第15回 働く人の意識調査
今後の景気は悲観的見通しが5割に迫る、テレワーク実施率は16.3%に増加
2024年7月29日
公益財団法人 日本生産性本部
調査研究・提言活動 資料ダウンロード
調査研究や提言、実践活動により生産性向上をめざす公益財団法人日本生産性本部(東京都千代田区、理事長:前田和敬)は7月29日、新型コロナウイルス感染症が組織で働く人の意識に及ぼす影響の継続調査(第15回「働く人の意識調査」)結果を取りまとめ、公表しました。本調査は、組織で働く雇用者を対象に、勤め先への信頼度や雇用・働き方に対する考え方などについて、2020年5月以降、四半期毎(2023年7月調査より6か月に一回へ変更)にアンケートで実施しているものです。15回目となる今回は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に移行してから約1年2か月が経過した一方で、変異株「KP.3」により感染者数が増加傾向にあった7月8日(月)~9日(火)、20歳以上の日本の企業・団体に雇用されている者(雇用者=就業者から自営業者、家族従業者等を除いたもの)1,100名を対象にインターネットを通じて行いました。調査結果から、今後の景気見通しについて「悪くなる」「やや悪くなる」の合計が増加するなど悲観的な見通しが強まっており、また、テレワークの実施率は16.3%と、2023年1月調査以来続いていた減少傾向から一転して増加しました。主な特徴は以下の通りです。
【第15回「働く人の意識調査」主な特徴】(詳細や図表は別添「調査結果レポート」参照)
1. 現況:景気見通しは「悪くなる」「やや悪くなる」が増加、感染不安は減少続く(図2~18)
- 今後の景気見通しについて、2022年4月調査以降「どちらとも言えない」が増加傾向にあったが、今回調査では、前回1月調査から減少して41.7%に。一方、「悪くなる」「やや悪くなる」の合計が前回1月調査の40.4%から46.7%へと増加。特に「悪くなる」は20.4%から24.5%へ増加(図3)。
- 自身が新型コロナに感染する不安について「かなり不安を感じている」が8.8%、「やや不安を感じている」が34.9%と、ともに前回1月調査からさらに減少して調査開始以来最小を更新(図5)。年代別では、50代、60代で「かなり不安を感じている」「やや不安を感じている」の割合の合計が調査開始以来最小となった(図6)。
2. キャリア形成と人材育成:「メンバーシップ型」が微増、自己啓発への意欲減続く(図19~36)
- 希望する働き方について、メンバーシップ型を「同じ勤め先で長く働き、異動や転勤の命令があった場合は受け入れる」、ジョブ型を「仕事内容や勤務条件を優先し、同じ勤め先にはこだわらない」働き方として聞いたところ、ジョブ型が2023年7月調査の67.4%から64.8%に微減した一方、メンバーシップ型が32.6%から35.2%へと微増(図21)。
- 自己啓発を「行っている」は前回1月調査の13.5%から13.4%に、「行っていないが、始めたいと思っている」は24.5%から21.9%に微減。一方で「特に取り組む意向は無い」は64.7%であり、過去最大となった。雇用者の自発的な学習意欲の低下傾向が続いている(図33)。
3. 働き方の変化:テレワーク実施率は増加に転じる、大企業の実施率低下(図37~46)
- テレワークの実施率は過去最低であった前回1月調査の14.8%から微増し、16.3%。2023年1月調査から減少が続いていたが、増加に転じた(図38)。従業員規模別では、1,001名以上の勤め先で減少したが、中・小規模企業の実施率は増加(図39)。年代別では20代、30代が増加(図40)。
- テレワーカーの週当たり出勤日数は、「3日以上」が57.0%と前回1月調査から増加(図41)。
- 自宅での勤務で効率が上がったかについて、「効率が上がった」「やや上がった」の合計は、前回1月調査の70.2%から78.9%へと増加し、過去最高となった(図42)。
【「働く人の意識調査」概要】
公表日 | 調査期間 | タイトル | 調査期間の特徴 |
---|---|---|---|
第1回 2020年5月22日 |
2020年 5月11日~13日 |
労使の堅固な信頼関係の再構築と「新しい生活様式」に向けた意識改革を | 初の緊急事態宣言発出(4月7日)から1か月半 |
第2回 2020年7月21日 |
2020年 7月6日~7日 |
組織の生産性向上につながる労使の信頼関係の再構築を | 緊急事態解除(5月25日)から1か月半 |
第3回 2020年10月16日 |
2020年 10月5日~7日 |
人的資本への積極投資を。テレワークは一定程度定着の兆し | 「GoToトラベル」等積極的経済活動再開から3か月 |
第4回 2021年1月22日 |
2021年 1月12日~13日 |
組織の健康配慮が行動変容を後押し、社会経済システムや組織への信頼強化を | 二度目の緊急事態宣言発出(1月7日)直後 |
第5回 2021年4月22日 |
2021年 4月12日~13日 |
行動や働き方の変容には、宣言・措置よりも労使による積極的取り組みと課題解決を | 一部地域に「まん延防止等重点措置」適用(4月5日)直後 |
第6回 2021年7月16日 |
2021年 7月5~6日 |
ポストコロナの社会・経済変化に懐疑的、コロナ以前に回帰か。「テレワーク疲れ」に注視を | 東京オリンピック・パラリンピック開催まで約3週間 |
第7回 2021年10月21日 |
2021年 10月11日~12日 |
テレワーク実施率、宣言・措置解除後も約2割で推移 | 国による緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の解除後、約10日が経過 |
第8回 2022年1月27日 |
2022年 1月17日~18日 |
テレワーク実施率は過去最低の18.5%、中堅・大企業の実施率低下が影響 | 感染力の強いオミクロン株による新規感染者が急増、まん延防止等重点措置、3県適用中、13都県適用直前 |
第9回 2022年4月22日 |
2022年 4月11日~12日 |
テレワーク実施率は約2割で推移、在宅勤務の満足度は過去最高に | 国によるまん延防止等重点措置の解除後、約3週間が経過し第7波の予兆を懸念 |
第10回 2022年7月25日 |
2022年 7月4日~5日 |
テレワーク実施率は16.2%と過去最低を更新、20代・30代の実施率が大幅減 | 訪日外国人客の受け入れが2年ぶり再開。国際情勢は緊迫。円安や、原材料価格高騰などで消費者物価が上昇 |
第11回 2022年10月28日 |
2022年 10月11日~12日 |
感染不安は薄れる傾向が続く、テレワーク実施率は17.2%と低調に推移 | 原材料価格高騰や円安が進行し、消費者物価は上昇傾向。円が32年ぶりに1ドル=150円を割り込む。政府・日銀は24年ぶりに市場介入 |
第12回 2023年1月27日 |
2023年 1月10日~11日 |
第8波到来で感染不安高まる、テレワーク実施率は16.8%と過去最低に近く | 原材料価格の高騰による光熱費、日用品、食品などの値上げが続く。中国当局が日本人向けのビザ発給を一時停止 |
第13回 2023年8月7日 |
2023年 7月10日~11日 |
「5類」移行で感染不安は減少、テレワークは大企業の実施率低下で過去最低に | 新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に移行してから約2か月が経過 |
第14回 2024年2月7日 |
2024年 1月9日~10日 |
現在の景気は「悪い」が再び増加、テレワーク実施率は14.8%と過去最低を更新 | 新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に移行してから約8か月、令和6年能登半島地震、羽田空港航空機衝突事故から1週間経過 |
第15回 2024年7月29日 |
2024年 7月8日~9日 |
今後の景気は悲観的見通しが5割に迫る、テレワーク実施率は16.3%に増加 | 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが「5類」に移行してから約1年2か月経過した一方、感染者数は増加傾向。歴史的な円安・物価高が続く中で日経平均株価・TOPIXは過去最高値を更新。20年ぶり新紙幣発行 |
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公益財団法人 日本生産性本部 生産性総合研究センター(担当:長田)
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