から2007年1月下旬にかけて実施した。結果のポイントは以下の通り(調査の概要はp・2)。

  1. I.ポスト団塊の人材マネジメントの優先課題、1位「優秀な人材の確保・定着」(04 調査7位)

    1位「優秀な人材の確保・定着」(04 調査7位)、2位「評価制度の納得性・透明性向上」(同1位)、3位「次世代リーダーの早期選抜・育成」(同2位)となるなど社員の育成・活用に関心高まる。その一方、「成果反映型処遇制度の導入・強化」は6位から11位、「人件費の抑制・削減」も10位から14位へ下がった。また、契約社員やパートタイマー社員など非典型雇用者に対して、「非典型雇用者がやる気を出す人事制度構築」は最下位(18位)となっている。

  2. II.経営幹部への早期選抜・育成実施企業43.6%、時期は入社10年目・年齢33歳から

    何らかの形で経営幹部への早期選抜・育成を行っている企業は43.6%(04 年調査26.1%)と増加してきている。またその時期は入社10 年目、年齢33.0歳から。第3次産業では入社7.5年目、30.5歳と最も早くなっている。

  3. III.ワークライフバランス施策の導入(実施)、大企業ほど整備進むなど規模間格差が見られる

    ワークライフバランス施策の導入(実施)状況を見ると従業員規模間格差が大きく、大企業ほど制度整備が進んでいる。特に、継続的雇用への支援・配慮(職場復帰にむけての情報提供・面談などコミュニケーション)や女性社員の活用・登用(転勤などの要件を満たさなくても女性社員を管理職に登用するなど)に力を入れている。

  4. IV.女性管理職比率は3.7%、従業員規模が小さい企業ほど高く500人未満では8.3%

    女性管理職比率は06年調査3.7%(04 年調査4.2%、05 年調査3.3%)。企業規模で見ると、500人未満では8.3%と最も高くなっており、女性の登用が進んでいることが伺われる。一方、女性管理職比率目標設定企業は増加傾向で06年調査8.3%(05 年調査5.9%)。

  5. V.60歳以降の再雇用率は平均60.1%(06 年46.6%)、特に高いのは繊維88.3%、精密機械83.2%

    2007年見込みの再雇用率は平均60.1%(06 年46.6%)。最も高いのは製造業で65.5%。また、業種では繊維88.3%、精密機器83.2%、輸送用機器75.6%、鉄鋼・非鉄・金属75.6%などが高い再雇用率となっている。60歳以降の再雇用者の選定基準は「健康」80.6%、「人事考課」が66.1%。

  6. VI.評価者の評価バラつきや評価と育成の連動、評価結果への異議申し立てについて過半数が課題を感じている

    成果主義的処遇(賃金・賞与)をとりいれている企業は84.1%を占めるが、その過半数は管理者による評価のばらつきがあることや評価と育成の連動が十分にされていないこと、評価への苦情や意見が申し出にくい状況にあると認識している。

  7. VII.契約社員・パートタイマーの正社員登用制度がある企業、各53.5%(04 調査40.7%)、30.3%(同19.3%)と増加傾向

    契約社員・パートタイマー社員を正社員に登用する制度を持つ企業は増加傾向(契約社員では53.5%、パート社員では30.3%)。契約社員については、正社員並みの活用と同時に、正社員並みの育成・処遇が行われているが、パートタイマー社員に対しては正社員並みの活用が進む一方で、育成・処遇には遅れが見られる。第3次産業、特に卸・小売業ではパートタイマー社員の人材育成や成果主義的処遇に積極的に取り組んでおり、7割強(71.4%)が正社員対象の能力開発研修を受講させ、業績や成果により正社員に比べて遜色のない賃金や賞与を支給する企業も4割強(42.9%)を占める。

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