第17回 働く人の意識調査
今後の景気は悲観的な見通し強まる、「5類」移行後のテレワーク実施率平均は15.6%に
2025年7月30日
公益財団法人 日本生産性本部
調査研究・提言活動 資料ダウンロード
調査研究や提言、実践活動により生産性向上をめざす公益財団法人日本生産性本部(東京都千代田区、理事長:前田和敬)は7月30日、働く人の意識や人材育成・働き方等の現状に関する継続調査(第17回「働く人の意識調査」)の結果を取りまとめ、公表しました。本調査は、組織で働く雇用者を対象に、勤め先への信頼度や雇用・働き方に対する考え方などについて、2020年5月以降、四半期毎(2023年7月調査より6か月毎へ変更)に実施しているものです。17回目となる今回は、トランプ米大統領による関税引き上げや米価をはじめとする物価上昇など経済の先行き不透明感が増している7月7日(月)~8日(火)、20歳以上の日本の企業・団体に雇用されている者(雇用者=就業者から自営業者、家族従業者等を除いたもの)1,100名を対象にインターネットを通じて行いました。調査結果から、今後の景気見通しについて「悪くなる」「やや悪くなる」の合計が増加するなど悲観的な見通しが強まっている傾向が明らかになりました。また、テレワークの実施率は16.8%で2023年1月調査と同水準になり、新型コロナの「5類」移行後の実施率平均は15.6%となりました。主な特徴は以下の通りです。
【第17回「働く人の意識調査」主な特徴】(詳細や図表は別添「調査結果レポート」参照)
1. 現況:景況感に対する不安が増加、今後の景気は悲観的な見通しが強まる(図2~18)
- ・景気が「悪い」「やや悪い」の合計が前回2025年1月調査の59.0%から68.3%へ増加(図2)。
- ・今後の景気見通しは、「悪くなる」「やや悪くなる」の合計が前回1月調査の47.7%から56.5%へ増加。2024年1月調査以降、4回連続で悲観的な見通しが強まっている(図3)。
- ・3か月前(4月頃)と比べて、労働時間、業務量、余暇時間、家事時間について、「増加した」(「どちらかと言えば増加した」「増加した」計)から、「減少した」(「どちらかと言えば減少した」「減少した」計)を引いた割合(D.I.:Diffusion Index)を見ると余暇時間D.I.のみ2024年7月調査の-3.6から-6.9に減少(図9)。
2. キャリア形成と人材育成:「ジョブ型」希望が微増、自己啓発への意欲は微減(図19~36)
- ・希望する働き方について、メンバーシップ型を「同じ勤め先で長く働き、異動や転勤の命令があった場合は受け入れる」、ジョブ型を「仕事内容や勤務条件を優先し、同じ勤め先にはこだわらない」働き方として聞いたところ、ジョブ型が微増した一方、メンバーシップ型が微減(図21)。
- ・自己啓発に前向きな割合(「行っている」「行っていないが、始めたいと思っている」計)は37.1%から36.4%に微減。一方で「特に取り組む意向は無い」との回答は63.6%で、過去最多だった2024年7月調査(64.7%)に次ぐ水準となった(図33)。
3. 働き方の変化:テレワーク実施率は微増、「5類」移行後の実施率平均は15.6%(図37~48)
- ・テレワークの実施率は過去最低の前回2025年1月調査の14.6%から16.8%に微増。なお、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に移行した2023年5月以降(2023年7月調査以降)の実施率平均は15.6%(図38)。
- ・従業員別にみると、1,001名以上では前回調査の25.6%から31.8%に、101~1,000名は15.6%から20.1%に微増。一方で、100名以下は9.7%から9.3%に微減(図39)。
- ・育児休業等を取得する同僚の業務を代替することになった場合、勤め先にどのような支援を希望するか聞いたところ、「人員の追加よりも、手当等の金銭的な支援をしてほしい」が71.5%となり、「金銭的な支援よりも、人員を追加してほしい」(28.5%)の2倍以上となった(図47)。
【「働く人の意識調査」概要】
公表日 | 調査期間 | タイトル | 調査期間の特徴 |
---|---|---|---|
第1回 2020年5月22日 |
2020年 5月11日~13日 |
労使の堅固な信頼関係の再構築と「新しい生活様式」に向けた意識改革を | 初の緊急事態宣言発出(4月7日)から1か月半 |
第2回 2020年7月21日 |
2020年 7月6日~7日 |
組織の生産性向上につながる労使の信頼関係の再構築を | 緊急事態解除(5月25日)から1か月半 |
第3回 2020年10月16日 |
2020年 10月5日~7日 |
人的資本への積極投資を。テレワークは一定程度定着の兆し | 「GoToトラベル」等積極的経済活動再開から3か月 |
第4回 2021年1月22日 |
2021年 1月12日~13日 |
組織の健康配慮が行動変容を後押し、社会経済システムや組織への信頼強化を | 二度目の緊急事態宣言発出(1月7日)直後 |
第5回 2021年4月22日 |
2021年 4月12日~13日 |
行動や働き方の変容には、宣言・措置よりも労使による積極的取り組みと課題解決を | 一部地域に「まん延防止等重点措置」適用(4月5日)直後 |
第6回 2021年7月16日 |
2021年 7月5~6日 |
ポストコロナの社会・経済変化に懐疑的、コロナ以前に回帰か。「テレワーク疲れ」に注視を | 東京オリンピック・パラリンピック開催まで約3週間 |
第7回 2021年10月21日 |
2021年 10月11日~12日 |
テレワーク実施率、宣言・措置解除後も約2割で推移 | 国による緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の解除後、約10日が経過 |
第8回 2022年1月27日 |
2022年 1月17日~18日 |
テレワーク実施率は過去最低の18.5%、中堅・大企業の実施率低下が影響 | 感染力の強いオミクロン株による新規感染者が急増、まん延防止等重点措置、3県適用中、13都県適用直前 |
第9回 2022年4月22日 |
2022年 4月11日~12日 |
テレワーク実施率は約2割で推移、在宅勤務の満足度は過去最高に | 国によるまん延防止等重点措置の解除後、約3週間が経過し第7波の予兆を懸念 |
第10回 2022年7月25日 |
2022年 7月4日~5日 |
テレワーク実施率は16.2%と過去最低を更新、20代・30代の実施率が大幅減 | 訪日外国人客の受け入れが2年ぶり再開。国際情勢は緊迫。円安や、原材料価格高騰などで消費者物価が上昇 |
第11回 2022年10月28日 |
2022年 10月11日~12日 |
感染不安は薄れる傾向が続く、テレワーク実施率は17.2%と低調に推移 | 原材料価格高騰や円安が進行し、消費者物価は上昇傾向。円が32年ぶりに1ドル=150円を割り込む。政府・日銀は24年ぶりに市場介入 |
第12回 2023年1月27日 |
2023年 1月10日~11日 |
第8波到来で感染不安高まる、テレワーク実施率は16.8%と過去最低に近く | 原材料価格の高騰による光熱費、日用品、食品などの値上げが続く。中国当局が日本人向けのビザ発給を一時停止 |
第13回 2023年8月7日 |
2023年 7月10日~11日 |
「5類」移行で感染不安は減少、テレワークは大企業の実施率低下で過去最低に | 新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に移行してから約2か月が経過 |
第14回 2024年2月7日 |
2024年 1月9日~10日 |
現在の景気は「悪い」が再び増加、テレワーク実施率は14.8%と過去最低を更新 | 令和6年能登半島地震、羽田空港航空機衝突事故から1週間経過 |
第15回 2024年7月29日 |
2024年 7月8日~9日 |
今後の景気は悲観的見通しが5割に迫る、テレワーク実施率は16.3%に増加 | 歴史的な円安・物価高が続く中で日経平均株価・TOPIXは過去最高値を更新。20年ぶり新紙幣発行 |
第16回 2025年1月30日 |
2025年 1月6日~7日 |
テレワーク実施率は14.6%で過去最低を更新、自宅勤務の実施希望は4割以下 | 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが「5類」に移行してから約1年8か月経過。石破内閣発足から約3か月経過 |
第17回 2025年7月30日 |
2025年 7月7日~8日 |
今後の景気は悲観的な見通し強まる、「5類」移行後のテレワーク実施率平均は15.6%に | 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが「5類」に移行してから約2年2か月経過。米国、日本向け関税25%への引上げ方針を表明 |
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公益財団法人 日本生産性本部 生産性研究センター(担当:長田)
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