調査・研究メンタル・ヘルス

2002年版 産業人メンタルヘルス白書

~「メンタルヘルスの取り組み」に関するアンケート調査とJMI健康調査から~

2002年8月23日
公益財団法人 日本生産性本部

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I.企業における「心の病」の実態

  1. 1.最近3年間の企業における「心の病」は、約半数の企業が「増加傾向」。
    また今後は社会全体でも増加するとの回答が8割を超える。
  2. 2.最も多い疾患は「うつ病」であると、72.3%の企業が回答。
    3,000人以上の企業では84.6%が回答。
  3. 3.心の病による「一ヶ月以上の休業者」は、58.5%の企業で存在。
  4. 4.相談機能を持つ企業での相談内容については「職場の人間関係に関すること」(47.8%)と「仕事に関すること」(38.6%)が上位に。

II.メンタルヘルスへの取り組み ~その考え方と実状~

  1. 1.明確な基準を持たずに取り組む企業が4割以上。
  2. 2.メンタルヘルスの悪化は、「生産性の低下」に影響との回答が過半数。
  3. 3.安全衛生委員会がメンタルヘルスの取り組みを推進している企業は取り組み範囲・効果の程度が高い。
  4. 4.メンタルヘルス向上のために行っている仕事・職場の環境整備では「仕事の配分の適正化」(58.5%)がトップ。

III.「生産性とメンタルヘルス」の関係は、影響大

  1. 1.「自分の仕事」「職場」「会社」の生産性が向上している人と向上していない人では、身体・精神・性格・職場各領域の健康度の格差が大きい。
  2. 2.「自分の仕事」の生産性は向上しているとの応答率(56.1%)は高いが、向上していないと答えた人の健康度は極めて低い。

IV.「組織健康度」向上に向けて

  1. 1.「生産性」というキーワードは、メンタルヘルスのバロメーターとなる。
  2. 2.個人の健康から組織の健康へ、「組織健康度」を高める取り組みに注力を。

I.企業における「心の病」の実態

  1. 1.約半数(48.9%)の企業において、最近の3年間の心の病(Q24)は「増加傾向」であると回答している。これを規模別にみると、1,000人未満の企業では34.6%、1,000人から2,999人の企業では55.1%、3,000人以上の企業では61.5%に上る。
    また、社会全体において、今後の心の不健康者の増減傾向(Q35)については、全体の84.0%と圧倒的多数が増加すると回答している。今後は、企業だけでなく、社会全体で一層のメンタルヘルスケアの充実が求められると言えよう。行政、医療保健機関、教育機関、企業のそれぞれの特性を活かした対策と、国民一人一人の認識と予防が必要になってくるだろう。
  2. 2.心の病のうち最も多い疾患(Q26)は、「うつ病」(72.3%)が圧倒的であり、「心身症」(9.2%)、「神経症(ノイローゼ)」(8.5%)が少々みられる。3,000人以上の企業では、「うつ病」が84.6%という高さである。つまり、今日、「うつ病」は「大企業従業員症候群」といえるのである。
  3. 3.58.5%の企業には、「心の病」で1ヶ月以上休業している従業員(Q31)が存在する。さらに、3,000人以上の企業では89.7%にも上っている。
  4. 4.1,000人未満の企業では57.0%、1,000人から2,999人の企業では76.4%、3,000人以上の企業では91.1%が何らかの形で相談機能を持っており、相談内容(Q20-SQ2)については、「職場の人間関係に関すること」(47.8%)、「仕事に関すること」(38.6%)と職場・仕事に関することが上位に並び、次いで「精神の健康に関すること」(25.6%)、「身体の健康に関すること」(23.7%)と健康に関することが挙げられている。

II.メンタルヘルスへの取り組み ~その考え方と実状~

  1. 1.メンタルヘルスの取り組みの基準(Q12)では、「基準を置いていない」が44.7%を占めている。2001年6月の名古屋地裁での労災判断を反映させた、「職場の中で最もストレスに弱いと思われる人を基準に置いて取り組んでいる」という選択肢に回答した企業は10.3%に止まり、「労働時間管理を基準にして取り
    組んでいる」という回答は7.8%だった。これらの結果からは、明確な基準を持たないままに、メンタルヘルスに取り組んでいる企業の姿が浮き彫りになったといえよう。
  2. 2.メンタルヘルスが悪化した場合の企業に与える影響(Q15)では、「生産性の低下」(53.9%)が圧倒的であり、次いで「労災・事故等のリスク発生」(27.3%)となっている。規模別にみると、3,000人以上の企業では「生産性の低下」が64.1%に上り、1,000人未満の企業では「労災・事故等のリスク発生」が31.8%となっている。しかし、メンタルヘルスの取り組みの考え方に近いものという問い(Q10)に対しては、「不調者・病人の早期発見・早期治療のため」(41.8%)が一番多く、メンタルヘルスの悪化が「生産性の低下」につながるという認識を持ちながらも、実際には従業員・組織の健康度を上げて生産性向上を目指しているのではなく、不調者・病人探しが中心になっている姿があらわれている。つまり、問題の認識と問題解決手段の認識に、ズレがあると考えられる。
  3. 3.安全衛生委員会がメンタルヘルスの取り組みを推進している企業は、推進していない企業に比べて、取り組み範囲・効果の程度が高く、「心の病に関する情報提供」(68.0%)、「ストレス解消法の紹介」(50.0%)、「心に関する健康診断」(37.5%)など熱心に取り組んでいる。従業員一人当たりの年間メンタルヘルス取り組み費用では1,000円以上かけている企業が多く、費用対効果については、「費用を上回る効果が得られている」(11.7%)と回答している割合が高い。また、指針による4つのケアの中では「ラインによるケア」を優先度として重視している傾向が強い。
  4. 4.メンタルヘルス向上のために行っている仕事・職場の環境整備(Q18)では「仕事の配分の適正化」(58.5%)、「長時間労働、休日出勤の減少」(54.6%)が上位にきている。特に3,000人以上の規模の企業では「仕事の配分の適正化」(69.2%)と「長時間労働、休日出勤の減少」(64.1%)の割合がさらに高い。また業種別にみると、製造業では、「仕事の配分の適正化」(62.4%)、「危険を伴う仕事の機械化」(16.1%)、「作業工程の改善」(30.2%)の割合が高めである。

III.「生産性とメンタルヘルス」の関係は、影響大

  1. 1.JMI健康調査に含まれる「生産性」をキーワードにした以下の3つの質問項目から産業人のメンタルヘルスの状況を分析した。
    Q395.自分の仕事の生産性は向上している
    Q297.職場の生産性は向上している
    Q184.会社の生産性は向上している
    「自分の仕事」の生産性が向上していると答えた人は、心身の健康度は良好であり、物事に対する関わり方もエネルギッシュであり、仕事・職場への満足度も高く、産業人として理想的な姿をあらわしているといえよう。
    これに対し、「自分の仕事」の生産性は向上していないと答えた人は、まったく反対の結果であり、ほとんどの尺度が産業人平均を下回っている。
    「職場」、「会社」の生産性に関する分析においても、同様の特徴が出ている。
    3つの質問すべてについて、向上しているか、向上していないか、にわけて分析をしたところ、以下のような傾向が出ている。
    以上のように、「自分の仕事の生産性は向上している」、「職場の生産性は向上している」、「会社の生産性は向上している」という3つの質問について、「いいえ」と回答をしたグループのメンタルヘルスはきわめて悪く、「はい」と回答しているグループの方が圧倒的に良好であることがわかる。
  2. 2.距離感の最も近い「自分の仕事」については、生産性が向上しているとの応答率は56.1%と3つの質問の中で最も高いが、「自分の生産性」が向上していないと答えた人は、3つの質問に対する回答のなかでは、最も結果が悪いばかりでなく、それひとつの回答だけで、すべての生産性の質問に「いいえ」と答えた人を重ね合わせたのと同じレベルにある。つまり、こういった側面からのアプローチも視野に入れたメンタルヘルス活動が望まれるのである。

IV.組織健康度向上に向けて

  1. 1.「生産性が向上している」と自分の仕事、職場、会社についても感じられることが、メンタルヘルス上のバロメーターとなることが示される。従来からのメンタルヘルス施策の目指す不調者・病人対策をターゲットにした「属人的」なアプローチも否定はしないが、職場、会社といった「場」の健康度を高めるための取り組みにも注力していかなければならない。
  2. 2.「組織健康度」とは、働く人の健康・安全・安心という視点と、組織の生産性向上・組織効率という視点の両立を目指した概念である。メンタルヘルス活動は、単なる「弱者救済のためのやむを得ないコスト」ではない。個人の健康問題にとどまらず、「組織の健康」という考え方に基づいた取り組みを推進することにより、健康な個人とともに健康な組織の実現を目指すことが「組織健康度」の向上につながるのである。

参考資料

*「メンタルヘルスの取り組み」に関するアンケート調査結果

1.企業における「心の病」の実態

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