調査・研究雇用・賃金に関する調査研究・提言

第9回 日本的人事制度の変容に関する調査結果概要

成果主義導入企業の約5 割、「現場の評価能力にバラつきが大きい」

2006年3月16日
公益財団法人 日本生産性本部

○ 仕事基準の賃金(役割・職務給)導入進むが、「運用上、降格・降給はやりにくいことが今後の課題」53.8%

○ 職種別賃金の導入率 約2 割(19.7%)、第3 次産業では25.6%と増えたが、職場の一体感維持などに課題

○ 役員退職慰労金の廃止企業19.3%、5000 人以上規模では31.1%に増加

○ 60 歳代前半層の継続雇用、45.6%は勤務形態や仕事内容、保有能力に応じた多様な選択肢を用意

○ また、継続雇用者に対して「人事考課でそれなりに処遇に格差をつける」44.0%

○ 仕事と家庭の両立にむけて多様な支援措置や制度を取り入れている企業ほど男性社員も含めて制度が利用しやすい風土になっている

財団法人 社会経済生産性本部は、97 年より毎年、全上場企業を対象に「日本的人事制度の変容に関する調査」を実施している。今回の調査は第9 回にあたり、2005 年11 月上旬から2006 年2 月上旬にかけて実施した。結果のポイントは以下の通り(調査の概要はp.2)。

○役割・職務給の導入更に進む、非管理職層でも約4 割(40.9%)。洗い替えの昇降給が2 割強を占めるが、「運用上、降給・降格はやりにくい」53.8%(→p.3)仕事基準の賃金である役割・職務給の導入が更に増え、99 年調査では管理職層21.1%、非管理職層では17.7%であったのに対して2005 年調査ではそれぞれ61.0%、40.9%と急増している。また、管理職層の役割・職務給は、約4 割(40.6%)が「査定による洗い替えで昇降給がある制度」となっており、非管理職層でも2 割強(23.1%)を占めている。しかし、運用上の課題を見ると、「役割の見直しに伴う降格や降給がむずかしい」という企業が53.8%を占めるなど、成果主義的な運用には課題が残る。

○成果主義導入約9 割、その一方で「現場で適正な評価ができていない」が約5 割(49.8%)占める(→pp..4-5)「業績や成績により、賃金・賞与で相当の格差がつく」という企業は約9 割を占める。こうした企業では、客観性・納得性の高い業績評価やプロセス評価の整備は進められているものの、約5 割(49.8%)は「現場での評価能力にバラツキがあり、適正な評価が出来ていない」と感じている。また、5 割強(52.5%)は「評価結果に対する苦情や意義申し立てがしにくい組織風土」と感じているなど二極化が見られ、成果主義を取り入れた企業でも評価など運用の違いが出ている。

○職種別賃金の導入率、約2 割(19.7%)、第3 次産業では25.6%に増加(→p.6)
職種別賃金(事務・営業・製造など職種に応じた、異なる賃金体系・水準を設定する制度)の導入は19.7%で、2004 年調査時点の12.3%よりやや増加した。特に産業別では第3 次産業が25.6%と高くなっており、中でも卸・小売業が28.2%と高い導入率となっている。職種別賃金制度の運用上の課題としては、「職種ごとの賃金水準設定困難」(41.3%)、「賃金水準の低い職種の従業員のモラールダウン」(32.6%)があげられている。

○役員の退職慰労金の廃止、約2 割(19.3%)に増加、但し報酬委員会設置は1 割(9.8%)にとどまる(→p.7)
従業員の成果主義が進む中で、役員の処遇制度改革も徐々に進められている。役員の退職慰労金を廃止した企業は
2004 年調査では9.1%であったのに対して、2005 年調査では19.3%へと増加している。しかし、報酬委員会の設置について見ると、導入率は9.8%にとどまり、約6 割(60.6%)は導入予定なしとしている。

○60 歳代前半層の雇用継続、45.6%が勤務形態や仕事内容に応じた多様な働き方を用意、また、継続雇用者に対して「人事考課でそれなりに処遇に差をつける」44.0%(→pp..8-10)60 歳以降の雇用継続について約9割は再雇用制度。また、グループ企業で再雇用という企業は45.3%を占める。再雇用者の選定条件は、「健康状態」(73.2%)、「人事考課」(53.5%)。また、4 割強(45.8%)勤務時間や職種、保有能力などに応じて多様な働き方を用意している。また、再雇用者の人事考課についても、「制度を整備し、それなりに処遇に差をつける」という企業が4割強(44.0%)を占める。

○仕事と家庭の両立支援、「短時間勤務者などの人事評価・昇格基準改善」35.0%が実施(→pp..11-12)仕事と家庭の両立支援では、短時間勤務制度や休業制度など柔軟な労働時間制度を取り入れている企業は過半数を超える。また、「短時間勤務者などの人事評価・昇格基準など改善」は35.0%となっている。多様な両立支援措置や制度を導入している企業ほど職場の理解が進み、制度が男性社員も含めて利用しやすい。その結果、女性の定着率も高くなると感じられている。

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