メンタルヘルス用語集

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4つのケア

労働省が平成12(2000)年に発表した「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針について」(「労働者の心の健康の保持増進のための指針」平成27(2015)年改正)の中でメンタルヘルスケアを推進するために4つのケアが重要であることが指摘されました。「4つのケア」とは労働者自身がストレスに気づき対処する「セルフケア」、管理監督者が職場環境等の改善や個別の指導・相談を行う「ラインケア」、組織内の健康管理担当者による「事業場内産業保健スタッフによるケア」、組織外の専門家や相談機関を活用する「事業場外資源によるケア」を指しています。指針のなかでは、この4つのメンタルヘルスケアが継続的かつ計画的に行われるようにすることが重要であると、明示されています。

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DSM-5

DSMの正式名称は"Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders"で、頭文字をとって「DSM」と呼ばれています。米国精神医学会(APA)が発行している「精神疾患の診断・統計マニュアル」のことで、精神疾患の治療者や精神医学の研究者に向けて、明確な診断基準をもとに、客観的な判断を下すことを可能にするため、精神疾患の基本的な定義を記したものです。1952年にDSM-Ⅰ(第1版)が出版された後、何度か改訂され、DSM-5は2013年(日本語版は2014年)に公開されました。

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EAP(Employee Assistance Program)

社員の仕事上のパフォーマンスに影響を与える個人的問題(健康・結婚・家族、経済的、アルコール、ドラッグ、法的、心理的、ストレス等)を見つけ、解決するのを援助することを目的とした従業員支援プログラムです。もともとは1940年代にアメリカの先進企業がアルコールや薬物依存対策として導入したのが始まりで、1997年には、アメリカの経済誌「フォーチュン」が選んだ500社のうち約95%がEAPサービスを受けているとされています。
EAPは社内にスタッフが常駐して従業員の相談を受けるタイプと社外の専門機関がクライアント企業から業務委託を受けるアウトソーシングタイプの2つがあります。

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HWO(Healthy Work Organization=健康な組織)

米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は「健康な組織」(Healthy Work Organization:HWO)を「組織の文化や風土、実際の経営行動が従業員の健康と安全ばかりでなく、組織効率も実現する組織」と定義しています。ここには、従業員の健康と組織の業績は相反するものではなく、両立可能であり、相互作用を通じて互いに強化することができるという視点が導入されています。従業員の健康・安全と組織効率を包含する「健康な組織」が、産業メンタルヘルスの新たな目標として注目されています。

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PTSD(心的外傷後ストレス障害)

"Posttraumatic stress disorder"の略。自分や他人が事故や暴行、脅迫、災害、戦争などによって死に直面するような耐え難い外傷体験によって強い恐怖を感じた後、その出来事を思い出して恐怖にさいなまれたり(再体験)、その出来事と似通った状況を避けたり(回避)、不眠やイライラなどの症状に襲われたりする状態(覚醒亢進)を指します。PTSDの症状の多くは外傷体験から3ヶ月以内に始まり症状が1ヶ月以上、長い場合は1年以上続きます。4週間以内でおさまるものは「急性ストレス障害」といいます。

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SOGIハラスメント

SOGI(ソジ)とは、Sexual Orientation and Gender Identityの頭文字のことで、性的指向(好きになる性)/性自認(自分の心の性)のことをいいます。この言葉は「国や雇用者は、相手の属性(SOGI)にかかわらず、平等に扱わねばならない」という文脈で使われることが多く、2006年のジョグジャカルタ宣言以降、国連機関で広く用いられており、性的マイノリティだけではなくすべての人に関わる言葉です。なお、SOGIは、LGBTを包括した言葉です。
そして、SOGIに関して差別や嫌がらせを受けることを、SOGIハラスメント(SOGIハラ)といいます。具体的には、性的指向/性自認についての差別的な呼称や嘲笑、いじめ・無視・暴力、望まない性別での生活の強要、学校や職場での不当な扱い、誰かのSOGIについて許可なく公表する(アウティング)などの事例があります。

  • SO:Sexual Orientation(性的志向)

    どのような性に恋愛感情や性的感情を抱くのか、といった要素のこと。例えば、男性を好きになる方は性的指向が男性に向いていると考えることができます。

  • GI:Gender Identity(性自認)

    自らが自認している性のことです。例えば、自分が男性だと思っている方は性自認が男性、自分のことを女性だと思っている方は性自認が女性ということがいえます。

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アクセプタンス&コミットメント・セラピー

第3世代の認知行動療法の一つです。Acceptance & Commitment Therapyの頭文字から、通称ACT(アクト)と呼ばれています。心理的柔軟性を高め、ネガティブな思考や感情に呑み込まれることなく、その人が大切だと思うことを選択できるよう後押しします。ACTでは、エクササイズを通じて、オープンになる スキル(心を開いて、そのまま体験するスキル)、「今この瞬間」に気づくスキル、大切だと思うことにコミットするスキルを身に付けます。社会が大きく変化し、既存の方法論ではない新たなアクションやチャレンジが求められる昨今、働く人を対象としたACTや心理的柔軟性への注目が高まっています。

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アサーショントレーニング

アサーショントレーニングとは、自己否定的な性格のために自己表現がうまくできない人や逆に自己主張が強すぎて相手との関係に問題を起こしてしまう言動をする人が、自己表現、対人関係改善の能力を向上させ、自分の気持ちも相手の気持ちも尊重した上で自分の気持ちや考えを適切に表現できるようにするものです。ビジネスシーンにおけるコミュニケーションを活性化させる手法としても、注目されています。

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アブセンティーズム/プレゼンティーズム

健康問題がもたらす損失として、心身の体調不良が原因による欠勤、休職等業務を行えない状態を指す「アブセンティーズム(absenteeism)」、出勤はしているが健康上の問題でパフォーマンスが上がらない状態のことを指す「プレゼンティーズム(presenteeism)」があります。特に、プレゼンティーズムでは、パフォーマンスが上がらない要因として、メンタルヘルスの観点、その背景にある職場環境からの考察もなされるようになりました。
そして、健康経営の文脈においても、職場やマネジメントのあり方、その延長線でよりポジティブな要素が重視されるようになってきました。例えば、健康経営への企業の取り組みを評価する経済産業省実施の「健康経営度調査」において、アブセンティーズム、プレゼンティーズムが成果指標の一つとして規定されています。

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安全配慮義務

平成20(2008)年3月1日に「労働契約法」が施行されており、その第5条に(労働者の安全への配慮)が明文化されました。

労働契約法 第5条(労働者の安全への配慮)

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働ができるよう、必要な配慮をするものとする。(平成20(2008)年3月1日施行)


従来、判例として形成されてきた「安全配慮義務」が使用者責任として条文に明記されました。「使用者責任」とは、すなわち、「上司=管理職が負う責任」ということです。なお、「使用者責任」の実行者は、実際には「管理監督者」となっています。 「メンタルヘルス=心の健康」については、条文の中に記載のある「生命、身体等の安全を確保…」の、「等」に含まれます 。また、「必要な配慮」とは、各事業所や職場、勤務形態や働き方などに応じて、対応することが求められています。

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一次予防・二次予防・三次予防

健康問題が発生した場合に行われる専門的治療、社会適応(リハビリテーション)、再発防止策の対処を三次予防、病気を早期に発見し対処することで問題を小さいうちに改善しようとする対処法を二次予防と呼びます。これに対してそもそも健康問題を発生させないようにしていこうとする考え方を一次予防と呼び、個人の健康確保という面からも費用面からも効果的であるとの考え方が有力になっています。健康増進(Health Promotion)は一次予防の中に位置づけられます。
なお、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、メンタルヘルス不調を未然に防止する「一次予防」、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う「二次予防」及びメンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰にむけた支援等を行う「三次予防」が円滑に行われる必要がある、と明示されています。

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ウェルビーイング

ウェルビーイング(well-being)」とは、世界保健機関(WHO)の憲章による「健康の定義」において、「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあること」(日本WHO協会訳)と使われたことで広まった概念です。直訳すると「よく『ある』」という意味で、心身が単に健康と言うだけでなく、「幸福」や「いきいき」という状況をも含む概念です。
「ウェルビーイング経営」の取り組みでは、健康・幸福・いきいきとした「従業員のウェルビーイング」の実現を通して(もしくは「従業員のウェルビーイング」を実現する要因として)、コレクティブなウェルビーイング、すなわち「職場のウェルビーイング」、及び「組織(企業)のウェルビーイング」な状態を実現することで、組織の存在意義(パーパス)を達成し続けていくことを目的とすることが求められます。

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うつ病(大うつ病性障害)

日本でも広く用いられている、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)では、2週間以上にわたってほとんど一日中続く、①抑うつ気分(おっくうさや落ち込み、子どもや青年では易怒的な気分 を含む)、②興味または喜びの喪失(以前は楽しめていたものが一切楽しめなくなる)、③体重の減少・増加または食欲の減退・増加、④不眠もしくは過眠、⑤精神運動性焦燥または制止(落ち着きのなさまたは動作の遅さ)、⑥疲労感または気力の低下、⑦無価値感や過剰な罪責感、⑧思考力や集中力の減退または決断困難、⑨死についての反復思考または自殺念慮や自殺企図が挙げられています。以上の9項目のうち、①または②を含めて計5項目以上が当てはまること等が、診断基準として定められています 。うつ病は誰がかかってもおかしくない「こころの風邪」です。うつ病の再発率(再々発率)は高く、早期発見・早期治療が何よりも大切です。治療の選択肢には、認知行動療法をはじめとする心理療法(カウンセリング)や薬物療法などがあります。

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仮面うつ病

うつ病は精神疾患ですが、身体にも症状が現れる場合があります。「仮面うつ病」は、気分の落ち込みなどの精神的な症状より頭痛や胃痛といった身体の症状の方が目立つうつ病のことを指します。以前は身体疾患とされ、精神疾患とは別に扱われていましたが、最近ではうつ病の一つとして扱われています。

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健康いきいき職場づくり

「健康いきいき職場づくり」は、「企業・組織と従業員がともに健康で、いきいきと活動し、お互いに成長する、理想的なあり方を実現するための取り組み」を指します。この取り組みの最大の意義は、「健康」を幅広く捉え、職場環境やマネジメント、働き方の充実が企業や働く人の成長に資すること、そして、取り組みに健康管理部門だけではなく、人事、労働組合等多様なステークホルダーを交えつつ、経営として関与することが有意義であることを、社会や産業現場に浸透させるきっかけをもたらした点にあると考えられます。2012年に日本型ポジティブメンタルヘルスの標準理論として「働く人の健康」「働く人のいきいき」「職場の一体感」の3つを重視する形で、「健康いきいき職場づくり」が産学において提唱され、その推進のためのプラットフォームとして「健康いきいき職場づくりフォーラム」が設立されました。

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公認心理師

公認心理師は、公認心理師法(2015年成立・2017年施行)に基づく、心理職の国家資格です。4年制大学および大学院において定められた科目を履修した者、もしくは4年制大学において定められた科目を履修し、定められた施設で一定期間以上の実務経験を積んだ者に、受験資格が与えられます。資格取得にあたっては、筆記試験が行われます。公認心理師の業務は、①心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること、②心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと、③心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと、④心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うことです。
公認心理師は、労働安全衛生規則第52条の10第1項第3号の規定に基づき厚生労働大臣が定める研修を修了することで、ストレスチェックの実施者となることができます。

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コーピング

ストレスを回避する行動を含めて、ストレスへの対処法のことをコーピングといいます。人によって何がストレスの原因になるかは様々であり、同様にコーピングのあり方も様々です。たとえば、問題解決のために何かを実行する、計画する、別の活動を抑制する、時期がくるまで待つ、人の援助を求める、積極的な再解釈を行うなどの前向きなコーピングがある反面、感情の発散、否認、酒などもコーピングに含まれます。自分でストレスコーピングをより健康的なものにしていく方法として、自律訓練法があります。

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産業医

産業医は、事業場における労働者の健康の保持・増進に努め、職場環境管理を行い、労働と健康の両立を図る医師です。常時50人以上の労働者が働く事業場では、嘱託産業医を選任することが義務付けられています。一般的には、事業場の近隣の開業医に委嘱されることが多いです。1,000人以上の事業場、または有害業務のある500人以上の事業場では1人、3,000人以上の事業場では2人の専属産業医を選任しなければなりません。

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産業カウンセラー

産業カウンセラーは、一般社団法人産業カウンセラー協会が認定する資格で、初級・中級・上級があります。労働者に対するカウンセリングを行いますが、事業場の心の健康づくり対策に経験のある場合は、事業場に対しても教育研修、カウンセリングのほか、情報提供、助言等のコンサルテーションサービスを行っている場合もあります。

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産業保健総合支援センター

産業保健総合支援センターは、全国47都道府県に設置されており、労働者健康安全機構が運営しています。産業医、衛生管理者、産業看護職、人事労務担当者等の産業保健関係者に、メンタルヘルス対策をはじめとする産業保健に関する相談、研修、情報提供等の支援を行っています。また、事業主、労働者を対象とした啓発活動も行っています。

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仕事の要求度-資源モデル

仕事の要求度━資源モデル

従来は、仕事の要求度(仕事のストレス要因)を低減させることでストレス反応(バーン・アウト =燃え尽き)への対策を取るというアプローチがなされてきました。それに対して、バーン・アウトを予防するだけではなく、ワーク・エンゲイジメントを高める職場づくりのヒントとして、「仕事の要求度-資源モデル」(Schaufeli & Bakker, 2014)の考え方があります(図)。仕事の要求度―資源モデルは、健康障害プロセスと動機づけプロセスの2つのプロセスから構成されます。

仕事の資源とは、仕事の裁量権、上司や同僚からの支援、仕事のやりがい、組織との信頼関係など職場や仕事が有する強みを指し、個人の資源とは、自己効力感やレジリエンスなど個人が有する強みを指します。バーン・アウトを予防し、ワーク・エンゲイジメントを高める職場をつくるには、仕事の要求度を低減させるだけでは十分ではありません。仕事の資源と個人の資源を高める視点も、併せて重要となります。仕事の要求度を低減させると同時に、作業・課題、部署、事業場の各レベルの仕事の資源を向上させることが、ストレス反応の低減にもワーク・エンゲイジメントの向上にも効果を持ち、最終的に従業員のウェルビーイングにも寄与することが明らかになりました。
これにより、ワーク・エンゲイジメント向上のような、よりポジティブなアプローチが職場のメンタルヘルス対策の中でも有効なものとして位置付けられるようになり、職場のメンタルヘルスの目標を、疾病対策にとどまらず従業員のやる気や活気の促進にまで拡大することにつながりました。

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持続性抑うつ障害(気分変調症)

抑うつ気分がほとんど一日中、少なくとも2年以上続き、①食欲の減退または増加、②不眠または過眠、③気力の減退または疲労感、④自尊心の低下、⑤集中力の低下または決断困難、⑥絶望感のうち、2項目以上が当てはまること等が診断基準になっています(DSM-5)。うつ病(大うつ病性障害)の診断基準と比較すると、重症度がやや低く感じられる項目が挙げられていますが、少なくとも2年間という非常に長期にわたって症状が続いているという特徴があります。

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職場環境配慮義務

職場環境配慮義務とは、安全配慮義務のなかに含まれる義務であり、労働者に対して快適な職場環境を提供するよう配慮する義務のことを指します。安全配慮義務とは、従業員が安全に健康で安心して働ける職場環境を提供するために企業が配慮する義務のことです(労働契約法第5条)。働くうえで、生命や身体の健康を脅かされる危険がなく、物理的な作業環境はもちろんのこと、自身の利用する機器や設備の安全や、さらにメンタルヘルスについても不調に陥るリスクを排除していくことが求められています。加えて、パワーハラスメントセクシュアルハラスメントなどに代表される、さまざまなハラスメントが起こらない環境を維持することも重要です。ハラスメントの行為者のみならず、そのような行為を放置していた企業も、職場環境配慮義務に違反したとして損害賠償責任が認められる判例も少なくありません。

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ジョブ・クラフティング

ジョブ・クラフティング(Job Crafting)とは、働く人たち一人ひとりが主体的に仕事や職場の人間関係に変化を加えることを通じて、与えられた職務を素材に、自らの仕事の経験を創り上げていくことを指します。「仕事のやり方」「人間関係」「仕事の考え方」に自ら働きかける工夫を加えることにより、「ありふれたタスク」を「かけがえのない仕事」へと、仕事の意義やコントロール感を高めていくプロセスを学ぶことで、日常業務に取り入れていくことをめざします。このプロセスを通じて、「社員自身による仕事の再設計」により、働き方と業務の質を高める手法です。
コロナ禍に伴い、在宅勤務やオンライン上でのコミュニケーションに代表されるように、これまでの「中央」「集権」「階層」とは異なる、「自律」「分散」志向の働き方へ移行が進みました。このような変化を受け、ジョブ・クラフティングが注目を集めています。

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神経症・ノイローゼ

ノイローゼは心の病気一般を指す言葉で病名ではありません。ノイローゼとはもともと臓器の故障がないのに機能に異常がある場合の症状のことをさしていましたが、後にフロイトが「神経症」という意味で使うようになり、「心理的な原因によって起きる心の病気」という意味になっていきました。神経症には理由がないのに急にドキドキしたり冷や汗が出たりする「不安神経症(不安性障害)」、自分が不潔な気がしていつも手を洗っていなければ気がすまない「強迫神経症(強迫性障害)」などさまざまなものがあります。「神経症」という表現は精神疾患の生理的メカニズムが解明されるに従って用いられなくなり、アメリカ精神医学会の1980年の分類からは除外されていますが、臨床では現在も使われています。

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神経伝達物質・セロトニン

神経細胞同士のすきま(シナプス間隙)において脳からの信号(情報)の橋渡しをする神経伝達物質には人間の感情や気分に働きかける性質をもつものがあり、うつ病に関係していると考えられています。神経伝達物質はアセチルコリンやノルアドレナリンなどいくつかありますが、その一つであるセロトニンの不足がうつに大きく関係しているという説が有力になっています。セロトニンが不足すると抑うつ症状や不安が強くなり、睡眠障害が出やすくなるといわれています。

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心身症

心理的なストレスが関与している身体疾患を総称して「心身症」といいます。日本心身医学会の診療指針によると、「身体疾患の中でその発症や経過に心理・社会的因子が密接に関連し、器質的ないし機能的障害が認められる病態を言う。ただし、神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する」とされています。つまり、身体の病気の中で心理的あるいは社会的な要因が大きく関わっている病気で、緊張性頭痛・片頭痛、過敏性腸症候群、アトピー性皮膚炎、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、消化性(胃・十二指腸)潰瘍、気管支ぜんそく、本態性高血圧症、円形脱毛症などが代表的なものとして挙げられます。

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心理的安全性

Google社は、2012年から「高い成果を生み出すチーム」が共通して持つ成功要因を探し出すことを目的に始めた「プロジェクト・アリストテレス」(生産性改革プロジェクトの総称)の調査結果で、「生産性が高いチームは心理的安全性(Psychological Safety)が高い」ことを発表し、この発表を機に心理的安全性に注目が集まりました。心理的安全性とは1965年にエドガー・ヘンリー・シャイン(Edgar Henry Schein)が組織科学の分野に取り入れた概念で、「従業員が職場での発言や正直な行動によって、地位や仕事、印象などに悪影響が及ぶことを恐れずに、職場でありのままでいられると感じる度合い」と定義されます。また、エイミー・エドモンドソン(Amy Edmondson)は、心理的安全性が高い状態について、「チームにおいて『他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰をあたえたりしない』という確信を持っている状態。対人関係にリスクのある行動をとったとしても、メンバーが互いに安心感を共有できている状態」と規定しました。
チームにおいて失敗を恐れず、ためらいなく発言できる雰囲気があることは、メンバー同士の能動的な学習につながるだけでなく、複数の意見がぶつかり合うことで新しい着想につながり、創造的なアイディアが生まれるきっかけにもなります。特に我が国では、自分の発言が同僚からどのように評価されるか過度に気にしたり、批判されたりすることを恐れる傾向があることから、学術的研究のみならず、企業の現場においても「心理的安全性」に大きな注目が集まっています。

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ストレスとストレッサー

カナダの生理学者のハンス・セリエが1935年に唱えた学説で、ストレスとは刺激に反応して歪んだ状態を指し、刺激そのものをストレッサーといいます。ストレッサーは物理的ストレッサー(暑さや寒さ、騒音、悪臭など)、化学的ストレッサー(酸素欠乏、栄養不足、薬物など)、生物学的ストレッサー(病原菌の侵入など)、社会・心理的ストレッサー(職場や家庭の人間関係から生じる葛藤や不安など)の4つに分類されます。適度なストレスは日常生活を活性化させ人生を豊かにするものですが、過度なストレスは心身に悪影響を及ぼすとされています。

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ストレスチェック制度

労働安全衛生法改正により、2015年12月よりストレスチェックの実施が義務付けられました。主なポイントは、以下の通りです。

  • 従業員50人以上の組織ではストレスチェックの実施が義務付けられました。
  • ストレスチェックは仕事のストレス要因、心身のストレス反応、周囲のサポートの3領域を含んでいる必要があります。
  • ストレスチェックは実施者(医師、保健師など)が従業員に対して実施し、その結果を従業員に通知します。実施者が特に面接指導が必要と認めた高ストレス者に対しては、その旨を通知します。
  • ストレスチェックで面接指導が必要と通知された高ストレス者のうち、希望する者は、原則として、事業者に申し出た後、医師面接を受け、指導などを受けます。
  • ストレスチェック、面接などの実施状況を労働基準監督署に報告することが義務付けられました。

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精神保健福祉士

精神保健福祉士は、精神障害者の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行っています。精神保健福祉士は、労働安全衛生規則第52条の10第1項第3号の規定に基づき厚生労働大臣が定める研修を修了することで、ストレスチェックの実施者となることができます。

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セクシュアルハラスメント

セクシュアルハラスメント(Sexual Harassment、セクハラ)は、性的な嫌がらせのことを意味します。「環境型セクシュアルハラスメント」と「対価型セクシュアルハラスメント」の2つに分類されます。環境型セクシュアルハラスメントは、労働者の意に反する性的な言動により就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等労働者が就業する上で見過ごせない程度の支障が生じること、例えば、卑猥な言葉を投げかけるなど嫌がらせ行為を繰り返し、環境を悪化させる行為などを意味します。対価型セクシュアルハラスメントは、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、その労働者が解雇・降格・減給等の不利益を受けること、例えば、立場の弱い者に対して、昇進や昇格などの利益を与える代わりに、デートを強要する、あるいは、相手が拒否を示したことによって、降格・解雇、減給などの不利益を与えるなど被害者の好まないことを受け入れさせる行為を指します。なお、行為者が自己の行為をセクシュアルハラスメントに当たるものと意識していないこともあり、その認識の相違によって人間関係の悪化し、パワーハラスメントに転じる例もみられます。

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双極性障害(双極Ⅰ型障害・双極Ⅱ型障害)

たいていの人は、「躁」(気分が高揚し過活動になっている状態)と「うつ」(抑うつ状態)の波があります。この気分の変動が正常な枠の中におさまらず、その振幅が非常に大きく、躁とうつを交互に繰り返す(もしくは一部重なりあって同時に存在する)疾患を「双極性障害」と呼びます。
双極性障害には、双極Ⅰ型障害と双極Ⅱ型障害があります。どちらも躁状態とうつ状態を繰り返しますが、双極Ⅰ型障害は、双極Ⅱ型障害と比較して、躁のエピソード(病相)のときに「社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こしていること」が診断基準に定められており(DSM-5)、症状はより深刻であると言えます。
うつ(落ち込み)のエピソード(病相)のときには、やりたいことを遂行できなくなり、活動量が低下していくため、自分自身の変化に比較的気づきやすい面があります。一方で、躁のエピソード(病相)のときには、やりたいことを際限なく遂行できるようになり活動量が増えるため、「調子が良い」と判断してしまいがちです。これらの特徴から、双極性障害の診断が遅れる場合があります。気分の「波」や「変動」に注意しましょう。

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第3世代の認知行動療法

認知行動療法のうち、「マインドフルネス(“今この瞬間”に気づく)」と「アクセプタンス(そのままにしておく)」を取り入れて発展したものを、第3世代の認知行動療法と呼びます。第1世代の認知行動療法(行動療法)、第2世代の認知行動療法に次ぐ流れとして、第3世代の認知行動療法と呼ばれています。第1世代・第2世代と比較して、第3世代の認知行動療法では、認知の「内容」よりも「機能」に注目し、「思考(頭に浮かんでいるもの)」と「現実(目の前の事実)」の距離をとることがねらいです。具体的には、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)、マインドフルネス認知療法(MBCT)、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)、メタ認知療法(MCT)などが含まれます。

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第14次労働災害防止計画

厚生労働省では、労働安全衛生法の規定に基づき、国、事業者、労働者をはじめとする関係者が一体となって総合的かつ計画的に労働者の安全と健康を守り、労働災害防止対策に取り組むことができるよう「第 14 次労働災害防止計画」を策定し、2023 年 4 月から 2028 年 3 月までの 5 年間に実施すべき主な取り組みを示しています。6 つの重点施策ごとに目標を設定して取り組みを進めることとしており、重点施策の一つである「労働者の健康確保対策の推進」のなかに、メンタルヘルス対策が含まれており、以下を目標としています。

アウトプット指標(2027年まで、一部2025年まで)

  • メンタルヘルス対策に取り組む事業場を 80%以上とする
  • 50人未満の小規模事業場のストレスチェック実施の割合を50%以上
  • 必要な産業保健サービスを提供している事業場を80%以上とする
  • 企業の年次有給休暇の取得率を70%以上(2025年まで)
  • 勤務間インターバル制度を導入している企業の割合を15%以上(2025年まで)

アウトカム指標

  • 自分の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスがあるとする労働者の割合を50%未満(2027年度まで)
  • 週労働時間40時間以上である雇用者のうち、週労働時間60時間の雇用者を5%以下(2025年まで)

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対人関係療法

アメリカの精神科医であるジェラルド・クラーマンとマーナ・ワイスマン夫妻は、人間関係が心身の状態に大きな影響を与えるという点に着目し、人間関係の問題を整理する「対人関係療法」を提唱しました。大切な人を失う喪失体験やお互いに分かり合えていると信じていた人とのコミュニケーション・ギャップ、結婚や出産、異動・昇進といった役割の変化、人間関係の欠如などがうつ病のきっかけになることから、対人関係の問題を整理することにより、うつ病の治療をめざすものです。

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タイプA

1950年代後半にフリードマンとローゼンマンは冠状動脈疾患と虚血性疾患の主因はいろいろな情動反応(いかり、よろこび、おそれ、かなしみ)の強さと関連があると考え、①性急で物事をできるだけ速く成し遂げようとし、それが妨げられると強い怒りを示す、②仕事への意欲が強い、③他人に対し非寛容で敵意を示しやすい、などの行動特徴を「攻撃的(aggressive)」であるということで「タイプA」と名づけ、タイプA行動パターンを示す人が冠状動脈性心臓病の発病に強く関与していると結論づけました。その後もタイプA行動パターンと冠状動脈性心臓病が関連することを示す多くの研究が発表されています。

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地域産業保健センター

地域産業保健センターは、各都道府県に設置されている産業保健総合支援センターの地域窓口を指し、地域産業保健センターは通称です。産業医等の選任義務のない50人未満の小規模事業場の労働者および事業者に対する産業保健の直接的支援として、メンタルヘルス対策、作業環境管理、作業管理等状況に即した労働衛生管理の総合的な助言・指導などの相談への対応、健康診断の事後対応、面接指導等を実施しています。

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統合失調症

スイスの精神科医ブロイラーは1911年に感情や思考と行動との間の連関の喪失を捉えて統合失調症という病名を提唱しました。統合失調症の特徴的な症状は、①妄想、②幻覚、③まとまりを欠く会話、④まとまりを欠く興奮した行動、⑤陰性症状(喜怒哀楽のなさ・考える内容の乏しさ・意欲の少なさなど)の5つです。こうした症状とともに社会生活を送ることが難しくなってくると、統合失調症と診断されます。統合失調症の生涯有病率は1%程度といわれています。若いうちに発病することが多く、職について数年のうちに発症する人が多いようです。

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認知行動療法

認知行動療法とは、認知的アプローチ(認知療法の流れ)と行動的アプローチ(行動療法の流れ)を汲み込んで発展した心理療法です。生活場面における具体的な問題に焦点を当て、問題解決を図ります。なかでも、問題が生じた原因ではなく、現在の問題を維持・増悪している悪循環に注目するという特徴があります。考え方や行動のレパートリーを広げ、その人自身のセルフコントロール力を高めていくことが目的となります。

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ハイリスク・アプローチ/ポピュレーション・アプローチ

疾患を発生しやすい高いリスクを持った人を対象に絞り込んで対処していく方法がハイリスク・アプローチです。しかし、ハイリスクではない大多数の人々であっても全くリスクがないわけではなく、その背後により多くの潜在的なリスクを抱えた人たちが存在すると考えられます。そこで、対象を一部に限定せずに集団全体へアプローチし、全体としてリスクを下げていこうという考え方がポピュレーション・アプローチです。

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発達障害

発達障害では、生まれ持った特性により、日常生活におけるコミュニケーションや対人関係、業務の遂行などに困難さがあります。発達障害には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害/限局性学習症(LD/SLD)の大きく3つのタイプがあり、複数の種類を併せ持つ人もいます。「発達障害であるか、そうでないか」とはっきり線引きできるものではなく、誰でも大なり小なり特性を持っているものです。診断にあたっては、子供の頃の様子や苦手なこと、うまくいかないことについて聞き取り、それらの課題が障害特性によるものと判断できるかを確認します。
働く場面では、例えば、「納品したら在庫をチェックして」「欠品の報告をして、許可を得てから発注して」など同時に複数の指示を受けると順序立てて整理できず、「飲み込みが悪い」「ボーッとしている」などの注意を受けたりします。あるいは、丁寧な清掃をしているものの、上司から「ここは適当に」「要領良く片付けろ」などと曖昧に指示されると、どの程度か分からず、上司に細かく聞くので、上司は疲れてしまう、といったことも起きたりします。新しい環境への適応が苦手な場合も多く、仕事がうまくいかないことで、うつ病などの二次障害が引き起こされるケースもあります。
誰しも苦手なことと得意なことがあるように、発達障害を持つ人も苦手なことと得意なことがあります。苦手なことについては環境(周囲の声かけ・仕事の進め方・業務内容など)を調整することで減らしていき、得意なこと(持ち味)を伸ばしていくマネジメントが重要です。

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ハラスメント

ハラスメントとは、相手を不快にさせたり、不利益を与えたりするほか、肉体的・精神的な苦痛を与え、相手の尊厳を傷つける行為の総称を指します。「嫌がらせ」や「いじめ」とも、言い換えられます。
職場でみられる主なハラスメントとしては、パワーハラスメントセクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、カスタマーハラスメント、また、近年注目を集めているものにSOGIハラスメントなどがあります。
英語では、セクシュアルハラスメント(Sexual Harassment)以外は、総じてWorkplace Harassment, Harassment at Work/ in the Workplace(職場でのハラスメント)などが使われます。ちなみに、パワーハラスメントは和製英語です。
国の調査結果(「個別労働紛争解決制度の施行状況」)をみても、個別労使紛争や労働相談においては「いじめ・嫌がらせ」に関するものが、年々増え続けており、労働災害としての精神障害の原因にも、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなどが上位を占めています。このため、厚生労働省では、毎年12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定め、ハラスメントのない職場づくりを推進するため、集中的な広報・啓発活動を実施しています。

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パワーハラスメント

2020年6月1日に改正労働施策総合推進法が施行され、大企業だけでなく、中小企業においても、パワーハラスメント防止措置が義務化されました。職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。
以下の3つの要素をすべて満たした場合に、パワーハラスメントとして認定されます。

  1. 1.優越的な関係を背景とした言動

    行為者に対して被害者が抵抗・拒絶できない関係

  2. 2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

    社会通念に照らし、業務上明らかに必要のない、あるいは許容される範囲を超える行為

  3. 3.労働者の就業環境が害されるもの
    • 被害者が身体的あるいは精神的に苦痛を生じ、就業環境が不快となり、能力の発揮に重大な悪影響が生じる状況
    • 社会一般の労働者が就業するうえで看過できない程度の支障があるかどうかが目安

なお、優越的な関係とは、上司から部下へのいじめ・嫌がらせに留まらず、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対してなど、「職務上の地位」だけではなく、人間関係や専門知識、経験などの様々な優位性が含まれます。

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非定型うつ(非定型の特徴を伴ううつ病)

うつ病の診断がなされた上で、さらに非定型の特徴に当てはまる場合に、非定型うつ(非定型の特徴を伴ううつ病)と診断がなされます(DSM-5)。非定型の特徴には「気分の反応性」(楽しい出来事に反応して気分が明るくなる)が含まれていることから、周囲から見て「うつ病のように見えない」場面が生じる可能性があります。
非定型うつは、若年層に比較的多く、症状の特徴から本人自身も調子を掴みにくく、社会生活を送ることに難しさを感じているケースが多く見受けられます。うつ病と同様に、専門家のもとで適切な治療を受けることが大切です。

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メランコリー親和型(前うつ性格)

ドイツの精神病理学者テレンバッハは、うつ病になりやすい人には秩序への特別な関わり方(秩序志向性)があると著書「メランコリー」の中で指摘し、几帳面で何事においても完全主義で、責任感も強く、対人関係も細やかな配慮が行き届いているといった性格を、うつ病になりやすい性格として「メランコリー親和型」(前うつ性格)と呼んでいます。

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メンタルヘルス

人は、身体と心の両面がそろって健康であることが大切です。メンタルヘルス、すなわち心の健康管理は、身体の健康管理と同様に、予防や治療だけでなく、心の健康を高めてよりよい状態をつくることをめざしています。現代の社会や職場はストレスも多く、時には心が不健康な状態に陥る可能性もあります。不健康が高じて適応できない人が出た場合には、できるだけ早く適応状態に戻すようにすることが大切ですが、より根本的に、働きがい・生きがいのある職場をめざして組織の健康度を向上させていくことがメンタルヘルス活動の重要な目的といえます。

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リラクセーション/自律訓練法

リラクセーションとは心と身体の緊張を解きほぐし、心を落ち着けて安心すること、ゆったりと休息することをいいます。そのための代表的な方法の一つが自律訓練法です。
自律訓練法は、1930年代のドイツの神経科医シュルツにより科学的に体系化されたストレスの科学的緩和法です。自らをリラックス状態にする訓練で、現代人に欠けがちな「ホッと一息つく」状態をつくり出すものです。言い換えれば、上手な休み方、上手な一息の入れ方で、このゆったりした気分を味わえるようになると心理的・生理的な休息がもたらされ、心身が本来持っている能力を最大限に引き出すことができるようになります。「蓄積された疲労の回復」「気分・気持ちの安定」「仕事・学習・研修に対する集中力・能率の向上」「内省力と自己向上性の増加」などの効用が科学的に確認されています。

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臨床心理士

臨床心理士は、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が1988年より認定している資格です。協会が認可する第1種指定大学院を修了した者、あるいは第2種指定大学院を修了し修了後1年以上の心理臨床経験を有する者に、受験資格が与えられます。資格認定にあたっては、筆記試験および口述面接試験が行われ、さらに5年ごとの資格更新制度が定められています。臨床心理士の専門業務は、①臨床心理査定(アセスメント)、②臨床心理面接(心理療法・カウンセリング)、③臨床心理的地域援助(コミュニティでのコンサルテーション)、④上記①~③に関する調査・研究です。医療・教育領域での活動のほか、産業・労働領域においては、労働者に対するカウンセリングやメンタルヘルスに関する研修の実施、職場内でのコンサルテーション、職業適性に関する支援を担います。

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労災病院勤労者メンタルヘルスセンター

労災病院勤労者メンタルヘルスセンターは、労働者健康安全機構が運営する主な労災病院に設置されています。ここでは、勤労者のメンタルヘルスに関する需要に総合的に対応するため、健康セミナーをはじめ、ストレスドックの実施による健康管理を含めた心身医学分野の総合的医療を提供しています。なお、横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンターでは、「勤労者 心のメール相談」を行っています。詳しくは、同センターのホームページをご覧ください。

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ワーク・エンゲイジメント

ワーク・エンゲイジメント(Work Engagement)は、「仕事に誇りとやりがいを持ち」(熱意)、「仕事に熱心に取り組み、エネルギーを注ぎ」(没頭)、「仕事から活力を得ていきいきしている」(活力)状態として定義されています。ワーク・エンゲイジメントの対概念としては、「バーン・アウト(Burn Out:燃え尽き)」が挙げられます。バーン・アウトが、疲弊して仕事への熱意が低下している状態であるのに対し、ワーク・エンゲイジメントは活力にあふれ、仕事にも熱心に関わるとされています。
ワーク・エンゲイジメント向上のような、よりポジティブなアプローチが職場のメンタルヘルス対策の中でも有効なものとして位置付けられるようになり、職場のメンタルヘルスの目標を、疾病対策にとどまらず従業員のやる気や活気の促進にまで拡大することにつながりました。例えば、健康経営への企業の取り組みを評価する際の「健康経営度調査」において、アブセンティーズムプレゼンティーズムとともに、ワーク・エンゲイジメントが成果指標の一つとして規定されています。

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