調査・研究雇用・賃金に関する調査研究・提言

第8回 日本的人事制度の変容に関する調査結果概要

「団塊の世代」リタイアにより管理職への若手抜擢進むという企業は約6 割(58.1%)

2005年3月9日
公益財団法人 日本生産性本部

○ 経営幹部の早期選抜・育成を実施している企業は26.1%で、4 割(40.3%)は検討中

○ 管理職登用年齢、第1 選抜で34.1 歳(5 年前の調査37.1 歳より3 年早まる)

○ 人材マネジメントの優先課題、「評価の納得性・透明性の向上」 7 割占める

財団法人 社会経済生産性本部は、97 年より毎年、全上場企業を対象に「日本的人事制度の変容に関する調査」を実施している。今回の調査は第8回にあたり、2004年11月中旬から12月上旬にかけて実施した。結果のポイントは以下の通り(調査の概要はp.2)。

○採用状況について(p.3-4)

今後3~5 年間の採用予定で新卒採用を増やすという企業は41.9%、中途採用(経験者)を増やすという企業は47.8%で全体に採用意欲は高い。また契約社員やパートタイマーなど非正規従業員の採用も増加傾向にあり、従業員に占める割合は約3 割(27.7%)を占め、今後はさらに比率は高まる見通しとなっている。

○契約社員、パートタイマーの活用・処遇について(p.5)

雇用増が見込まれる契約社員とパートタイマーだが、活用や処遇に格差が見られる。契約社員に対しては高度な専門性を要する業務につけ、業績や成果に応じて正社員に遜色のない賃金・賞与を支給するという企業が約6 割(61.3%)、正社員対象の能力開発研修などを受講させるという企業が約5 割(51.4%)、また、正社員への登用の仕組みがあるという企業も48.0%となっており、契約社員の戦力化を進めている状況が伺われる。

○「団塊の世代」のリタイヤによる影響について(p.6-9)

今後2007~2010 年にかけて、「団塊の世代」が定年を迎えるが、そのことが与える影響として、約6 割(58.1%)の企業は管理職への若手抜擢が進むと考えている。また、「技能伝承など社内ナレッジの継承がうまくいかなくなる」が約4 割(39.9%)、「定年の延長が進む」が35.2%となっている。一方、すでに経営幹部の早期選抜・育成を実施している企業は3割に満たず(26.1%)、検討中という企業が約4 割(40.3%)を占める。現時点での管理職への標準登用年齢は37.8 歳、第1 選抜年齢は34.1 歳となっており、いわゆるバブル入社組(1988~92 年頃まで)より若い世代から第1 選抜がはじまることになる。社長の望ましい就任年齢は52.4 歳となっており、管理職登用年齢が若い企業ほど若くなっている。また、団塊の世代のリタイヤによる影響のひとつとして、60 歳以降への定年延長があるが、すでに実施している企業は11.9%となっている。

○成果主義の浸透にともなう評価・育成・処遇について(p.10-14)

成果(業績・成績)の評価により賃金や賞与で相当の格差がつくという企業は約9 割(89.4%)を占めているが、評価による処遇格差をつける一方で、肝心の評価にバラつきがあり適正な評価ができていないという企業は54.9%、また評価への異議申し立てしにくいという企業も52.2%となっており、成果主義の運用にはなお課題がある。そのためか、人材マネジメント施策の優先順位では「評価制度の納得性・透明性の向上」が70.0%と最も高い。また、こうした制度を管轄している当の人材マネジメント部門に対して、施策の成果が定期的に評価されているという企業は24.1%にとどまる。

○ポジティブアクションへの取り組みについて (p.15)

ポジティブアクションに取り組んでいる企業は約2 割(19.0%)、5000 人以上規模では約4 割(40.5%)。課長以上の平均女性管理職数は9.8 人、管理職全体に占める比率は2.4% だが、ポジティブアクションに取り組んでいる企業では、同33.9 人、4.3%と高くなっており、ポジティブアクション取り組みの効果が見られる。

○職種別賃金について(p.16)

営業や研究、生産など職種に応じて賃金体系や水準を別立てにする職種別賃金を導入している企業は12.3%で、近い将来導入という企業(3.6%)を含めても15.9%となっている。一方、検討課題という企業は約3 割(32.4%)占める。

○コーポレートガバナンスの改革について(p.17)

社外取締役の起用および執行役員制度導入はいずれも4 割強(各43.9%、44.7%)を占める。また、内部通報制度も約4 割(39.9%)を占めており、5000 人規模では約8 割(78.4%)に達している。役員の退職慰労金についても、約1 割(9.1%)が廃止しており、5000 人以上規模では約2 割(18.9%)となっている。一方、従業員への成果主義が進む中、役員の報酬委員会設置企業は15.0%にとどまっている(5000 人以上では29.7%)。

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