第1回「生産性ビジネスリーダーズ・フォーラム(BLFP)」をニューヨークで開催しました。

2019年4月12日

日米の経営者が、デジタル社会における人材重視の経営改革と持続可能な社会の実現に向けた責任を確認

第1回生産性ビジネスリーダーズ・フォーラム

日本生産性本部は2019年4月11~12日、米国ニューヨークで、初の「生産性ビジネスリーダーズ・フォーラム(BLFP:Business Leaders Forum on Productivity)」を開催しました。米国のシンクタンク、コンファレンスボード(TCB:The Conference Board)と共催したもので、金融、エネルギー、サービス、人材マネジメントなど様々なバックグラウンドを持つ日米の経営者ら16名(日本7名、米国9名)が集いました。

■デジタル変革のなかで生産性を上昇させるには…

11日に開催されたネットワーキング・ディナーで談笑する日本生産性本部の茂木 友三郎会長(キッコーマン 取締役名誉会長 取締役会議長・右)と米国・ブルッキングス研究所シニアフェローのマーティン・ニール・ベイリー氏(左)

日米をはじめとする先進諸国では、2000年代半ばより生産性上昇率の停滞が続いています。一方で、世界はデジタル変革の時代に突入しており、各国では格差や貧困といった歪みが生じて、企業の事業活動の基盤となる社会の持続可能性が脅かされています。これらを背景に、今回のフォーラムは「デジタル社会における経営と生産性~求められる経営改革と社会的視座」を総合テーマとし、「デジタル社会における生産性(付加価値)向上への経営者のチャレンジ」「これからの生産性基盤~持続可能な社会を実現するための経営者の行動」 と題した2つのセッションを実施しました。

共同議長を務めたTCBプレジデント兼CEOのスティーブ・オドランド氏(右)

共同議長を務めた日本生産性本部の茂木 友三郎会長(キッコーマン取締役名誉会長 取締役会議長)はフォーラム冒頭に挨拶し、2017年の日本の労働生産性がOECD36か国中20位であることを紹介したうえで、「米国や英国のような他の先進諸国においても、生産性上昇率は停滞している。本フォーラムのテーマは、デジタル化が著しく進展し、先行き不透明感が増している今日の企業経営にとって、まさに時宜にかなったものだ」と述べました。同じく共同議長のTCBプレジデント兼CEO、スティーブ・オドランド氏は第2セッションを念頭に「すべての人が繁栄できるための手段を講じなければならない」と強調しました。

■「人」の重要性を強調

デジタル技術を用いた自社のプロジェクトについて説明する帝人相談役の大八木成男氏

ブルッキングス研究所シニアフェローのマーティン・ニール・ベイリー氏の講演に続いて行われた第1セッションでは、デジタル技術という突破口が開かれたにもかかわらず、それが生産性の大幅な上昇に繋がっていない理由などについて活発な議論が行われました。そして、デジタル技術を活用し、生産性向上に必要なイノベーションを起こすためには、組織・ビジネスモデルの見直しが急務であることを確認しました。

またデジタル技術のみならず、技術を活用するのも人であることから、「人材」の重要性に焦点が当てられ、これまで以上に働く人々を尊重し、育成していくことが重要であるとの認識で一致しました。そのなかで、社内の労働力だけではなく、従来の雇用形態の外にあるフリーランスなど組織外の労働力も教育・訓練し、活用していく必要があることも議論されました。

フォーラムで発言する三菱電機特別顧問の山西 健一郎氏(左写真)とJTB代表取締役会長の田川博己氏
地球産業文化研究所顧問の福川伸次氏(右)と経済開発委員会(CED)プレジデントのバーナード・C・ベイリー氏(左)

続く第2セッションでは、「社会」に目が向けられ、日米ともに格差が広がっている現状とその原因について議論しました。そのうえで、生産性が向上し、人々がより熟練した仕事に就き、より質の高い製品・サービスを提供し、賃金が上昇するという好循環を促進するために、企業・経営者が長期的な視点をもって、事業を通じて社会課題の解決・改善に責任をもって取り組む必要があるとの認識で一致しました。

最後に2つのセッションの議論の内容をサマリーとしてとりまとめ、フォーラムは終了しました。

ANAホールディングス代表取締役社長の片野坂 真哉氏

フォーラム終了後、記者との懇談に臨んだANAホールディングス代表取締役社長の片野坂 真哉氏は「AI、IoTの時代になっても多くの参加者が『人間』を重要視することを強調していたのが印象的だった。AIに支配されない。AIを使ってよりよい未来をデザインするのは人間の感性、人間の能力である」として、人材に投資していくことの重要性を訴えました。

第2セッションのモデレーターを務めた経営共創基盤代表取締役CEOの冨山和彦氏

一方、 経営共創基盤代表取締役CEOの冨山和彦氏は、日本の生産性が向上しない理由について問われると、「(企業の)新陳代謝がなさすぎる」と指摘。さらに、「現在日本で終身雇用のもと働いているのは全労働者の20%に過ぎない」としたうえで、生産性向上のためには「伝統的な生産性の議論からずっと外れてきた、残りの80%の(労働力について)議論をしなければならない」と、従来の雇用形態に当てはまらない労働者の生産性を上げるため、対応策を練る必要性を強調しました。

経済開発委員会(CED)プレジデントのバーナード・C・ベイリー氏は、米国で政府を信頼している国民は全体のたった8%である一方、問題解決の担い手として企業に信頼を寄せる国民が70%近くにのぼることを示したうえで、「経営者は地球市民、世界市民あるいはそれぞれの国の市民として、一歩進んで責任をとり、全体を前進させるために行動に出ることが求められている」としました。

また帝人相談役の大八木 成男氏は、「文化、ガバナンス、政治の違いがあっても、いわゆるキャピタリズムのなかのアメリカと日本はたいがい共通の課題を抱えているということだ」と述べました。

今回の日米経営者の対話に続き、日本生産性本部は来年、日本と欧州の経営者による第2回BLFPをドイツで開催し、以降は米国とドイツで交互に実施する予定です。